花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「亀文様」について

2011-01-26 | 文様について

presented by hanamura


大寒を迎え、冷たい風の吹く
寒い日がつ続いています。
それでも陽射しは、
少しずつ春めいてきている気もします。
街角では、猫が気持ち良さそうに
日なたぼっこをしていました。

さて、今日は亀文様について
お話ししましょう。
亀と前回お話しした「兎」とは、
イソップ童話の「ウサギとカメ」のお話や
「もしもし かめよ かめさんよ~」
という童謡でもおなじみのコンビですね。

童話や童謡で紹介されているように、
ぴょんぴょんと飛び跳ねて走る兎に比べ、
亀の歩みはとても遅く、ゆったりとしています。

しかし、ゆったりと動く生き物は
寿命が長いものが多いようで、
亀も寿命が長く、
100歳以上も生きるものもいるようです。

また、亀は寿命が長いだけではなく、
人類が誕生する遥か昔の
約2億2,000万年も前から地球上に棲息し、
その歴史も長いのです。
そのためか、亀は昔から神秘的な存在として
考えられてきました。

日本においては、すでに弥生時代の銅鐸に
亀の文様があらわされ、
古墳時代には北を守る神様として
壁画の北側に亀の図が描かれました。

昔話の「浦島太郎」でも、
亀は浦島太郎を竜宮城へ導く使者として登場しますね。

亀は文様のモチーフとしても、
長寿を象徴する吉祥文様として、
平安時代の頃から用いられてきました。

なかでも「蓑亀(みのかめ)文様」という亀の文様は、
長生きした亀の尾に海藻が蓑のようについた様子をあらわしたもので、
最も縁起の良いものとされています。

しかし、その一方で、亀は手が合わせられないことから、
「手打ちができない」=契約や和解が成立しないともいわれ、
昭和の中期ごろまで、花柳界や証券界では、
亀の文様が敬遠されたこともあるのです。

また、正六角形の亀の甲羅を文様化したような「亀甲文様」もあります。
もともと亀甲文様は、飛鳥時代に大陸から伝えられた幾何学的な文様でしたが、
そのかたちが亀の甲羅に似ていることから「亀甲文様」とよばれ、
平安時代には有職文様となりました。

この亀甲文様には多くの種類があります。
亀甲に花が入った亀甲花菱、
亀甲が入れ子状になった子持亀甲、
亀甲を山形状に3つ組み合わせて繋くげた毘沙門亀甲、
亀甲繋ぎが意匠の所々に配された破れ亀甲があります。



上の写真の亀甲文様は、
亀甲の中に四季折々の草花が配されたものです。
亀甲文様はこのようにとても自由度があるため、
現代でも着物や帯の意匠として多く用いられています。

亀の文様は亀の寿命と同じく、
昔から長く息づいている文様のひとつなのです。


※上の写真は花邑 銀座店にてご紹介している名古屋帯の文様です。

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次回の更新は2月2日(水)予定です。


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