偏見かもしれないが、弱い奴って案外しぶといと思う。
私は苛めっ子ではないが、それでも情けない奴を見ると、ちょっかい出したくなる。
もっと胸を張れ、顎を引いて前を見ろ。拳を握りしめ、肘を曲げて腹の少し上で構えてみろ。利き足を後ろに下げ、膝を軽く曲げて半身の姿勢で立ってみろ。
目を逸らすな。相手の目線が浮「なら、鼻の下あたりを睨み付けろ。軽く息を整えて、腹の下に力を込めて、軽く体をふってみろ。
パンチだと?十年早い。お前のパンチなんざ痛くねえし、効かねえよ。そうじゃない、相手のパンチを払うために構えるんだ。そう、横に、あるいは斜め下から払う感じだ。
そして相手が近づいてきたら、腰をかがめてドテッ腹に向かって頭突きをぶちかませ。相手が腹を押さえたら、耳をつかんで脳天に向けて頭突きをもう一発かませ。これが効かない奴はいないぞ。
そうやって、散々煽っておいて、無理やり公園に連れて行って知人に喧嘩を買わせる。それを見ながら、煽ったり、応援したりする。まァ大概、負けるな。それもボロボロになって負ける。
親切な私は、ちゃんと赤チンや絆創膏を用意しておいて、優しく介抱してやったもんだ。よく頑張ったな、これでお前も男だと褒めてやると、鼻血と涙でくしゃくしゃの顔で頷いている。可愛いもんである
こうやって、へたれの根性なしを半人前の野郎に仕立て上げる。十代前半の頃、数人のクラスメイトをそうやって鍛え上げたもんだ。
正直に白状すると、これは私自身が、10歳前後に転校先でやられたことを自分なりにアレンジしただけである。私は気が短い子供であった上に、せっかちでお節介でもあったから、情けない男(正確には男の子だわな)を見ると、ついつい黙っていられなくなる。
こんなことって、男なら誰でも一度は経験あるのではないか。実際、この経験で大化けして、えらい喧嘩が強くなって、私なんぞ格下扱いにするようになった強者も実際にいた。あれには驚いたけど、内心ちょっと嬉しかった。
でも、大半の奴は、やっぱり情けなくって弱々しいままなのも事実。でも弱いからって、脆い訳ではない。むしろ、しぶといというか、ふてぶてしいというか、得体の知れぬ奇妙なしぶとさを持っているように思う。
多分、表題の漫画の著者がそんなタイプだと思う。弱いようで、妙にしぶとい。情けないことは情けないのだが、不思議と粘り強く、いつのまにやらそれなりに生活している。
人間、腕っぷしだけではないのだなァと妙に感心したものである。ただし、好きではない。好きな生き方ではない。だから、身近にいると、ついついお節介をしたくなる。多分、嫌がられていると思う。
まっ、それも人生さ。
人を平気で裏切るのは嫌でも、人前で嘘泣き涙は平気で流してみそる…ぐらいでなきゃ、大した力も無いのに、大きく見せたがる奴ばかりの土人の群の中で弱者は生き延びませんよ!
プラトーンで映画の中で、ベトコンの攻撃の際、蛸壺て死体のふりをして生き残る兵士がありめしたが
ああいうのも大事てないすかね?