21世紀は、人類が水と原油と食料を争奪する世紀となる。
これは予言ではなく、事実から論理的に考察した予測に過ぎない。ここでいう水とは人が活用できる淡水である。地球上に存在する水の大半は海水であり、淡水は3%程度しかない。
しかも、淡水のうち人類が利用可能なものは残り3%のうち3割程度である。その利用可能な淡水の7割は、農業用水である。水が極めて貴重な資源であることが分かろうというものだ。
ところが日本列島は、暖流と寒流の合わさる海域にあるため、世界屈指の多雨地帯である。おまけに国土の7割は山岳地帯であり森林という水の保水能力が高い自然環境にある。
古来から都市文明を営んできた地域の合共通する悩みは、森林が枯渇していることだ。森の木々を建築建材として、また燃料として乱伐してきたため、荒れ地と化して沙漠化している。シナの中原やオリエントの地を視れば一目瞭然である。そして森を失った文明は衰退している。
その点、日本は森に恵まれて豊富な水資源を享受できた。そんな日本ではあるが、食料だけは極めて自給率が低い。たしかに日本列島は山岳地帯が多く、農耕に適した平地は少ない。しかし、日本の食糧自給率が低い原因は、耕地面積の少なさではない。
家庭での食卓に並ぶ料理の食材を調べてみれば、圧倒的に輸入食材が多いことに気が付かざるを得ない。日本で作るよりも、外国から輸入したほうが安いのが、日本の食糧自給率の低さの大きな原因である。
世界屈指の工業大国である日本は、外国から原材料を輸入して加工、製造して輸出して外貨を稼いできた。その結果が膨大な金融資産であり、日本円という強い通貨である。
大変皮肉なことに、経済大国として確固たる地位を築いたが故に、日本円という強い通貨が、食料輸入を容易にした。農業大国であるアメリカの外圧により、農作物を無理やり輸入してきた側面はある。
しかしながら、食料輸入が増えたもう一つの一因は、日本の商社が人件費の安い国で、日本人好みの農作物を作らせて輸入したからでもある。そして、その輸入農作物を、多くの日本人は喜んで買い込んだ。
その結果、必然的に国内の農家は衰退した。衰退したが故に、生き残るために過剰なまでに政治力を行使して、補助金漬け、保護行政により生き残ってきたのが日本の農家である。
厭らしいことに、既存の農家の保護を重視したため、新規参入が阻害されて、むしろ非効率な体質が温存されている。もしも、一般企業ならば、即座に倒産させたほうが良いと断言できるほどである。
しかしながら、人々の生活に必要不可欠な食料品を作る農家は、社会に必要不可欠な存在である。にもかかわらず、海外から食料を輸入し、安い農産物を供給することで、国内農家を阻害してきた。
この作品が書かれたのは、十数年前である。それでいて、事情は農業にとって良い方向に向いているとは言いかねる。多くの人が問題意識を持ちながら、未だにこの食料自給率の低さを改善できないのが日本である。
嫌な予想だが、そう遠くない将来に、日本人は空腹を抱えて苦労するのではないか。いつまでも、あると思うな原油と食いもん、である。
kinkachoの友人で農家を目指した人は何人かいますが、だいたい農地を手に入れるので挫折をしています。
農家の子じゃないと農家になれません。
がんじがらめの法律、何とかなりませんかね?!
ところが、農業を片手間でやっている兼業農家は、新規参入を嫌がります。この多数派である片手間農家たちの票が欲しくて、政治家は動きません。効率の悪い農協を保護したい役所も同罪です。まァ、ほっておいても、耕作放棄地が増えるだけで、どうしようもなくなってから政治は動き出すと予想しています。