アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

集団的権利は認めない?? 

2016-11-01 11:48:48 | 日記

もう10年近く前のBlogに書きましたが(ここ)、国連では各決議の際に単に賛否の決をとるだけではなく、どういった意図で賛否の投票をするかを各国が演説をして表を投じるそうです。2007年の先住民族権利宣言が決議された時にも各国の演説があり、日本政府は賛成票を入れたものの、以下の演説をしたと某大学教授の講演で聞きました。

①自決権は分離独立権を含まない。

②土地権とその行使は、国法に従い、第三者の権利及び公共の利益と調和するように合理的な制約を受ける。

③集団的権利は認めない(webcastで流れた)

このことから、日本政府はアイヌ民族という集団的な権利を認めないことを最初から条件づけ、主張を続けるのだろうと考えていました。

2008年には国会決議でアイヌ民族を日本の先住民族と認めたにも関わらず、日本政府は相変わらず集団的権利を認めず論議すらしません。新たなアイヌ民族に関する法律をつくると言う話も出ていますが、そこにも触れられていないようです。

丸山博さんの言葉を借りれば、日本のアイヌモシリの植民地主義は「福祉植民地主義から文化植民地主義へと形を変えてつづいていると言わざるを得ない」ということでしょう。

上記は直前のBlogで紹介したさっぽろ自由学校「遊」の講演で配布された丸山さんの文章「世界基準のアイヌ政策を求めて」(『問題と人権』2016年2月号)からのものです。

11頁ほどの短い文章ですが、他にも紹介したい部分が満載です。いくつか紹介します。

先住民族として認められたアイヌ民族は、国連を中心に長い時間と労力をかけて構築された国際社会の人権保障システムからも保障されるべきだと述べます。

1966年には法的拘束力を有する二つの国際人権規約である

・「市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約 ここ)」、

・「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約(社会権規約 ここ)」

を採択し、さらに、

・「難民の地位に関する条約 ここ」(1951) 日本は1982年発効

・「人種差別撤廃条約 ここ」(1965) 日本は1995年

・「女性差別撤廃条約 ここ」(1979) 日本は1985年

・「先住民と種族民に関するILO169号条約 ここ」(1989) 日本は未批准

・「障がい者の権利に関する条約 ここ」(2006) 日本は2014年

・「先住民族に関する国連宣言 ここ」(2007) 日本は賛成票を投じた

と、マイノリティの人権を守るための条約や宣言をつくって来た、と。それらはすべて「集団的権利」だ、と。 

そして、それらの条約には、定期的に日本政府は国連の監視機関に報告書を出さなければならないが、常に国連から人権侵害に対する懸念と改善への勧告がなされている、と。

具体的にいくつかの監視委員会からのコメントが紹介されていますので、ピックアップします。

・「(自由権規約)27条の下で守られる権利は個人の権利であるが、それらはマイノリティの集団がその文化、言語あるいは宗教を維持する能力にも依存する。したがって、マイノリティのアイデンティティを守るとともに、そのメンバーが仲間と一緒に自らの文化と言語を享有し発展させ、宗教を実践する権利を守るためには、締約国による優遇策が必要となるだろう。」 すなわち、集団的権利が必要だと述べている!

・「(社会権規約15条a の全ての者の文化的生活権に関して)先住民族の文化的生活に関する集団的特徴は、彼らの存在や幸福、完全な発達にとって不可欠であり、彼らが伝統的に所有し、占有もしくは使用し、獲得した土地、領土、そして資源への権利をも包括する。先祖の土地や自然との関係とかかわる先住民族の文化の価値や文化的権利は、敬意をもって認められ、保障されなければならない。締約国はしたがって、先住民族がその共有する土地、領土、資源を所有し、開発し、管理し、使用する権利を認め、保障するための施策を講じるべきである。(中略)締約国は、先住民族の特別な権利にかかわるすべての事柄について、彼らの“自由意志に基づき、事前に十分な情報を与えられた上での合意の原則”を尊重しなければならない。」 (経済的、社会的および文化的権利に関する委員会による一般コメント21より。2009)

長い文でしたが、先住民族という集団への権利内容がよく分かるいい内容です。

う〜ん。2009年に出されたアイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会の報告書(ここ)にも、アイヌ政策は一般の日本人国民へのアイヌ民族に対する「正しい理解と知識の共有が不可欠である」(P.25)と、述べています。アイヌ政策推進会議は、もっともっと、この努力をするべきです。そして、集団的権利についてもすすめるべきです。

日本語で読める丸山さんの論文が入っている『アイヌ民族の復権』(2011 法律文化社)を早速、注文しました。

 

過日、所用で二風谷をお訪ねした際、貝澤輝一さんのところからはミニトマト(アイコ)を袋一杯に頂き、大喜び。まわりにもおすそ分けしました。また、貝澤耕一さんのところからは、なんと新米を頂戴しました。感謝感謝! もう5年ほど前から日曜日のお昼は近所のこども達を無料で招いての食事をしています。このような差入れはいろいろなところからあって、たいへん助かっています。

やっとリンクの貼り方を使えるようになりました。が、「ここ」はまずいでしょうか・・・。



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