ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

100円自動販売機

2017-11-16 12:53:00 | 経済・金融・税制

政府が景気を判断する資料は、必ず統計値を元に作成される。

統計値を用いるのは、特異な数値や個人の恣意的な判断を排する意味で有益だと思う。だが、統計値では平準化され、小さな差異は無視されてしまう弊害もある。

今年中盤の景気の特徴は、なによりも株式市場の上昇基調にある。不動産市場だって、ここ数年は活発であったことは間違いない。民主党政権の時とは大違いである。

しかしながら、敢えて指摘させてもらうと、個人消費の冷え込みはむしろ悪化しているかもしれない。

私は基本、事務職であるが、外回りが好き。顧客の元を訪問するときは、極力歩き回るようにしている。街の景気は、やはり自分の眼で見なくてはいけないと思っている。

10年前に比べて駅前商店街がシャッター通り化は進む一方だ。これは後継者難が最大の理由だ。しかし、新しく開業した飲食店が、5年持たずして閉店に追いやられるのは、やはり個人消費が冷え込んでいる証拠だ。

ここ数年、値下げした自動販売機が徐々に増えていることにお気づきだろうか。

沖縄発祥だと聞くが、オレンジ色の派手な自動販売機の設置台数が増えている。この自販機に置かれている缶ジュースは、どれも100円であり、なかには50円で売られているものもある。

実は缶ジュースは、けっこうな売れ残りがあり、小規模な小売店などは現金が欲しいので、バッタ屋などに横流ししてる。それを買い付けて、自動販売機の目玉として売っているのだが、当初は設置場所がなくて苦労したと聞く。

しかし、ここ最近の消費不況のせいで、安い自販機に対する需要が増え、その結果として100円自販機が飛躍的に増えている。元々正規のルートで仕入れている自販機でさえ、最近は値引き販売しているものが増加している。

おそらくだが、霞が関で快適なオフィスで経済政策を考える高級官僚さんたちは、このような下々の実情は知らないのだと思う。たしかに株価は史上まれにみる高騰ぶりだし、多くのタワーマンションが売れたのも事実だ。

しかし、個人の所得は伸びていない。だからこそ、安いものが売れている。130円で売られていた自販機の缶ジュースでさえ、今や値引き販売を強いられているのが、今の日本経済の一面でもある。

政治家やエリート官僚たちは、黒塗りのハイヤーの後席でふんぞり返っていないで、自分の脚で街を見て回るべきだ。街には統計数値に埋もれてしまった日本経済の惨めな部分が露呈している。

別に統計数値が間違っていると言っているのではない。あれはあれで有益な情報だ。しかし、平準化され、平均化された統計数値では、全ての経済事象は表現できない。

自分の足で歩きまわり、自分の眼で見て、街の景気を体感することを忘れないで欲しいものです。かつて政治家たちは、ドブ板選挙と揶揄されながらも、自分の脚で街を回り、肌で世情を味わっていたものです。

だから、政治家の靴はいつも汚れて、掏り切れていた。その点、今の政治家はお洒落です。綺麗なスーツに磨かれた革靴で、さっそうとしています。世情に疎くなったのも当然かもしれません。


コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 臨場 横山秀夫 | トップ | IT それが見えたら、お終い »

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (青蛙堂)
2017-11-16 19:27:57
ヌマンタさんの仰る通りですよ!!
この2週間ほどデジカメ持って多摩と神奈川・埼玉県境の、里山の紅葉を撮るバイトしてます。ブロガーに写真を売る奴が知人にいて頼まれた。採用された分だけ電子マネーで支払われる。まぁ収入目当てではありませんけど。
それで鉄道が通らない地域に里山は密集してるので自転車やバイクで回ります。すると……大きな街道沿いは130円自販機ですが、市民が使う裏道沿いは激安自販機が沢山ある。
だいたいの里山自然は、バブル崩壊で開発が中断して、都心への回帰で宅地造成などムリになった郊外に集中してます。交通の便も悪い。
バイトやパートの料金もタウンワーク観ると低い地域です。そこの裏道に激安自販機が並んでいるのって、ヌマンタさんの仰る事を裏書きしてませんかね?

返信する
Unknown (青蛙堂)
2017-11-16 20:05:53
追記。廻った地域には畑に風力発電の橋良を沢山に見ました。あと荒れ地に太陽発電パネル。
農作業していた地主の御隠居に噺を伺う機会がありました。すると…コンビニ経営しても赤字だと。で、無人化した物が流行りと。
で、発電すが、ケーブルが高価で盗まれるらしいんですね。だから人家と里山がパッチワークの地域に設置して(人の目)、さらに埋設できる畑にケーブルを引くのだと。風力発電なんか中古の電信柱(←売ってるらしいです)とか使えば安上がりだよと。地主ですら大変なのですね。
返信する
Unknown (青蛙堂)
2017-11-16 22:49:54
すみません追記2)
御隠居いわく。太陽光パネルだと月額25万円くらいにはなるそうです。果樹畑を潰しても安定しているとの事です。初期投資は教えてくれませんでしたが。コンビニやコインランドリーは初期投資しても田舎でも次々と後発組が出てくるし、コンテナボックスは一般の会社員も参加して来ると。
なので電力が安定投資なのだと申してました。
経済のプロであるヌマンタさんから観れば、また違うと思うのですが……。
返信する
Unknown (ヌマンタ)
2017-11-17 12:40:18
青蛙堂さん、こんにちは。自動販売機は定価販売が常識でした。大手流通企業がほぼ独占しており、値引き販売はやりたくても出来ませんでした。件の沖縄の企業も、当初は自販機を設置してもらうことが出来ず、止む無く裏通りなどに置かせてもらっていたそうです。
しかし、消費不況が長引き、安ければイイという消費者と、売れない在庫より、現金がイイという小売店のニーズが合致して、大量の缶ジュースの裏市場が出来たことが、100円自販機の背景にあります。
今は裏通り中心ですけど、いずれ表に出てくるようになると思います。
返信する
Unknown (ヌマンタ)
2017-11-17 12:45:08
太陽光発電ですが、私はかなり否定的です。初期投資を短期間で回収することは難しい。それでも大量の太陽光パネルが売られたのは、行政からの補助金があったからです。
ドイツで既に問題になっているように、いずれ電力会社は電気の買い取り価格を引き下げてくるでしょう。もともと、現状の太陽光発電はそれほどエネルギー効率のいいものではありません。量子グリッドが実現すれば、大幅な効率アップが望めますが、現行のものは電力会社の政策的な上げ底価格で買い取られているからこそ、なのです。これも、いずれ行政の補助が打ち切られれば、尻つぼみになる可能性が大きいです。
ただ、原油価格が急上昇すれば、太陽光発電にもメリットが出るでしょう。でも現時点では、天然ガスや液化石炭に遠く及ばないのが実情だと思います。
返信する

コメントを投稿

経済・金融・税制」カテゴリの最新記事