静聴雨読

歴史文化を読み解く

ドイツ:絵と音楽の旅 10

2014-04-09 07:35:54 | 異文化紀行

 

(10)ベルリン国際映画祭

私がベルリンに滞在している間に、ベルリン国際映画祭が始まった。若き映画青年(だった者)としては見逃せないイベントではあるが、今では映画への興味は失せている。

六日目にその主会場であるポツダム広場劇場に足を向けてみた。会場の入口に向かって、お馴染みの赤カーペットが敷かれている。そこを静々と歩く映画スターたちを眺める趣向らしい。

この映画祭では、「12 Years a slave 」の前評判が高かったが、後日発表されたところによると、「ブラック・コール、シン・アイス」という中国映画が金熊賞(作品賞)に選ばれたとのこと、また、黒木華(はる)が銀熊賞(女優賞)に選出されたのにも驚いた。番狂わせ続きのベルリン国際映画祭だった。

(2014-04)


ドイツ:絵と音楽の旅 9

2014-04-07 07:24:20 | 異文化紀行

 

(9)森鴎外

Sバーンをベルリン中央駅からフリートリヒ・シュトラーセ駅に向かう途中に、「鴎外」と壁に記した建物が目に入る。気になって、五日目にここを訪ねてみた。初老の日本人の女性が迎えてくれた。

鴎外は若いころ医学生として4年間ドイツに留学して、ベルリンにも住んだことがある。この「鴎外記念館」は、鴎外の下宿があった地域に開設されたものだという。『舞姫』『うたかたの日』『ウィタ・セクスアリス』などの作品に、鴎外のドイツ体験が記されているはずだが、私はまだこれらの作品を読んだ覚えがない。帰ったら、読んでみよう。

鴎外は遺言で、「石見人として死せんと欲す」と記し、宮内省や陸軍省からの顕彰を拒絶した。これが、われわれ一般人には最もわかりやすい鴎外の姿だ。

(2014-04)


ドイツ:絵と音楽の旅 8

2014-04-05 07:22:50 | 異文化紀行

 

(8)文化フォーラム

三日目は絵を見ることにした。ポツダム広場にある文化フォーラムに入っている「絵画館」。ヨーロッパの多くの大都市の美術館がそうであるように、ここでも、中世から18世紀にかけての絵が展示されている。その数は膨大だ。部屋ごとに、国と時代を分けているので、わかりやすい。私の好きな、陽気な肖像画家フランツ・ハルスも数点展示されている。ミュンヘンのアルト・ピナコテークで脇に追いやられて不遇をかこっていたハルスが、ここでは、正当に展示されていて、安心した。

各国の画家を見て回って、中世の宗教画の部屋に戻るとほっとした気分になるのはどうしてだろう? 各国の画家のような個性を感じさせる絵はなく、一様に神・キリスト・マリアを描いている絵に、ヨーロッパ共通の精神が体現されているように思うのだ。

(2014-03)


ドイツ:絵と音楽の旅 7

2014-04-03 07:15:34 | 異文化紀行

 

(7)動物園と水族館

今回は、オペラを聴くのに構えることが少なかった。また、昨年とは違い、暖かい気候に迎えられたので、自由な時間が多く取れた。その時間は観光に充てた。

二日目は、ヤナーチェク『カーチャ・カバノヴァー』のリブレットを読んだあと、ホテルを出た。

ツォー駅で、後日のハンブルク行きの列車の切符を買い・座席を予約した。ファースト・クラスで片道€98.50。高いのか、安いのか。

その足で、動物園に行った。冬の動物園は閑散としていた。ライオンの親子が凄みを効かせていた。ライオンの檻と観客とは壕で隔てられているが、オープン・エアに変わりない。パンダやゴリラは姿を見せなかった。

動物園に隣接して水族館があり、ここは家族連れでにぎわっていた。

大きなエボダイが愛嬌ある顔つきで、右から左に群れをなして横切っていく。

(2014-03)

 


ドイツ:絵と音楽の旅 6

2014-04-01 07:06:44 | 異文化紀行

 

(6)今回のオペラ

今回、ベルリン・ハンブルク・ブレーメンで、8本のオペラと1回のコンサートを聴く予定だった。(後に、オペラが1作増えて9本になった。)

 

ヤナーチェク『カーチャ・カバノヴァー』『イェヌーファ』

モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』

リヒャルト・シュトラウス『サロメ』

ロッシーニ『セビリアの理髪師』

プッチーニ『マノン・レスコー』『ラ・ボエーム』

ビゼー『カルメン』

ベートーヴェン『フィデリオ』

 

