花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

帯の種類-半巾帯-

2008-05-25 | 帯の種類

presented by hanamura


「半巾帯について」

夏が近づいてきましたね。
着物を着て歩くと、汗がじわりとでてくる季節になりました。

しかし、夏は花火や祭りなど
着物を着て出かけたいイベントの多い季節ですよね。

そこで、今回はこの季節に使いたい
「半巾帯」についてのお話をします。

「半巾帯」は浴衣のときにも合わせる帯なので、
知っている人も多いでしょう。
「半巾帯」の寸法は、巾が4寸~5寸(15~19cm)、
長さが9尺~1丈5寸(341cm~398cm)です。
帯の長さは一般の帯と同じですが、
帯巾が一般の帯(8寸)の半分で仕立てられています。



お太鼓が重くならないため、帯しめがとても楽です。
見た目もすっきりとしているので涼しげで、
これからの季節にはぴったりの帯です。

また、いろいろな結び方があるので、
そのときの気分によって結び方を変えて楽しむことができます。
素材もいろいろあるので、
いくつか持っていれば着物に合わせて選ぶこともできます。

半巾帯の中でよく知られているのが「博多織」です。
「博多織」は帯反そのものがしっかりとしているので、
帯芯を入れずに仕立てます。

一方、帯芯を入れて仕立てた「半巾帯」は
紬や小紋、軽い付け下げの着物にも合わせることができます。

そして、錦織りの「半巾帯」は、
訪問着用の着物に用いることができます。



一般的に「半巾帯」に帯芯を入れて仕立てるときには、
帯反を半分に折って縫い合わせます。
もちろん違う布を縫い合わせて仕立てるものもあります。
違う布を合わせると、表地と裏地の両面を楽しむことができます。
また、裏地をちらっとのぞかせるように結ぶのもお洒落ですね。

気軽に結べて、結び方も楽しめる半巾帯は
夏だけとはいわず、ふだん着の着物にも結びたい帯です。

● 写真の半巾帯は「帯のアトリエ 花邑hanamura」にて取り扱っております。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は6月3日(火)予定です。


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帯の種類-綴れ帯-

2008-05-20 | 帯の種類

presented by hanamura


「綴れ帯について」

みなさんお馴染みの「名古屋帯」の織りの種類に
「綴れ帯(つづれおび)」と呼ばれるものがあるのをご存知ですか?
知っている人はよく知っている帯ですが、
独特な技法でつくられる結構高価なものなので、
なかなか目にする機会も少ないのではないでしょうか。

今回は、その変わった技法でつくられる
「綴れ帯(つづれおび)」についてお話ししましょう。

「綴れ帯(つづれおび)」は、
ふだん用にも礼装用にも用いることができる帯です。
「綴れ(つづれ)帯」の「綴れ」とは、「綴れ織り」のことを指します。
「綴れ織り」の布は、エジプト、中国、フランスなど、
世界各地の国々で古くからつくられてきました。
「綴れ織り」の布が日本に伝えられた時期は6世紀頃といわれ、
正倉院や法隆寺には、この時代につくられた「綴れ織り」の布が
いくつか残されています。

「綴れ織り」の作業では、はじめに枠、または機(はた)に
必要な長さの経糸(たていと)を張ります。
そして、経糸に緯糸(よこいと)を通して組み込みます。
この経糸に緯糸を組み込むときに、
筬(おさ)で打ち込むのが一般的には多いのですが、
「綴れ織り」では、爪で緯糸をかき寄せて組み込みます。



そのため、「綴れ織り」を行う職人の爪は、
のこぎりの刃のようにギザギザになっています。
「綴れ織り」は、職人の爪そのものを道具として用いて
つくられているのです。
このことから「綴れ織り」は「爪掻つづれ」とも呼ばれます。

爪でかき寄せられ、緯糸だけで表現される「綴れ織り」の文様は
たいへん緻密なものです。
また、他の織物の2倍以上の緯糸を用いるので、
その生地は張りが強く、とても丈夫なものになります。
そのため、仕立てのときには「八寸名古屋帯」のように、
帯芯を入れずに両端をかがり縫いします。

