私の学生生活は山登りが中心であった。
だからこそ大学4年になり現役引退となり就職活動を終えた頃、私は55歳(当時はこれが普通だった)になって退職したら、若い頃に登った思い出の山を再び訪れようと考えていた。
肩に食い込む重いキスリングという綿布のザックに喘ぎながら登った鳳凰三山。子連れのヒグマに怯えながら石狩の湿地帯のなかの竹の密生する細い山道を抜けた大雪山系。眼前にそびえ立つ壁のような聖岳の直登。長く退屈な樹林帯を抜けた先の失望の山、光岳。
年をとって、ゆっくりとゆったりと若き日の山を再び辿りたいと考えていた。しかし人生は残酷だ。難病のせいで体力を削ぎ落されただけでなく、激しい運動を禁じられた20代。50代を過ぎて心臓と肝臓に問題が判明し、ますます運動から遠ざかった。
左胸に機械を埋め込まれた今は、運動どころか日常生活を普通に送るために努力が必要になってしまった。もう山には登れない。出来るとしたらロープウェイで山頂近くまで上がるのが精いっぱいだろう。未練がましいので、むしろ嫌悪感さえ感じるが、それさえも贅沢なのだろう。
それでも私は生きている。生きている以上、単に生きるだけでは満足できない。だから若い頃に読んだ本を読み返すことを目的にこのブログを立ち上げた。これはこれで楽しんでいるが、年々読書のための時間をとることが厳しくなってきている。やはり仕事と読書の両立は厳しい。
だから読む速度を遅くして、まずは健康第一、仕事第二、読書は三番手である。幸か不幸か、定年のない自営業なので、顧客から見捨てられぬ以上働き続けることは出来る。残された時間を読書と思索に充てるのが私の老後だと想定している。
そんな私だからこそ、表題の漫画は心に深く刻まれた。数千年生きるエルフの魔法使いフリーレンが、かつて魔王討伐の仲間と過ごした短い時間が如何に貴重なものであったかを知り、改めて冒険の行程を歩み直す物語。
こんな切り口のファンタジー漫画は初めてだ。実に新鮮な感覚で楽しめる。これ、お勧めです。アニメ化もされていますが、私は原作の漫画で楽しんでいます。是非どうぞ。
『葬送のフリーレン』を知らない人だと、よくある異世界物だろうってちょっとなめてかかると思います。
でも、これ、アニメも毎週泣きました。
ヒンメルが出てきただけて条件反射で泣けるくらい、声優の岡本信彦さんの声と喋り方が素晴らしかったです。
最初はギャグ漫画っぽい作品になるようでしたが、出来上ったネームが素晴らしすぎたんだとか。
漫画の絵が素晴らしいので、アニメも芸術レベル高くて良かったです。