劇的な日本の優勝で幕を閉じた今回のアジア杯だが、予想外だったのが西アジア勢の敗退だった。
昨年のワールドカップのアジア枠は全て東アジア勢であった。日本、韓国、北朝鮮そしてオーストラリア。4、5枠の残り0,5は、バーレーンが中米の国に敗れたため、結果的にイスラムの中東諸国が参加できないワールドカップとなっていた。
そのことに危機感を抱いた中東勢は、国を挙げて強化策に取り組み、今回のアジア杯は地元開催の強みを活かして優勝を狙っていたはずなのだ。
ところが蓋を開けると、サウジ、イラク、シリア、バーレーン、カタールはいずれも予選敗退となり、かろうじて進出したイランとレバノンも敢え無く決勝トーナメントで早々に敗退。
確認しておくが、今回は中東のカタールの地で開催された大会である。あまりの惨状に、イスラム系のメディアからは、直前に行われたガルフ杯に全力を傾倒した結果、強豪国が疲弊したことが敗退の原因だと報じている始末。
まったく影響がないとは言わないが、日頃集まることが少ない代表チームをまとめるには、ガルフ杯で試合を重ねることは、むしろ有益なはずだ。それなのに、その成果が出ているとは言いがたい。
いや、今回日本が苦戦したレバノンやカタールは、チームとしてまとまっており、ガルフ杯に出場した成果であろうことは、容易に想像がつく。
では、サウジ、UAE、クウェート、イラク(前アジア杯の覇者だぞ)は、いったいどうしたのだ?オイル・マネーに物を言わせてサッカーの強化に努めてきたはずだぞ。
そのことを事前に知っていたため、私は今回のアジア杯を楽しみにしていた。南ア大会に出場できなかった屈辱を、どう晴らすのか。いかにチームを強化しているのか、私は興味津々だったのだ。
しかし、その期待は大きく裏切られた。代表選手23人のうち15人が帰化選手であるカタールは身体能力に頼りがちのチームだし、あれほど気の抜けたサウジは参考にすらならない。
唯一レバノンだけが、チームとしてのまとまり、戦術、ファイティングスピリットがまともだった。ダイジェストでしか観てないが、イラク、シリア、イランも期待したほどではなかった。
これは私の憶測に過ぎないが、もしかしたら豊富なオイル・マネーがサッカーを弱くしているのかもしれない。現在、カタールをはじめとして幾つかのプロリーグが中東にはあり、そこで海外から有名選手(ジタンやリバウドら)を招聘して活発に試合が行われている。
そのプロリーグで上位を占めるチームの実力は本物で、ACLの上位常連であり、Jリーグのチームも苦杯を舐めている。しかし、その実力は外国人選手を中心としたものであり、自国の選手のレベルアップはまだまだ発展途上であるようだ。
日本だって似たようなものだが、それでも地道に選手を育成してきた成果が出てきている。この大会で大活躍した香川のように20才前後で既に世界に通用する実力を備えた若者が育っている。
残念ながら中東は、そこまで育成が上手くいっていないようだ。安易に外国人選手に頼りすぎた弊害だといえる。まあ、さすがにイランは若手が育っているようだが、サウジはなんなんだ?多分、監督をコロコロ変えるせいで、強化方針が一貫していないのだろう。ここは王族が口出し過ぎだね。
今回、初の国際大会となったザッケローニ監督の率いる日本代表は、まずます合格点。だが、この先に待ち構えるワールドカップ予選では、再び苦戦の連続だろう。
今回の結果に油断することなく、海外の強豪国との対戦をアウェイで行い、長い目でもって強化に励んで欲しい。今年は久々にコパ・アメリカの大会に招待されている。この大会で上位に入れたのなら、本当に凄いと思う。
球際の激しさ、プレーの狡猾さでは、南米諸国のサッカーがはるかに上だ。おそらく惨敗するだろうが、ここで厳しい経験を積んで欲しい。
先日、親善試合で勝てたアルゼンチンが、コパ・アメリカでは本気で牙を剥いてくるはず。かつてオーストラリアは、本気のアルゼンチンに首都ブエノスアイレスの試合で勝ったことがある。
コパ・アメリカでアルゼンチンに勝てたら、本当に凄いぞ。そんな期待を抱かせた今回のアジア杯でした。
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