うち、ヤナーチェクが最大の目的で、リブレットを読むなどの準備をした。ほかは、あまり構えることなく、聴いてみようと思った。

(2014-03)

 


ドイツ:絵と音楽の旅 5

2014-03-30 07:00:26 | 異文化紀行

 

(5)シャワーのようにオペラを浴びる

ワーグナー・モーツァルト・ヤナーチェクのほかにも、好きになれるオペラ作家または作品があるのではないか、と思うようになった。食わず嫌いのイタリア・オペラも聴いてみたい。そう考えて、昨年から、演目を制限しない「オペラの旅」をすることにした。これを、「シャワーのようにオペラを浴びる」と表現しよう。あまり予備勉強もせず、とにかく、聴いてみる。それで引っかかるオペラ作品が出てきたら、さらに深く研究してみようと考えた。

ワーグナー・モーツァルト・ヤナーチェク以外で、私の記憶にあるオペラ作品の名を挙げてみよう。(タイトルの中の○は聴いたことがあるもの、◎は面白かったもの。)

ヴェルディ『アイーダ○』『椿姫○』『イル・トロバトーレ』『ドン・カルロ◎』『運命の力○』『シチリア島の夕べの祈り』『オテロ○』『マクベス』

プッチーニ『ラ・ボエーム○』『蝶々夫人』『マノン・レスコー○』

ロッシーニ『ウィリアム・テル』『泥棒かささぎ』『セビリアの理髪師○』

ドニゼッティ『ルクレツィア・ボルジア』『連隊の娘』『愛の妙薬』

チレア『アドリアナ・ルクヴルール』

レオンカバッロ『道化師』

マスカーニ『カヴァレリア・ルスティカーナ』

 

ベートーヴェン『フィデリオ○』

ウェーバー『魔弾の射手』

ヨハン・シュトラウス『こうもり』

リヒャルト・シュトラウス『エレクトラ』『薔薇の騎士』『ナクソス島のアリアドネ○』『サロメ◎』『影のない女』『アラベラ』

アルバン・ベルク『ヴォツェック』『ルル』

 

ビゼー『カルメン◎』

グノー『ファウスト』

チャイコフスキー『エフゲニー・オネーギン』

ムソルグスキー『ボリス・ゴドゥヌフ』

スメタナ『売られた花嫁』

 

以上、40作に満たないほどだ。あと2年で、これらの作品をなるべく多く聴いてみよう。これが当面の計画だ。 (2014-03)


ドイツ:絵と音楽の旅 4

2014-03-28 07:53:44 | 異文化紀行

 

(4)オペラと私

私のオペラ歴は永くない。

クラス会で会った小学校のクラス・メートに「あなた、昔からオペラが好きだったの?」と揶揄された。その通り、小学校時代は、音楽の「お」の字もオペラの「お」の字も口にしたことなどなかったのだ。クラシック音楽を聴き始めたのは、大学を卒業して社会人になってから。演奏会の値段が高いので、学生時代は音楽会に通うなど考えられもしなかった。オペラに近づくにはさらに高い障壁が立ちはだかった。オペラの演奏会は目玉が飛び出るほど高く、さらに、日本では限られた演目しか聴くことができないのだ。

そのような中で、わずかに聴いたオペラの中で、私の気に入ったオペラ作家はワーグナー・モーツァルト・ヤナーチェクであることがわかった。この3人のオペラは全曲聴いてみたいと思った。

 

数年前、正確には、2009年から、まずはワーグナーのオペラを征服しようと企てた。日本にいては、この試みを実現するには何年かかるかわからない。それで、本場(ワーグナーの場合はドイツ・オーストリア)に出かけることにした。本場では、数曲のオペラをまとめて聴ける機会があるのだ。

2009年には、バイロイト音楽祭で、『ラインの黄金』『ワルキューレ』『ジークフリート』『神々の黄昏』

『パルジファル』を聴いて感銘を受け、2013年にベルリン・ドイツ・オペラで、『ローエングリン』『ニュルンベルクのマイスタージンガー』『トリスタンとイゾルデ』『タンホイザー』を聴いた。

 

モーツァルトについては、『フィガロの結婚』は過去何回も聴いたし、『ドン・ジョヴァンニ』『魔笛』も聴く機会があった。あと、『コシ・ファン・トゥツテ』『後宮からの誘拐』『皇帝ティトスの慈悲』を聴けば、全曲制覇が成る。

