ヌマンタの書斎

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尖閣問題のこの先

2012-10-23 07:50:00 | 社会・政治・一般

正直言って、私は民主党政権にはウンザリしている。

でも、評価すべきところは素直に評価したい。もうお忘れの方もあろうかと思うが、菅内閣の時にも尖閣諸島は問題になった。時の仙谷官房長官は、真面目くさった顔(この顔しか知らないがね)で、「事態を遺憾に思う」とコメントしただけ。

ただ、それだけであった。これでは舐められるのも当然である。当然、中国政府は思ったはずだ、今回も日本政府関係者に強硬に出れば、尖閣諸島の土地の購入を控えるはずだと。

ところが野田首相は、まるで従来の信頼を裏切るかのような態度に出た。当然に北京政府は怒り心頭である。だからこそ、反日デモが反日暴動といっていいほどの騒ぎになることを容認した。

ところが、野田首相はあくまで尖閣は日本の領土だと嘯き、再び北京政府の面子を潰した。北京政府からすれば、反日暴動(デモでは甘いと思う)は必然であり、すべての責任は、日本政府にありだと断じるのも当然だろう。それが国家というものだ。

ただし、それはあくまで北京政府の立場にたってのもの。

思い出して欲しいのは、北京政府の領土領海拡張志向は、昨日今日の問題ではなく、半世紀以上前の建国時から継続して行われていることだ。チベットやヴェトナムだけではない。中華帝国の領土周辺は国境争いがないところの方が珍しいぐらいだ。

シベリアにはシナ人の労働者がなだれこみ、ロシア人を戦々恐々とさせている。朝鮮半島北部には、既にシナ人資本の企業が入り込んでカジノを運営しているが、本命は鉱物資源であり、事実上の既得権づくりだ。

シナと国境を接するラオスやミャンマーの経済支配権を牛耳るのは華僑であり、自国の繁栄につながらぬシナの経済支援に辟易しているこれらの東南アジア諸国が欧米や日本に流し目を送るのも当然である。

悪名高き南沙群島などの海洋利権の確保は、ヴェトナム、フィリピン、インドネシアとの緊張を生み出し、更に日本との今回の尖閣諸島問題である。東南アジア各国が、日本の強硬な姿勢を頼もしく思っていたことを報じていないのが、日本のマスコミ様の気配りなのかどうか知らない。でも侵略行為を推し進められている東南アジア各国にとって、非常に関心が高い問題であったのは事実だ。

如何にシナが詭弁を弄しようと、喧嘩を売っているのは誰なのか明白であろう。

今頃になって、民主党の「言うだけ番長」こと前原が、尖閣問題の発端は石原・都知事の購入表明から始まったなどと責任転嫁しているが、元を糺せば中華帝国の侵略方針こそが真の原因だ。そして菅内閣時の仙谷官房長官の甘い対応が、北京政府を増長させたことが原因なのだ。

だから左派的傾向の薄い野田首相が、一国の最高責任者としての当然の対応をしたことに、日本を甘く見ていた北京政府が苛立っているだけだ。人民解放軍の首脳たちも初めは勇ましいことを言っていたが、アメリカと日本が奪還作戦の共同訓練などを実施して以降、急速に沈黙を守るようになった。

彼らも、まだ軍事的対決は避けるべきだと分かっているのだ。

なお、経済視点しか持ち得ない経団連は仕方ないが、このような領土問題を巡る争いに、経済交流だとか、文化交流はなんの力も持ち得ない。無意味とは云わないが、役に立たない歴史的事実ぐらいは、しっかりと認識して欲しいものだ。

いずれにせよ、尖閣問題は先送りされ、再び日中の関係は元のさやにもどる。戻らざる得ない。停滞させたって、双方に利得がないし、進展も望めないからだ。感情的しこりは残るが、利益を我慢するにも限度があるからだ。

もっとも平和という観点かれば、むしろ事態は悪化している。中華帝国は対アメリカ軍事力の必要性を痛感しているはずだし、今まで以上に海軍力及び弾道ミサイルの開発に血眼になるだろう。

また新聞やTVは伝えることを避けているが、日本人にも現状の平和憲法が役に立たないことや、軍事力の重要性を理解しつつある傾向が確実に広まっているように思える。

大切なものを守るためには、軍事力もその手段の一つ。ただ、それだけの事なのだが、戦後の平和教育はその現実を教える事を避けてきた。これまで教育界、マスコミ業界で深く根を張り、自虐的歴史認識を推し進めてきた人たちにとって、敬愛すべき中華帝国の軍事的、強圧的姿勢こそが、その避けてきた現実を広く日本国民に再認識させる契機となっているのだから、実に皮肉なことだと思う。

ただし、シナの軍事的圧力に抗するための軍事力を再認識するのは良いが、それだけでは不安だ。軍事力というものは、きわめて破壊的で、一度動き出すと止めるのが難しい。また使用後の副作用も大きく、如何に軍事力を抑制するかが大切になる。それなのに、有事法制さえ十分立法化できていない。平時の法制度で有事に対応できると思い込んでいる。

第二次世界大戦の反省を謝ればいいだろうと誤魔化してきた日本人は、本当の意味で敗戦の反省をしているとは言い難い。戦前、なぜに軍部は独走し、国民はそれを支持してしまい、政治はコントロールを失ったのか。ここを深く考えてこそ、本当の反省だと思うのだが、歴史学者にさえこれを厭う傾向は強い。

更に付け加えるなら、景気の低迷は国民に不安と不満をため込ませる。そのはけ口として、戦争は使われることが多い。困ったことに、隣国の韓国も、そしてシナさえも不況の風は確実に吹いている。日本も、景気対策に関心が薄い民主党政権ゆえに、夏以降本格的な不況に陥りつつある。

悪い意味で、尖閣問題は戦後の日本のターニング・ポイントになりかねないと思う。

繰り返すが、野田首相の対応はごく普通のものであり、好戦的でもなければ、異常でもない。それなのに、中華帝国は異常なほど反発した。友愛の海は論外にしても、「事態を遺憾に思う」と口先だけで誤魔化してきた民主党政権の罪は、誠に大きいと思わざる得ない。

コメント (5)
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