日本の個人資産は「1500兆円」、年金積立金が「150兆円」、途方もな
い金額である。年金運用の世界的趨勢は信用できる投機機関に投資して利益
を上げる事にある。欧米の国々の年金運用は、それぞれの専門機関(家)が
安全な投機機関を選定して利益を上げている。日本も年金積立金を寝かした
ままにせず信頼できる投機機関を活用して堅実に利益を上げてきた。ところが
黒字、赤字の起伏はあったものの、米サブプラム住宅ローンの煽りから膨大な
赤字を計上した。07年度(06年12月時点は約7900億円の赤字)は年間
“約5兆円”の赤字を出した。・・・08年1月~3月期の運用は更に悪化。・・・一
歩間違えれば、コツコツ積み立てた年金に皹(ひび)が入りかねない。運用主
体の独立行政法人「年金積立金管理運用機関」が発表した。前身の特殊法人
「年金資金運用基金」が市場運用を始めたのは01年からである。その年度は
赤字“1兆3100億円”、02年度が“3兆600億円”、そして07年度が遂に<
約5兆円>の赤字を計上した。ところが06年度までは累積で“約13兆円”の
<黒字>を出している。運用の仕方によっては利益を上げる事も出来る、と証
明した。しかし昨今の物価の高騰、値上げダッシュ、54年振りの株価の低落を
見ると、そうも言えない。今後も市場低迷が、このまま続くとすれば年金財政の
圧迫にもなりかねない。運用には慎重を要する。年金積立金150兆円のうち
“100兆円”を運用している。万が一、サブプライムローンの様に投機機関・投
資先が運用に失敗すれば、その時点で日本の年金財政は破綻する。そういう
一か八かの賭場的側面を持っている。先の有識者の集まりでも150兆円の年
金積立金のうち「10兆円」程度なら万が一失敗しても被害額を最小限に留め
る事が出来る、と公表している。兎に角、コツコツと積み立てた年金基金であ
る。国民の信頼ある負託を受けている?運用主体は慎重にも慎重を期して運
用に当たってもらいたい。私が思うに、健全で堅実な公的機関による運用が
“年金積立金(基金・制度)”の「王道」であると思う。賭博的運用は如何なもの
か疑問を禁じえない。“金ころがし”の域、範疇を出ていない。「汗水垂らして真
っ当に働いて稼いだ金」こそ、が、生涯を支えるに値する金、“年金積立金”で
ある。そういう金の活用こそ、が、個人や国家の<在るべき姿>、<矜持>で
ある。それが、本来の“稼ぐ姿”である。――その事に関しては何れの日にか、
詳細に開陳したい――兎に角、国家が投機マネーの様に右往左往する醜態だ
けは止(や)めてほしい。・・・
※付記:運用資産構成・・・
●{債券}・・・約7割(国内外)
●{株式}・・・約3割
■「07年度の運用実績」
▲4 月~6 月期・・・約2兆3700億円(黒字)
▲7 月~9 月期・・・約1兆6300億円(赤字)
▲10月~12月期・・・約1兆5300億円(赤字)