杉江ぎん(※1)が開業した杉本屋独自のかがり方に、
「本かがり」と呼ばれるものがあります。

「八寸名古屋帯」では、かがるための糸に
手縫い用の絹糸を用いますが、
「本かがり」では縫い合わせる糸に
織られた生地(帯反)から抜いた絹糸を用います。
手縫い用の絹糸では弱く、ほどけやすいからです。
「綴れ織り」の布から直接抜いた糸は、太くて丈夫なのです。

「本かがり」では、
かがり縫いする前に生地(反物)の下端から必要な量の緯糸を抜きとっておき、
それを用います。
「綴れ帯」の反物は仕立て上がりより長くつくられているため、
かがり縫いに必要な分の糸をとっても
仕立て上がりが短くなることはないのです。



まず、反物から抜きとった糸は3つに分けておきます。
そして1つめはかがりに必要な長さを紙などに巻きつけます。
あとの2つは鉛のついた小片に巻きつけます。

この小片に巻いた2つは、かがり縫いをする部分の両端につけます。
そして、両端を合わせて1つめの糸をかがっていきます。
このとき、糸を通すごとに小片に巻いた糸を絡ませます。
仕立てというより、糸を絡めながら織っていくような作業です。
糸を3つに分けて使うため、「本かがり」は
「三つかがり」と呼ばれることもあります。

「綴れ帯」を「本かがり」すると、
生地から直接抜いた糸を使うために
色に差がなく、ほどけにくい縫い目の
きれいな帯に仕立てあげることができます。

しかし「本かがり」はたいへんな手間がかかるため
その注文を受けることはほとんどなくなってしまいました。
また、「綴れ織り」自体も
そのつくり手の数は少なくなってきています。

「綴れ帯」は手間をかけることによって
より芸術性のある、格調の高い帯になります。
いつまでも「憧れの帯」として、
なくなることがないようにと祈るばかりです。

(※1)2007年12月14日更新のブログ「名古屋帯の創案者、杉江ぎんについて」を参照してください。

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帯の種類-八寸名古屋帯-

2008-05-13 | 帯の種類

presented by hanamura


「八寸名古屋帯について」

「名古屋帯」や「腹合わせ帯」など、多くの帯には「帯芯」が入っています。
帯芯を入れることによって、
帯を着けたときにお太鼓の形を保つことができます。

しかし、今回お話しする「八寸名古屋帯」は、帯芯が入っていない帯です。
「八寸名古屋帯」は、帯芯は入れずに帯反のはしを合わせ、
かがり縫いをして仕立てます。
「八寸名古屋帯」の帯反は織りのものが多く、
生地がとてもしっかりとしているので、
帯反をかがり合わせるだけで
お太鼓の形を保つことができるのです。

このかがり縫いには、「全かがり」と「半かがり」があります。
「全かがり」のときには、お太鼓部分を全てかがります。
一方、「半かがり」のときには、たれから8寸までをかがり、
お太鼓の山からたれのほうに3寸だけかがります。
両方とも手先部分は半分に折り合わせてかがります。

このかがり縫いの作業では「仕立て台」を用いることはありません。
「くけ台」と呼ばれる、かがり縫い用の道具を用います。



「くけ台」はL字型のかたちをしていて
高さは50~60cmぐらいのものです。
そしてその上部には紐がついています。

かがり縫いのときには、
この「くけ台」を向かい合わせるように置き、
両方の下板の上にからだをのせて「くけ台」が動かないように固定します。
そして、帯反のかがる部分の両端に針を刺し、
その針に「くけ台」上部についた紐をひっかけます。
このときに、帯反がたるむことがないように「くけ台」の位置を調節します。
そして、帯反がまっすぐに張られていることを確認しながらかがり、
縫い合わせていきます。

帯反そのものをかがり縫い合わせる「八寸名古屋帯」は、
仕立て上がりと同じ8寸~8寸2分の巾でつくられます。
この「8寸」という帯反の巾の寸法から
「八寸名古屋帯」という名がつけられたようです。

