花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「秋草文様」について

2010-07-20 | 文様について

presented by hanamura


梅雨が明けて、ぐんと暑くなってきましたね。
空にはもくもくとした入道雲が
どーんと居座っています。

先日、道を歩いていると
どこからか風鈴の「リンリーン」という
涼やかな音色が聞こえてきました。
暑い季節の風鈴の音は、一服の清涼剤ですね。

これからの季節には、
風鈴のように涼を演出する
心配りが随所に見られます。

もちろん、夏用の着物や帯の意匠にも、
目に涼しいものがたくさんあります。
今日は、その中のひとつである
「秋草文様」についてお話ししましょう。

「秋草文様」とは、
秋の野山などに咲く草花をモチーフにした文様です。

秋に咲く草花は多くありますが、
秋草文様にあらわされるものは、
「萩(はぎ)」「薄(すすき)」「葛(くず)」「撫子(なでしこ)」
「女郎花(おみなえし)」「藤袴(ふじはかま)」「桔梗(ききょう)」
といった秋の七草が中心となり、
ときには、菊や竜胆(りんどう)なども加えられます。

秋草文様には、
秋の七草が全部あらわされているもののほかにも
萩や薄のみといったものなどがあり、
その時々で草花の組み合わせは変わります。



もともと秋の七草とは、
奈良時代の歌人、山上憶良(やまのうえ の おくら)が
秋に愛でる草花を選び、
詩にして詠んだのがはじまりです。

奈良時代~平安時代に編纂された
「万葉集」には山上憶良を中心に
秋草を詠んだ詩が多くみられます。

「万葉集」以降、
秋草文様は四季を代表する草花文様の中でも
もっとも人気のある文様のひとつとして
工芸品や日本画などの題材にも多く用いられました。

着物や帯の意匠は、
季節を先取りしたものが多いのですが、
夏のお召しものにあらわされる秋草文様は
とくに人気があります。

とはいえ、秋草文様は、決して華やかではありません。
どちらかといえば、秋の野山にひっそりと自生する草花たちです。

生命力がみなぎる夏が瞬く間に終わり、
涼やかな風が吹き通る秋に咲く草花からは、
「季節のうつろい」というものが
嘆息とともに連想されます。
そんなはかなさや侘びしさといった
和の風情を強く感じさせてくれる秋草文様は、
日本人の情緒にぴったりくる文様なのでしょう。

※写真の名古屋帯は花邑銀座店にて取り扱っています。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は7月27日(火)予定です。


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