ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

鯖味噌

2024-09-10 09:22:07 | グルメ

この店、いつまで楽しめるだろうか。それが心配だ。

神田の街に越してきて一年以上経つと、だいぶ勝手が分かってくる。仕事については、別段問題はない。やはり最大の問題は昼飯をどうするかであろう。

30年以上銀座の街で仕事をしてきた私からすると、正直多少の不満はある。例えばお昼の定番である「刺身定食」である。はっきり言ってメインの刺身そのものには、銀座であろうと神田であろうとほとんど差はない。いや、店にもよるが、何軒かの割烹料亭は銀座と変わらぬクオリティだと思っている。

しかし明確に差が出るのが副菜というか、小鉢である。あくまで今のところだが、これは銀座の圧勝だと言わざるを得ない。想像だけど、これは店の質とか、料理人の技量ではなく、舌の肥えた銀座の客層に鍛えられたが故の差だと思う。銀座雀は足が速い。味が落ちたと思ったら、すぐにその店から消える。

小鉢と云えども手抜きは許さないのが銀座雀だ。小鉢のデザインもそうだが、中身の総菜も一手間加えた逸品が当たり前のように供される。名店とは腕の良い料理人だけでなく、舌の肥えた客によって育てられるものだと思う。

もっとも私はさほどグルメではない。元々は空腹が満たせて栄養のバランスが良ければそれで良しである。だから店で出される料理に文句をつけたことはない。不満ならば次から行かないだけである。

ただしメインの料理は美味しくあって欲しい気持ちはある。なので神田に越してきて以来、満足のいく店を数十店探し回っている。そのなかで割と気に入っているのが神田美土代町にある定食屋うお幸。

初めて見かけた時の印象は外見がボロいの一言。ただ人気はあるようで、数人が並んでいた。が、店頭の立て看板には既に今日の定食は売り切れと出ている。まだ12時15分くらいだぞ。並ぶのは嫌いなので通り過ぎようと思ったら、食べ終えた客が数人出てきた。これなら入れると思い、行列の最後に並ぶとすぐに入店できた。

店はL字型のカウンターのみ。70過ぎは確実な料理人と、その息子さん(?)らしき中年男性の二人だけで店を回しているようだ。カウンターに座った私に「もうマグロのブツ切りと鯖味噌しかないよ」とぶっきらぼうに伝えてきた。

その時は店の売りがマグロだと知らなかったので、鯖味噌をお願いした。数分で出された鯖味噌は望外に美味しかった。臭みはなく、柔らかい肉質は料理人の腕の良さが良く分かる。まぁ小鉢はそこそこだが、これだけの鯖味噌、銀座でもそうそうないぞ。隣の客のマグロのブチ切り定食も美味しそうだ。

翌週は少し早く行って看板メニューのマグロの刺身定食を頂く。これもなかなかだ。多分、市場で見繕って選んで仕入れているように思う。筋切りもしっかり入れているし、角の立った刺身は見た目も美しい。ちなみにメニューは5種類くらいしかない。そして12時半過ぎには売り切れる。

客筋は中高年の男性が多いが、若い男性も散見する。決してお洒落な店ではないが、女性客もよく見かける。明らかに魚の美味さを目的に入店していると思う。

ちなみにこの店の前の通りは、この近辺のサラリーマンやOLがお弁当を買いに来る名所である。500円前後で弁当が売られている激戦区である。その倍の値段の定食ではあるが、確実に売り切れるところをみると、根強いファンがいるのだと分かる。

ただ唯一の心配は高齢の料理人の爺さんだ。まだシャキッとしているが、人の寿命は儚いものだと分かっている。しばらくは、この店を中心に昼飯を楽しもうと思っています。

コメント (2)
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