花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

花邑日記

2008-11-25 | 花邑日記

presented by hanamura


「花邑日記」

みなさんは、「古渡更紗(こわたりさらさ)」とよばれる「更紗」をご存知でしょうか。
「古渡更紗」とは、17世紀から18世紀までに印度から日本へもたらされた「更紗」です。
江戸時代の日本では、この「古渡更紗」がとても珍重され、
とくに大名や茶人などの間で好まれていました。

この「古渡更紗」の名品が展示された「古渡更紗展」が、
いま「五島美術館」で開催されています。
この機会を逃さずとばかり、
先週の水曜日に世田谷区の上野毛まで足を運びました。

「五島美術館」は、緑の多い閑静な住宅街の中にある美術館です。
美術館の敷地内にはとても広い庭園もあって、
庭園を散策することもできます。
館内に入り、窓から見えるその美しい庭園を眺めながら、
さっそく展示会場に向かいました。

展示会場では、彦根藩・井伊家のコレクションである「彦根更紗」をはじめ、
「ヨーロッパ更紗」、「和更紗」など更紗の名品が数多く展示されていました。
「金色」が施された「金更紗」のまばゆい色彩、
草花や人形などの魅力的な文様。
そのどれもが素晴らしく、ひとつひとつに見入ってしまいました。



「古渡更紗」はその文様も、もちろん素晴らしいのですが、
印象に残ったのは、「印度茜」のまるで血のように深い「赤」です。

その「赤」は、「古渡更紗」がもたらされた当時の日本では
見ることができない「赤」でした。
「古渡更紗」では、その「赤」が美しく、
とても効果的に用いられています。
また、その鮮烈な色彩感覚は現在でも褪せることなく、
人々を魅了しています。
その「赤」は、帰宅してからも私の目に焼き付いて
離れなかったほど美しいものでした。

偶然にも、この日から仕立てはじめた帯の生地は、
五島美術館でみた「古渡更紗」のような文様の和更紗でした。
この「和更紗」の文様は、
「彦根更紗」などの「古渡更紗」を写したもののようです。



当時の人々が「更紗」に対して持っていた憧れと、
その文様を和更紗に写し取り入れた職人さんの創作力に
感慨を深くしつつ、仕立てを進めています。

ちなみに、この「古渡更紗展」は11月30日(日)まで、
開催されています。
まだ訪れていないという方はぜひ一度。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は12月2日(火)予定です。


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