ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

七都市物語シェアードワールズ 小川一水 他

2009-05-28 17:11:00 | 
地球の地軸である北極点と南極点をつなぐ軸線は、いつの時代も同じ地点にあったわけではない。

地磁気の変化を正確に計測できるようになったのは、20世紀にはいってからだ。理由は不明だが、たしかに軸線は移動していたことが、地磁気の変化から読み取れる。

なぜ変化するのか、いくつかの仮説もあるが、未だ定説とはなっていない。また移動があった場合の影響についての研究も、未だ途上であり、仮説を積み重ね検証しているのが今の現状だ。

では、地軸がいきなり赤道上に移動したらどうなるか?(8億年前には実際にあった!)

北極は温暖な海となり、南極は緑豊かな大陸へと変貌する。海流の流れは激変し、気候は大激変。大地の多くが海に沈み、砂漠は緑地と化す。多くの生物が絶滅する大カタストロフィが起った。

そんなアイディアを用いたのが、田中芳樹が20年ほど前に発表したSF小説「七都市物語」だった。当然に人類は大混乱に陥り、人口は大減少。生き残った人類を支配したのは、月面基地の人々だった。彼らはオリンポス・システムという衛星兵器を用いて地球を制圧した。そして残された技術を用いて、新たな人類の生息域として7つの都市を建築した。

しかし、謎のウィルスにより月面基地の人類は絶滅。ただ、オリンポス・システムはあと200年分のエネルギーを残したまま稼動しているため、地表から500メートル以上の空中は移動できない。

つまり実質、地上と海だけの世界で、七つの都市が互いに覇を競う世界となった。田中芳樹得意の個性的な人物たちが、人の愚かさと欲深さを鋭利な知性で切り裂き、実に面白い戦国絵巻を開帳していた。

SFファンの間では、けっこう人気となり続編が待ち望まれた作品でもあった。しかし、田中芳樹は多忙を極めた。未完の作品だけでも「創竜伝」「タイタニア」「アルスラーン戦記」・・・と五指では足らない。おまけに中国ものに手を染めたばかりか、薬師寺涼子で遊んでいる始末だ。

ついにしびれを切らしたファンの後押しもあり、編集者の悪戦苦闘と若手作家4人の協力を得て書かれたのが表題の作品。要するに丸投げである。

田中芳樹の設定した世界を活用して、異なる主人公を活躍させるならともかく、AAAやギルフォードらもしっかり登場する。若手作家が原作の雰囲気を壊さぬよう努力しているので、そこを腐すつもりはないが、やっぱり田中芳樹の手抜きの感は否めない。

資料地獄にはまっているのか、はたまた気力が落ちたのかは知らないが、あまり感心できません。作品の内容自体はそれほど悪くないのですが、どうも好意的に評価できない。

「アルスラーン」はそろそろ完結しそうだが、「灼熱の竜騎兵」や「地球儀世界」はどうした?「もう少し待つのじゃぞ」@リディア姫と聞かされて5年は経つ。私はバルアミーより気が短い。そろそろ怒るゾ!
コメント (7)
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