ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

追憶売ります フィリップ・K・ディック

2024-01-29 09:29:14 | 

売れれば正義。

それが資本主義社会の鉄則である。どんなに原作が優れていても、売れなければ意味がない。いや、そこそこ売れたはずだ。なにせ高校生の私が覚えていたくらいだから。でも本当に売れたのは映画化された方だ。世界的な大ヒット作品であり、二回も映画化されたほどである。

ただし二度目の映画化は原作に忠実ながらイマイチだったと思う。でもA・シュワルツェネッガーが主演した一作目は間違いなく傑作だった。映画館での興行成績も素晴らしいが、ヴィデオの販売数、TVでの再放送数も立派なものだ。

それでも原作とは違う。でも面白かった。それが気に食わない。エンターテインメントとしては映画化された第一作のほうが優れている。特撮技術も今となっては稚拙なものだが、当時は衝撃の映像として話題になった。

もっとも私とて原作を読んだのは高校生の時であり、気に食わないと感じる根本的な原因が自分でもよく分かっていなかった。多分古本屋で安く買った本であることは覚えていたが、どんな本だか思い出せなかった。

そこで改めて調べてみたら早川書房のベストセレクションのなかの短編だった。記憶に強く残っていたので、まさか短編だとは思わなかった。そして四十数年ぶりに再読してみて、私が何を気に入らないのかが分かった。

主人公の設定が違いすぎる。

原作では会計士の男性が主人公なのだが、この作品の映画化に熱心だったA・シュワルツェネッガーが自分に合わせて肉体労働者にしてしまったのだ。そのためアクションシーンが映画では楽しめるが、原作の記憶の改変の部分がぼやけてしまった。

ちなみにリメイクされた二作目は、原作の設定に忠実なのだが、一作目と比較されるとどうしても地味になってしまう。だから映画評としては凡作とされている。原作の雰囲気を大事にしているのは、間違いなくリメイク版なのですがね。

しかし、圧倒的に売れたのは1作目なのです。こうなると、原作を文字通り力業でSFアクションに変えてしまったシュワルツェネッガーが正しかったのか。私としては、いささか悩ましいですね。まぁ機会があったら原作も読んで欲しいと思います。


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