 

ヤナーチェクについては、プラハで聴いた『イェヌーファ』にいたく感銘を受けた(1997年)。ごく、普通の農村社会を舞台にしたオペラで、伝説物(ワーグナー)や宮廷物(モーツァルト)とは全く異なる境地を開いたものとして注目した。隣のおばあさんと孫娘に「素晴らしかった」と話かけると、二人はうなずいていた。

さて、ヤナーチェクのオペラはあまり上演されない。全部で7作あるのだが、全曲制覇はいつになるか、予想つかない。 (2014-03)


ドイツ:絵と音楽の旅 3

2014-03-26 07:42:33 | 異文化紀行

 

(3)暖かい!

ベルリンに着いて驚いた。暖かいのだ。

「ミスター、ずいぶん暖かいね!」

「へい、クレイジーなほどです。」

「昨年3月に来た時には、雪が積もっていたよ。」

「へい、昨年はいつまで経っても冬が終わりませんでした。」

 

ベルリンは、日本の地域に例えれば、青森に近い寒さであるはずだ。

ところが、最低気温2℃、最高気温8℃で推移しているらしいのだ。これは、出発前の首都圏の気温に等しい。ずいぶん暖かい気候だ。これで、私の「冬の旅」という被虐的な思惑は吹き飛んだ。

ベルリンのホテルの選択については、事前に研究した。昨年はSバーンのティア・ガルテンに近いホテルを選んだ。ベルリン・ドイツ・オペラに通いやすく、それはそれで、まずまず合格だった。

今年は、シラー劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ(ともにビスマルク通り)のほかにフィルハーモニー(ポツダム広場)にも通う予定なので、さらに良い立地が必要だと考えた。それで、ツォー駅近くのホテルを探した。ツォー駅からは、UバーンのU2で、シラー劇場(エルンスト・ロイター広場駅)、ベルリン・ドイツ・オペラ(ベルリン・ドイツ・オペラ駅)、フィルハーモニー(ポツダム広場駅)に一本で行ける。また、Sバーンで、ベルリン中央駅やフリートリッヒ・シュトラーセ駅にも行ける。

そして、私の選んだのは「 alletto Kudamm 」だ。ホテルに着く前は、正確な場所はわからなったが、タクシーで行ってみると、何とツォー駅のすぐ近くだった。立地は満点だ。

初日はホテルに夜10時半に入り、そのまま寝に着いた。 (2014-03)


幻想の庭園 12

2014-03-24 07:34:32 | わが博物誌

 

(12)モクレンとハクモクレン

 沈丁花が終わると、次の花(ツツジ)まで、間があいてしまう。桜はあまりに開花期間が短いので、「幻想の庭園」にふさわしくない。

それで、代替候補を探していたのだが、モクレンとハクモクレンに行き着いた。

春まだ早い庭の裸木に咲くモクレンはいじらしい。チューリップか繭玉のような形の大きな花が幹にへばりつくように咲いている。モクレンは紫色、ハクモクレンは文字通り白色。その優美さは甲乙つけがたい。いい香りがするそうだが、まだ嗅いだことはない。

 難点は開花期間が短いこと。2週間もつかもたないか、で終わってしまう。

(2014-03-24)


クラス会 4

2014-03-22 07:01:38 | Weblog

 

クラス会に遅れて参加した。16名(男8名、女8名)の昔のクラスメートに久々に再会した。多くの人が顔を見ただけで誰だかわかった。

 

数人だけ、誰だかわからないクラスメートがいた。

角刈りで東大に進学したはずの男は、今は飯場の監督風情でタバコを吹かしている。

裕福な市会議員の風情の男は教育界で40年過ごした男らしい。

名前を名乗らないで近況報告した女性は誰だったろう?

 

昔とまったく変わらないクラスメートも何人かいた。

定年後も多芸多才ぶりを発揮している男。

「チョイ悪おやじ」を演じ続ける男。

清楚なセレブリティのまま50年過ごした女性、などなど。

 

あっという間の数時間であった。

(2014/3)


クラス会 3

2014-03-20 07:52:51 | Weblog

 

5年ほど前、あるクラスメートから突然メールをもらった。外部中学組の一人で、極めて優秀、記憶力抜群。東大に進み、その後化学メーカーに進んだはずの男だ。その後、彼との交友が復活して現在に至っている。

