花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「兎文様」について

2011-01-11 | 文様について

presented by hanamura


新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

花邑 銀座店では、私の祖母がつくった
毎年恒例の干支人形を飾って、
新年のお客さまをお迎えしております。

新年はじめてのお話のテーマは、
やはり、その干支の兎。
兎の文様についてです。

兎の年は、跳躍や発展に繋がる年といわれています。
実際に、兎年のときは株が上がるという統計もあるようですね。

兎はその愛らしい姿はもちろん、
性格も穏やかなことから、
古今東西を問わず、人々に愛され、
親しまれてきた動物です。

童話やおとぎ話など、
話の主役に兎が登場するものはとても多いですね。
日本では、「古事記」に記された「因幡の白ウサギ」、
「カチカチ山」や「ウサギとカメ」のお話が有名ですが、
西洋では「ピーターラビット」が有名です。
「不思議の国のアリス」にも登場しますね。



しかし、兎といえばやはり「月に兎」を
イメージされる方も多いことでしょう。
満月の夜に月を眺めると、
餅をついている兎のシルエットが見えてしまうのは、
日本人ならではの感覚かもしれません。

しかし、この「月に兎」というイメージは、
日本から遠く離れた古代インドの神話に由来しています。

その神話とは、
帝釈天という神様が、
やせ衰えた老人に身をやつして、
兎と、狐と猿のまえにあらわれたとき、
兎が老人の飢えを防ごうと
自ら燃え盛る炎の中に飛び込んで、
我が身を捧げたというものです。
老人に身をやつしていた帝釈天は、
その兎の行動を称え、
黒ごけになった姿を月の中に納めたので、
月には兎のシルエットが残されたというお話です。

やがて、この神話は古代のインドにおいて、
仏教に取り入れられ、
中国を経て飛鳥時代のころに日本へ伝えられました。

正倉院に伝わる当時つくられた織物のなかには、
兎が織りこまれた意匠があります。
その織物には、不老不死の霊薬をついている
兎の姿があらわされています。
この不老不死の霊薬には、
中国の神仙思想の影響があるようです。

やがて、日本では当時の人々が満月のことを
「望月(もちつき)」と呼んだことから、
発音の似た「餅つき」を連想するようになったようです。
そして、ぺったんぺったんと餅つきをする
どこか茶目っ気のある兎の姿が「月にうさぎ」のイメージとして、
定着するようになったようです。

桃山時代になると、意匠や調度品などの文様に
兎は盛んに用いられるようになりました。

次週は、桃山時代以降に用いられた兎の文様についてお話ししましょう。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は1月18日(火)予定です。


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