ヌマンタの書斎

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土地の評価方法 その一

2011-08-11 12:09:00 | 経済・金融・税制
毎年、8月はお勉強月間。

そんな訳で、いささか面唐ネ話が数日続きます。読み飛ばしていただいても結構ですが、しばしお付き合い下さい。

もう十数年前のことです。まだ私はこの業界に入って2年程度のペーペー。相続税の仕事は、佐藤所長の担当で、私は補佐に過ぎませんでした。

その時にやったのが、某繁華街のそばにある閑静なお家の評価でした。大きな国道沿いで、立派な邸宅の脇にある小道を入ると、その小道は両側は見事な盆栽が置かれている。

その小道を8メートルばかり進むと、古い平屋建ての日本家屋があった。ずっと一人暮らしであったそうで、狭い家ではあったが、丁寧に住まわれていたことが伺えるものであった。

建物は築40年を超えるもので、評価額はほとんど付かない。問題は土地であった。国道から続く通路も含めると60平米を超える面積がある。

ただ、地型が悪い。8メートルの通路部分は、幅2メートルに満たないため、車さえ置けない。奥の敷地も歪んだ台形状で、三角形となる無駄な部分が多い。これでは上手く家を建てられない。

亡くなられた方は、その無駄な部分を庭として、趣味の盆栽造りに活かしていたようだが、一見して売るのは難しい土地だと分った。

いざ、評価してみると、驚いたことに評価額は6千万を超えた。当時はまだバブルの名残で、都心の一等地の路線価は、高止まりしていた上に、評価上の問題があったからだ。

相続税の評価では、路線価に地積を乗じて計算する。これが正方形や長方形といった規則正しい形の土地なら、別に問題は無い。ただし、入り口が狭くて奥に広いなどの諸条件がある場合、一定の要件の下で、評価を減額することが認められる。

問題は、その評価の減額が最大でも3割であることだ。これは不動産の世界の実態とは、大きくかけ離れている。このような、建築に不向きな土地の時価は、せいぜい半値になれば御の字なのが実情だ。

実際、この土地はすぐに売りに出されたが、相続税評価額の半値でも売れなかった。どの不動産業者も渋り、1千万円台の提示が続いた。

最終的には、表の邸宅の方が買い取ったようだが、2千万を少し超える程度の価格に留まった。これは時価の下落を考慮しても安すぎると相続人が憤るのも無理はない。

だが、これはむしろ、相続税評価額が高すぎるのだ。路線価が高いのではなく、評価の減額の仕方が低すぎる。最大3割の減額しか認めていないことにこそ問題がある。

今だから言えるが、あの土地の評価は6千万の半値程度が望ましかった。そうすれば、その後のバブル崩壊による時価の下落を考慮すると、売却価格2千万は妥当だといえた。

やはり、相続税における財産評価通達に沿った評価方法がおかしいと思う。

今回は、戦後の日本の土地の公的な評価について書き記してみたいと思います。
コメント
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