アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

『アイヌ民族副読本』問題を考える市民の集いパート3 案内

2012-09-06 11:36:11 | インポート
以前に、アイヌ民族を含む草の根市民グループ「チ カラ ニサッタ ~我らつくる明日~」(代表 島崎直美・小泉雅弘)で、アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会(以下、有識者懇)に向けて「提言」を提出しました(2009年3月20日)。

その前文で、「アイヌ民族の先住民族としての権利の回復が、この日本という社会において私たち一人ひとりが互いを尊重しあいながら親和して生きる関係を築いていくうえで、必要不可欠の課題であると考え、その実現のために努力することを目的」とし、日本政府がアイヌ民族を日本国の先住民族として認知し、それに伴う法制度や施策について提言する有識者懇を設置したけれど、草の根の市民の声がそこに反映されることを願って「提言」することを述べています。

具体的な提言として、
一、権利保障に向けた整備
1.日本政府に常設の審議機関の設置を求めます。
2.植民地化や差別の調査機関設置を求めます。
二、保障すべき権利とその具体的措置
1.アイヌ民族の自治機関設置への協力およびその機関と政府が協議する場の設置を求めます。
2.国有地および公有地に対して、アイヌ民族に自然資源利用権を認めることを求めます。
3.アイヌ語を公用語にすることを求めます。
4.民族教育を受ける機会の保障と、偏見と差別を除去する措置を求めます。
5.アイヌ民族の経済的、社会的条件を改善し、集団間の格差を是正することを求めます。
6.儀式用具や遺骨の返還を求めます。
7.アイヌ語・紋様などの知的財産の権利を保護する機関の設置を求めます。
8.アイヌ民族の越境権を求めます。

説明と共に「先住民族の権利に関する国際連合宣言」の該当条文が付されています。

今、振り返って読み直してみても、重要なものばかりと感じるのですが、この「提言」が有識者懇でどのように扱われたかはまったく応答がありませんでしたから不明のままですし、アイヌ政策推進会議の現在の動きをみると、「審議機関の設置」ひとつだけしか叶えられていません。
そして、アイヌ政策の進歩状況を具体的に市民に示してほしいのですが、それも不透明のままです。

有識者懇「報告書」(2009年7月)の、「今後のアイヌ政策のあり方」(P.23~)には、かつての「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」報告書(1996年)に触れて、アイヌ民族の「先住性を認めたが、これは事実の確認にとどまり、新たな政策とは結びつけられていなかった」し、「その後制定されたアイヌ文化振興法においても同様であり、同法が推進する文化振興施策はアイヌの人々の先住性から導かれるものではなかった」ので、アイヌ民族が先住民族であることを認め、そこから、今後のアイヌ政策は、国の政策として近代化を進めた結果、アイヌの文化に深刻な打撃を与えたという歴史的経緯を踏まえ、国には先住民族であるアイヌの文化(言語、音楽、舞踊、工芸等に加えて、土地利用の形態などを含む民族固有の生活様式の総体の意)の復興に配慮すべき強い責任がある、と述べています。

が、今回は「新たな政策」に結びついているのかまだわかりませんし、吉田邦彦さん(『アイヌ民族の先住補償問題』2012/08/04自由学校遊発行)が述べているとおり、補償問題に関しては後退しています(P.9)。



さて、吉田さん前掲書の内容ですが、「1.はじめに」に続いて、「2.アイヌ民族の歴史」が土地問題を中心に短くまとめられています。副題の通りに「幾重もの『所有侵害のくびき』」を負わされているのだ、と。

明治5(1872)年の北海道地所規則、明治10年(1877)念の北海道地券発行条例により、それまで何千年もの間、アイヌ民族が生活し使用していた土地(土地利用権)は、「無主物先占」(民法239条2項)的発想から無視された。そのことは「みのがされるべきではない」と吉田さんは述べています。
さらに、アイヌに対し狩猟禁止(明22:1889年)、鮭の禁漁化(明29:1896年)と生業奪取、財産搾取を行った。その上で農耕を強制し、不毛の未開拓地を賦与する対策を取るが、開墾を15年以内に成功することが条件となっており、結果的に没収された割合は道北が7割以上、と価値を除く道東は4割以上(釧路、日高は3割以上)、石狩も5割を越えていることに「注意が必要」だ、と。これほどの土地が没収されていたとは・・・。「保護対策」が名ばかりであることがわかります。
そして、そもそもアイヌ民族の土地であり土地利用していたことを無視・黙殺し、「先住民族の土地利用侵害という集団的不法行為については、補償問題が伏在している」と吉田さんは指摘し、アメリカなどでは民法(所有法)の問題として議論が蓄積されている、と。

民法的に解決しなければならない問題が、隠され、しかも、そんな権利はないかのようにすすめられている現在のアイヌ政策推進会議のあり方に疑問だらけです。

さて、『アイヌ民族副読本』問題を考える市民の集いパート3のご案内を頂きました。吉田さんが話されるというので今度こそ聞きに行きます。来週は忙しくなります。

『アイヌ民族副読本』問題を考える市民の集いパート3
 3万筆を越える署名、道内外から寄せられた抗議・要請、さらには財団内での厳しい指摘の結果「歴史の改ざん」と「新編集委員による新たな副読本作成」にストップをかけることができました。この間の成果をみなさんに報告するとともに今後の課題をともに考えたいと思います。

日時 : 9月11日(火) 午後6時半~8時半       参加費+資料代:300円
会場 : かでる2・7 「820研修室」(札幌市北2西7)
内容:提言~吉田邦彦(北大大学院法学研究科教授)
「アイヌ民族の先住補償プロセス~副読本問題との関係で~」
主催:アイヌ民族副読本問題を考える会
問い合わせ先 ainu_subtext@yahoo.co.jp




息子と隣町にそびえる暑寒別岳を登頂。登り3時間半、降り2時間でしたが、そうとう苦しみました。体力が落ちていることを実感。まじめに鍛えなおそうと考えています。
上の写真は途中で見つけたエゾライチョウ。下は山頂から雨竜方面。