ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

みつばちマーヤの冒険 ボンゼルス/熊田千佳慕

2009-05-07 10:42:00 | 
スズメバチは日本の固有種であるが、世界最大の蜂であり、おそらく世界最強の蜂でもある。

アフリカのキラービーもその毒の強さ、攻撃性などでは劣らないし、世界で最も人を襲い被害を出しているが、如何せんスズメバチほどの大きさは無い。

スズメバチはその強力な顎でミツバチを食いちぎり、わずかの時間で数百匹のミツバチを殺してしまう。その強力な毒針を使う必要さえない。たった数匹のスズメバチが、2万匹を超えるセイヨウミツバチの巣に襲い掛り、僅か十数分で全滅に追いやった映像を観たときは、そのあまりの凄惨さに声を失した。

養蜂業者にとって、このスズメバチの襲撃は頭の痛い問題で、ちょっと目を離した隙に襲われ、巣箱は全滅させられる。台風や地震と同じ自然災害と思って、諦めているらしい。

ところが、同じ日本の固有種である日本ミツバチは、このスズメバチに対する攻撃方法を持っていて、簡単にやられはしない。

まず、偵察のスズメバチを巣に誘い込む。この偵察の情報がスズメバチの巣に持ち帰られたら、いかに日本ミツバチといえども勝ち目は無い。だから、この段階で偵察のスズメバチを必ず殺す。

巣のなかに誘いこみ、一斉にスズメバチにしがみ付く。まるでミツバチのボールに見えるほど、沢山のミツバチがスズメバチにまとわり付く。そして、身体を震わせて熱を発する。

日本ミツバチは、摂氏46度まで耐えられるが、あの巨体のスズメバチは44度が限界なのだ。丸いボール状になるほど密集した場合、中心部の温度は45度ちかくにまで上がる。つまりスズメバチは蒸し焼き状態となる。

気がつくと地面には、巨大なスズメバチの死骸が転がっている。もちろん、日本ミツバチも相当数が巻き添えになるが、巣そのものは無事である。この押しくら饅頭作戦で、日本ミツバチはスズメバチを撃退してきた。

こうして、日本列島ではスズメバチとミツバチとの死闘がひと目に触れぬ形で繰り広げられる。海外から輸入されたセイヨウミツバチには、このような戦い方はないので、ただ一方的な虐殺だが、日本ミツバチは刺し違える形でスズメバチを撃退する。

ミツバチを主人公にした作品では、TVアニメの「みなしごハッチ」が有名だが、リアリティというか、真実味という点では表題の作品のほうが若干上だと、私は思います。もっとも私は表題の作品は、知人宅においてあった子供向けの童話で読んだので、アニメ化された作品は観ていません。

童話って、けっこう侮れないと思いましたね。特にこの作品は熊田さんの緻密な挿絵が素晴らしい。実際お子さんの不思議そうな視線を無視して、私は夢中になって読んでいましたから。絵本もたまにはいいものです。
コメント (2)
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