アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

八幡智子さんによる『アイヌ民族の現状と展望』講演

2016-11-04 11:00:31 | 日記

札幌郷土を掘る会主催で、八幡智子さんによる『アイヌ民族の現状と展望』講演を聞いて来ました。

昨年の7月にアイヌ文化振興・研究推進機構主催のアイヌ文化普及セミナー(前期)で一度お話を伺ったことがあり、杵臼での遺骨再埋葬の際もご一緒しました。

小学2年でお母様を癌で亡くされ、長女で兄弟が多かったので、母がわりをした。学校で先輩から「小川が二本足で歩いている」とバカにされたり、ドッチボールではいつもアイヌだけが標的になるなど、あからさまな差別があった。しかし、兄も弟も含めて小学校教師に助けられた。貧しくて弁当をもって行けなかったころ、担任の先生がだまって兄弟三人分のおにぎりを差し出してくれた。教師のおかげでアイヌとして生きてこられた、と。

千葉に引っ越しても差別がひどく、人一倍頑張った。妹も会社の同僚からお前が来るところではないと言われ、自殺未遂をした。東京でも差別された、と。

厚生労働省の委託でアイヌ電話相談員に選ばれて働きだし、3年目。

(そのお働きは北海道新聞でも取り上げられました。)

職員は電話を受けるアイヌが3名、和人の職員1名。相談は北海道だけではなく、全国から寄せられる。最近の相談では、小学生で画鋲を上履きに入れられたり、上履きを投げられたりといじめられ、引きこもっているというものがあった。自身のいじめられた体験談などを語り、対応した、と。

お働きに感謝しつつ、伺うことが出来ました。

 

相談窓口はフリーダイヤル(無料)

0120−771−208 平日・土曜日10時〜17時

 

この電話窓口は厚生労働省が公益財団法人「人権教育啓発推進センター」に委託したもの。

同センターでは、過去の相談事業報告を2年分だしています。ここをクリック→

 

2014年(平26)年度の報告書を見ました。4月から翌年3月末までの一年間(日祝日他、休みあり)の相談総数は666件。そのうちアイヌ民族からは426件。そのうち北海道内157件、道外269件。

相談内容は多い順から

「13.政府・自治体への要望等に対するもの」(122件)、

「2.身体に関する悩み」(109件)、

「1.暮らし向き」(105件)、

「19 その他」(104件)、

「16.アイヌであることを理由とした差別・いやがらせに関するもの」(93件)、

「3.心に関する悩み」(82件)、

「5.仕事・職場に関するもの」(62件)、

「8.アイヌ文化や学校での歴史教育・多文化理解等に関するもの」(58件)

などとなっています。「13.政府・自治体への要望等に対するもの」が一番多いのは、

「生活の困窮や将来への不安等から、アイヌ民族に対する民族年金制度の創設、生活費や教育費の支援などの要望が多いことによる ものと考えられる」

さらに、暮らしの中や学校、職場での差別への対応を政府に要望するなど、重複しているところもあると分析しています。

 

注目したのは、第6章総括において、「国際的な先住民族の視点からの分析」がされていること。

2007年の「先住民族の権利に関する国際連合宣言(以下「宣言」)から、今回の相談を取り上げ、「先住民族としてのアイヌの人々が抱えている問題が明らかとなった」と結論しています。

相変わらず、「アイヌ民族」ではなく、「アイヌの人々」と記述しているのは気になりますが、それは別にして、相談の「いずれも「宣言」で取り上げられている重要な権利に関連する問題でもある」とし、各相談に対し、「宣言」に照らしてのコメントをしています。たとえば、遺骨返還問題の下りでは、

相談には遺骨返還についてのものも含まれていたが、これに関連して、宣言には以下の規定が存在する。第12条では、「1.先住民族は、自らの精神的および宗教的伝統、慣習、および儀式を表現し、実践し、発展させ、教育する権利を有し、その宗教的および文化的な遺跡を維持し、保護し、そして私的にそこに立ち入る権利、儀式用具を使用し管理する権利、遺骨の返還に対する権利を有する。 2. 国家は、関係する先住民族と連携して公平で透明性のある実効的措置を通じて、儀式用具及び遺骨のアクセス及び/又は返還を可能にするよう努める。」と規定している。以上のように、今回寄せられた相談は、相談者の個人的な問題もあったが、相談者が先住民族アイヌとして直面している様々な人権問題が明らかにされた。これらの相談には、国連の先住民族宣言に規定されている主要な権利が関わっているといえる。その意味で、相談は目に見えることのない先住民族としてのアイヌの人々が抱える人権問題が浮き彫りになったことで、大変意味あるものである。

ちなみに2013(平25)年度の報告書を確認しましたが、この視点からの分析はなされていませんので、画期的なことですね。

アイヌ民族への差別はまだまだあるのです。

アイヌ語トランプを購入しました。白老にて。

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