一方、帯芯を入れて仕立てる帯は、「九寸名古屋帯」と呼ばれることがあります。
これは、帯反へ帯芯を入れるために
仕立て上がりより1寸多い9寸でつくられているからなのです。

もともと「八寸名古屋帯」という名は、
この「九寸名古屋帯」と区別するためにつけられたものだったようです。
ちなみに、夏用の絽つづれや紗などは「単名古屋帯」とよばれています。





「八寸名古屋帯」は、帯芯を必要とせず、仕立ての手間も少ないため
一時は「九寸名古屋帯」より多くつくられ、用いられていました。
しかし、現在では以前に比べて着用する人は減ってきています。
それでも八寸名古屋帯ならではのしっかりとした織りの素材感に魅せられ、
愛用している人も数多くいます。
また、織りの素材感だけでなく、
素材自体も絹、綿、さらに紬織りなどさまざまで、
バリエーションが豊富なことも八寸名古屋帯の魅力です。

通気性がよい八寸名古屋帯は暑い季節にとても重宝する帯です。
とくに、これからの季節に向けて1本はもっていたい帯ですね。

● 写真の八寸名古屋帯は「帯のアトリエ 花邑hanamura」にて取り扱っております。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は5月20日(火)予定です。


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帯の種類-お染名古屋帯、お染帯、松葉帯-

2008-04-22 | 帯の種類

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「お染名古屋帯」「お染帯」「松葉帯」について

おなじみの名古屋帯にも種類があるのを皆さんご存知ですか。
一般的な名古屋帯に対して「お染名古屋帯」という帯があります。
「お染名古屋帯」とは別に「お染帯」という帯もあるのですが、
「お染(そめ)」とは、なんだか愛嬌があって、
可愛らしい呼び名ですよね。

「お染」とは、歌舞伎や浄瑠璃で登場する娘役の名前です。
この「お染」が着用していた「帯」のことを
「お染帯」と呼びます。

「お染帯」は、舞台の上で目立つように考案されたものでした。
黒繻子(くろしゅす)をだいたんに表地の両端に配置し、
その中間には、鮮やかな色で鹿の子絞りが施されています。
裏地にも表地と同じ黒繻子が用いられます。

「八百屋お七」(※1)の物語で「お七」も同じ形の帯を着用していたこ
とから、「お七帯」と呼ばれることもあります。

しかし、「お染名古屋帯」は、
「お染帯」、「お七帯」のような
だいたんな柄行きの帯ではありません。
そのつくりもだいぶ違うものです。

まず、表地には帯反のみが用いられ、
「お染帯」のように両端に黒繻子を配置することはありません。
裏側の仕立て方にも違いがあります。
「お染名古屋帯」のお太鼓からたれの部分には、
表地の帯反が折り返されています。



前から手先部分の裏地には別布を使いますが、
その素材は「お染帯」のような黒繻子ではなく、
シンモス(※2)や羽二重(※3)を用います。
表地を2分ほど返して仕立てます。
つまり、折り返された表地が額縁のようになっています。
これは、帯を結んだときに裏地の素材がみえないようにするためです。
「お染名古屋帯」は、この裏側のつくりから
「額縁仕立て」とも呼ばれます。

この「額縁仕立て」の帯には、「松葉帯」と呼ばれる帯もあります。
仕立て方は「お染名古屋帯」と同じですが、
手先部分のみを2つ折りにして縫い合わせます。
この帯を上から見ると、まるで松葉のようにみえます。
このすがたから「松葉帯」という名前がついたようです。
ちなみに、この2つ折りの長さによって
松葉(2尺5寸)と大松葉(1尺)に分けられます。



「お染名古屋帯」「松葉帯」の仕立て上がりの寸法は、
巾8寸~8寸2分(31cm)、長さ9尺5寸(360cm)。
名古屋帯や腹合わせ帯と同じ寸法です。

しかし、この2つの帯は額縁仕立てなので、
帯の裏地には芯モスや羽二重を使うため、
用いる帯地が少なくてすみます。
また、前を折り合わせたときに
帯反を合わせたときよりも軽くなるのです。

