稲光が好きだ。
暗い夜空を切り裂くように稲光が空を走り、その数秒後に雷鳴が轟くと、ワクワクしてしまう。窓から覗くと、激しい雨が叩きつけるように降っているのが、暗闇に響く音で分る。
目の前でスペクタル映画が演じられているかのような興奮に囚われる。暗い夜の風景に、目が釘付けとなり、いささか寝不足気味で朝を迎える。
翌朝、玄関を開けて外に出ると、路上には落ち葉が舞い散り、折れた木の枝が散乱している。目に見えぬ巨人が暴れた跡のような街を歩くと、きっと昨夜はなにか事件があったに違いないと確信してしまう。
表題の作品の著者であるクーンツも、きっと闇夜の稲光に目を奪われた一人だと思う。ベッドに入りながら、稲光(ライトニング)が引き起こしたかもしれない怪奇現象に想像を逞しくしたことだろう。
だからこそ、こんな作品が書かれた。主人公であるヒロインが危機に陥った時、稲光とともに現われる守護天使と名乗る男性が必ず助けに来てくれる。
ヒロインに襲い掛かる殺し屋から守ってくれる謎の男性。稲光との関係は?なぜにヒロインを守ろうとするのか?
徐々に明かされる驚愕の真相は、読者の期待を大いに裏切ること間違いなし。クーンツという作家の間口の広さを思い知らされた作品だと思う。機会がありましたら是非どうぞ。