アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

アイヌ政策室北海道分室開設

2010-11-09 19:56:02 | インポート
11月8日の読売新聞でニュージーランド政府が欧米などの博物館や美術館に入れ墨が施された先住民族マオリの戦士の干し首「トイ・モコ」を返還するよう呼びかけているというニュースが出ていました。
http://www.yomiuri.co.jp/column/world/20101108-OYT8T00339.htm?from=navlc
リンク切れは→http://blog.goo.ne.jp/ivelove/e/7ee886e73545434c7472270740ff4cf8

「トイ・モコ」は欧米では「美術品」として珍重されていて、17世紀以降、欧州系移民の間で美術品として商取引の対象となり、「干し首を輸出する目的で殺される例すら後を絶たなかった」とも記載。しかし、マオリにとっては「先祖の遺体の一部」だと、返還を要求したと。
これらに応じると、ルーブル美術館が所蔵するエジプトのミイラなど旧植民地から集めた他の展示品への影響もあるのではと、仏が難色を示したそうですが今年5月の仏国民議会(下院)にて返還を可能にする法案をほぼ全会一致で可決。

このニュースで目を引いたのは、入れ墨で埋め尽くされた頭部は入れ墨の部位やデザインから名前や所属部族・職業・地位などを割り出したり、子孫との血縁を証明したりすることも可能な、いわば「身分証明そのもの」(マオリ族の男性)なのだ、と。それらを取り戻し、ニュージーランドの国立博物館は、展示せずに出身地を調べて子孫に戻す方針を取るとのこと。

ニュージーランド政府がマオリを研究対象にしているかどうかの歴史や、研究していた場合のマオリの了解と共働があるかなど、また、先住民族サミットなどで出会ったケントさんやエディさんに伺う機会を持ちたいと思います。

お二人ともマオリのナイタフ族。エディさんとわたしたちセンタースタッフのディヴァンさんとが今回のサミットで仲良しになり、台湾ブヌン民族とマオリは良く似ていると話しがあったそうです。エディさんもキリスト者で伝道師を目指そうかとも考えておられるとか。いつかアオテアロアに行こうとディヴァンさんと話しています。


先日の「先住民族サミットinあいち」二日目の会場となった「愛・地球博記念公園」を歩いていると、小さな池がありました。
のぞいてみると、水面に何かが写っていて、わたしを見つめているではありませんか。見上げてみると・・・(下写真)


さて、もう一つのニュース「日本政府がアイヌ政策室北海道分室を開設」が各新聞に書かれています。
(北海道新聞 11/08  http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/259132.html )
「民族共生の象徴となる空間」の候補地決定や具体像づくりで、東京の本室と道内の関係機関との連絡、調整役を担う目的で、札幌市北区の札幌第一合同庁舎内に設置したそうです。

 「共生空間」作業部会についてはアイヌ政策室において今年の3月に設置。作業部会の会議内容は遅ればせながら、やっと過去開催分の議事録はHPで見ることができるようになりました(但し、「概要」です。また、当日配布の資料もUPしてないので「概要」で資料の言及がなされても分からず)。
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/kaisai.html

第7回議事概要(9月27日開催)には、作業部会での合意事項が、「1.候補地の要件について」と、「2.具体的機能の整理、他の取組みとの役割分担等の考え方について」以下の通り記されています。

(候補地の要件)
・広大な自然空間(海、山、川等)や、豊かな自然環境が存在すること
・文化実践者・伝承者、学芸員等の人材が豊富に存在し、活動実績や素地があること
・歴史、文化等の紹介・展示・体験等の施設や機能(博物館等)が存在し、活動実績があること
・地域のアイヌの人々による自主的な文化実践・伝承等の活動、取組みの実績があること
・アイヌ文化の実践等に必要な植生のうち、共通性の高い植生が存在すること
・地元の理解があり、協力体制が既に構築されていること又は構築可能であること(地方自治体、地域住民、民間団体等)
・観光振興の観点も踏まえ、国内外の人々が訪れやすい地域 等


ここまで作業部会で合意したとのことですが、最初のニュースに関連することですが、「遺骨」に関しては、まだ、審議中ということでしょうか。

第6回議事概要では、それぞれの委員が自分の意見を言いっぱなしで終わっています。と言うか、意見は箇条書きのみで、誰が発言したかも書かれていないので(一人が異なる意見を言っているかも?)、正確にはかわりませんが、たとえば一人は「人骨問題に関しては尊厳ある慰霊と研究による成果還元の両立を求めたい」と研究賛成の意見を述べている一方、もう一人(?)は、「慰霊と研究を同列に扱うことは出来ない」と否定的です。さらに、この方の意見を見ると、現実、いますでにいくつかの大学でアイヌ人骨を保管しているのだから、アイヌ民族と協議して、大学で研究すればいい。新しいところで慰霊施設も作るとなると、その地域にも理解をえなくてはいけなくなるよ、と(わたしの解釈・補足も含めて書いています)。
この議事録概要には最後に「合意」が書かれていませんが、最後のほうに以下の一行があります。
「人骨問題は、徹底的に論議が必要。アイヌ側の創意集約が前提」
と。これが意見を言い合った後の合意ともとれますが、あくまでも議論途上ということでしょう。

気になります・・・・
アイヌ政策室は、日本国内外の大学や研究施設(者)の所有しているアイヌ人骨の把握をしているのかどうか?
昨年の10月29日に文化庁の委託で北大アイヌ・先住民研究センターが委託を受けて「アイヌ文化に関する研究の推進・連携等体制構築の検討事業」に係る調査がなされました(10/3/23blog参照)。その際の調査対象の「出土文化財」の項目には、「人骨は除く」とありました。その後、別に調査をしたのでしょうか(知人からは聞いていませんが)。さらに、海外に出ていった人骨の調査は?(最近、海外に出かけられた方がおられるとの情報を得ましたが)。
もちろん、現時点の遺骨の把握だけではなく、入手経路やそれに問題性がなかったかなどの詳しい調査も必要だと思います。
アイヌ民族への研究のあり方や遺骨収集の問題点を問い正し続けている小川隆吉エカシは10月16日付の北海道新聞夕刊にて、「過去をきちんと反省した上で研究してほしい」と述べています。反省や謝罪の面ではどうなのでしょう。

やっと、分室が北海道に来たのですから、アイヌ民族の皆さんもどんどん分室に行って意見を言われたらいいでしょう。


上を見ると、天井に穴が開いていてスノーマンがのぞいていたのです!こういう遊びは好きですね~


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