アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

いよいよ、明日、提訴

2012-09-13 22:06:40 | インポート
9月11日は、『アイヌ民族副読本』問題を考える市民の集いパート3 に参加しました。

30,144筆の署名や道内外からの抗議などが多数寄せられたことや、財団内での厳しい指摘の結果、「歴史の改ざん」と「新編集委員による新たな副読本作成」にストップをかけることができたことを受けての報告集会でしたが、吉田邦彦さん(北大大学院法学研究科教授)の提言では「今回の問題は解決になっていないのではないか」という問いかけから始まりました。
その内容を当日配られた詳しい資料で補足しつつ、大事だと思う部分をわたしなりに要約して数回に分けて報告します。第一回目は以下の通り。

そもそも日本では過去の侵略戦争においてもそうだが、最も多くの不法行為をしたことについて民法学者は十分な議論をして来ていない。また不法行為の歴史を次世代に伝えていない。これは考えなくてはいけない。民法709条には被害者は加害者に損害賠償を求めるという法があるが、規模がでかくなるとその制度は機能しなくなるのは理解に苦しむ。
アイヌ民族の歴史問題の核心は民法問題(所有の問題、不法行為の問題)だ。つまり、集団的不法行為の救済方法をどう考えるかだ。アメリカでは以前はジョン・ロックの考えである無主地に開拓してそのみかえりとして土地取得が出来るという従来の考え方から大きな転換がなされて、現在では民法(所有法)専門の学者達が議論を始めた。それに刺激を受けて、自分も専門的なところから論文を2000年から書いてきたが、まったく議論にならないというのが現状だ。

補償は金銭問題だけではなく、民族的な「対立・復習の連鎖をどう抑えるか」「どのように関係を修復していくか」が大事であり、以下のプロセスが必要だ。
①過去の不正義・不法行為の事実の解明(そのために真実究明委員会など)
②それをうけた加害者側からの不正義事実の承認、そしてその責任の認識
③被害者に対する謝罪、その真正さを裏付ける金銭的授受
④以上を受けて、被害者の「赦し」
真の意味で加害者は被害者と向き合い、どうしたらいいのかというプロセスを考える際に、謝罪がより根本的だ。だが、いずれもなされていない。
今回のアイヌ民族副読本「修整」事件の問題は、①にまつわる問題だから、重要なことだ。

このような補償をせず、日本は「福祉」対策を行っている。
(「補償アプローチ」の限界・制限と「福祉アプローチ」との比較に関しては遊ブックレットP.61ff参照)



はじめてみた海鳥


さて、いよいよ、明日、北海道大学を相手に、先祖の遺骨を盗掘された遺族三名が遺骨返還とアイヌ民族の宗教観に基づいて先祖の霊をお祭することを妨害され続けてきたことに対する損害賠償訴訟をおこします。

その後、6時15分より、かでる2・7で、シンポジウム「さまよえる遺骨たちPart2」を開催します。
副題は、「アイヌのお骨はアイヌのもとへ~遺骨返還訴訟と「象徴空間」計画」で、内容は以下の通り。

【開催時間】 午後6時15分~8時45分
【会場】 かでる2.7 1060会議室
【プログラム】 
経緯説明  清水裕二さん(北大開示文書研究会共同代表)
発言  「肉親の眠る墓を掘られた母の遺言」 城野口ユリさん(アイヌ遺骨返還訴訟原告、少数民族懇談会副会長)
発言  「北大には実態解明の責任がある」 小川隆吉さん(同、北大アイヌ人骨台帳開示請求人)
講演  「遺骨は誰のものか」 榎森進さん(東北学院大学教授)
報告  「浦河町杵臼コタンへの遺骨返還訴訟について」 市川守弘さん(弁護士)
討論  コーディネーター 殿平善彦さん(北大開示文書研究所共同代表)


チラシ(PDF)や、前回シンポジウムの記録は下記のURLをご覧下さい。
北大開示研究会 http://hmjk.world.coocan.jp/symposium2012.html



留萌の朝日です。
さきほど、印刷物の準備をすべて追え、明日に備えます。明日以降、裁判のことやシンポ報告などをUPしていきます。