つまり、どちらもお手ごろな値段で
気軽に身につけられる帯なのですが、
名古屋帯や腹合わせの普及、
また仕立てが特殊なためにたいへん手間がかかることもあって、
今では希少になってきています。

(※1)天和二年の江戸大火事の折に、身をよせた寺の小姓に恋心を抱い
たお七は、もう一度火災になればまた会えると自らの手で放火をしてしまい、つい
には火刑となってしまう悲恋の物語です。

(※2)薄地の平織綿布です。

(※3)和服の裏地として使われる平織の絹織物です。

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次回の更新は4月29日(火)予定です。


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帯の種類-腹合わせ帯-

2008-04-15 | 帯の種類

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「腹合わせ帯」について

「花邑の帯遊び」の第1回目で
「名古屋帯」について※お話ししましたが、
帯には、名古屋帯のほかに10種ほどの
仕立て方やつくりが異なるものがあります。
これからは、その帯の種類についてお話ししていきましょう。
今回お話しする帯は、まず「腹合わせ帯」です。



「腹合わせ帯」とは、同じ寸法の布地2枚を合わせて
仕立てた帯のことです。
「腹合わせ帯」の寸法は、長さ9尺5寸、巾8寸~8寸2分。
この寸法は「名古屋帯」と同じです。
そして「名古屋帯」のように、
おもにふだん使いの着物に用いられます。

しかし、かたちは「名古屋帯」とは若干異なります。
「名古屋帯」は前巾を、お太鼓巾の半分で仕立てた帯です。
一方「腹合わせ帯」は、お太鼓のたれから手先までを
まったく同じ巾に仕立てた帯のことを指します。

そのため、帯を結ぶときには、
お腹の部分にあたる前巾の部分を折り合わせなくてはいけません。
このことから「腹合わせ帯」という呼び名がついたようです。

はじめから前巾が折り合わされて、
仕立てがされている「名古屋帯」の便利さに慣れてしまった現代では、
帯を結ぶときに手間がかかると感じる人もいるでしょう。

しかし「腹合わせ帯」は、大正時代までは
もっとも着用されていた帯だったのです。

「腹合わせ帯」は元禄時代(1688年~1703年)につくられたのが
はじまりだといわれています。
現在のものとはかたちがすこし違っていました。

当時の寸法は、長さ1丈5寸8分、巾8寸。
巾は、現在とあまり変わりませんが、
長さは、1尺(3.8cm)ほど長く仕立てられています。
これは、帯の結び方が現在とは違うためです。

また、当時の「腹合わせ帯」は、
黒天鵞絨(くろビロード)と白繻子(しろしゅす)を合わせたものでした。
表地と裏地を反対の色で仕立てたことから、
「昼夜帯」または「鯨帯」とも呼ばれていたようです。

「腹合わせ帯」は、江戸から明治にかけて庶民たちに愛用されました。
しかし、大正時代に「名古屋帯」が考案され、
戦争などで布が不足になったこともあり、
「腹合わせ帯」を結ぶ人は、しだいに減っていきました。

しかし、現在でも「腹合わせ帯」がなくなることはありません。
それは、「名古屋帯」とは違った特長があるからです。

「腹合わせ帯」は、前巾にあたる部分が折られていないので、
体形に合わせて前巾を調節することができるのです。
前巾が調節できれば、
身長に合わせてバランスよく着物を着こなせます。



また、むかしとは違って、
表地と裏地の色柄をさまざまに合わせることもできます。
いわばリバーシブルの帯なのです。
一般的に「腹合わせ帯」は、
「名古屋帯」よりも高価なものですが、
1本で2度楽しめるので“お得な”帯ともいえますね。

「名古屋帯」とは一味ちがった「腹合わせ帯」を
ときには楽しんでみるのもいかがでしょうか。

※2007年12月07日更新のブログ「名古屋帯について」を参照してください。

● 写真の腹合わせ帯は、帯のアトリエ「花邑hanamura」にて販売しています。

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次回の更新は4月22日(火)予定です。


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