卒業後、クラス会に不義理を重ねていたにもかかわらず、クラス会との細い糸が切れずにつながってきたのは、幹事のSさんの配慮に負うところが大きい。私が転居を重ねてもクラス会の案内を受け取ることができたのもSさんのおかげだ。また、ある時、私の発行するブックレットをSさんに送ったところ、Sさんはほかのクラスメートに回覧してくれた。Sさんにはそのような、姉御肌のところがある。ちなみに、SさんはK中学組だ。 (2014-03-20)


クラス会 2

2014-03-18 07:50:10 | Weblog

 

私の高校は創立当初から男女共学で、男子24名、女子26名のクラスで3年間過ごした。クラスは付属K中学からエスカレーター進学した者と、付属S中学からエスカレーター進学した者、それに外部の中学から進学した者、の3つの「派閥」に分かれていた。K中学組が最も結束が強く、卒業後もK中学組は互いに行き来していたようだ。それに比べて、S中学組はバラバラで、卒業後の動静はなかなか伝わって来なかった。外部中学組は優秀な生徒ばかりで、存在感を保っていた。

私自身はS中学組だったが、外部中学組とも仲良くしていた。

さて、卒業後、クラス会が時々開かれていたが、私は参加しなかった。三十歳台に一度参加しただけだ。

その後、15年ほど前、たまたまクラス担任の恩師の近くに住むことになり、挨拶に伺って、クラス会メンバーとの交流も復活した。ただ、クラス会に参加する機会はなかった。やがて、恩師は老後に備えて娘さんの近くで暮らすことになり、遠くに行ってしまった。それで、クラス会メンバーとも疎遠になった。(2014-03-18)


特異日/クラス会 1

2014-03-16 07:44:48 | Weblog

 

勤めを退職してから、暇な日々が続いていた。意識してそうしていた。

今年の3月15日(土)は、そのような日常の中の「特異日」といえるような日だった。

まず、所属するNPO法人の総会の日にあたった。そこで、決算報告を担当しているので、必ず出席しなくてはならない行事だ。これで、午後がつぶれた。

次に、主宰する将棋愛好会の例会があったが、これはNPO法人の総会にぶつかるので、あきらめた。

これらに加えて、亡くなった叔母の七七忌法要が重なった。これは予定外で、遠くに出かけるのは難しく、泣く泣く出席を諦めた。

さらに困ったことに、高校のクラス会があるという。NPO法人の総会に重なるので、これも諦めざるをえない。しかし、久しぶりに是非クラスメートと再会したいと思い、その旨を幹事に伝えたところ、二次会に迎えてくれるという。喜んで、夜の二次会に出席させてもらうことにした。

(2014-03-16)


ドイツ:絵と音楽の旅 2

2014-03-14 07:41:00 | 異文化紀行

 

(2)機中にて

初日はパリ経由でベルリンに入った。パリまでは、都合でエール・フランスを利用した。これが、最悪だった。何が悪いといって、座席の狭さがひどいのだ。20年前の標準ではないのか?膝が前の座席につくほどなのだ。私は小柄な方だが、大きな人の苦痛は推して知ることができる。

音楽サービスで、シューベルト『冬の旅』のCDがあった。ディートリッヒ・フィッシャー・ディスカウが歌い、ジェラルド・ムーアがピアノ伴奏をつける歴史的名盤だ。これを聴きながら、ドイツ北部の冬を思い描いた。 (2014-03)


ドイツ:絵と音楽の旅 1

2014-03-12 07:37:31 | 異文化紀行

 

(1)序

 今年2月にドイツを旅した。ベルリン・ハンブルク・ブレーメンで、オペラを聴き、絵を観てまわった。その記録を綴ってみたい。(途中、脱線が挟まる予感があるが、ご容赦いただきたい。)

当初は、その記録を「ドイツ:冬の旅」と題するつもりだった。それが、後に述べる事情により、「羊頭狗肉」となりかねないので、このように変更した。

5年前、「バイロイト詣で」というコラムの末尾に、「次は『ドイツ:冬の旅』をしてみたい」、という趣旨のことを書いた。厳冬の時期にドイツ北部を旅しながら、ワーグナーを聴いたり、ブレーメン近郊の芸術家村を訪ねたりする旅を思い描いていた。旅の通奏低音はシューベルト『冬の旅』だ。

昨年3月にドイツを訪れた時、記録的厳冬に遭遇した。(写真は2013年3月下旬のベルリンのティア・ガルテン。)それで、2月であれば、さらに寒い冬を体験できるのでは、というやや被虐的な思惑に支配されていたのだ。 (2014/3)