ヌマンタの書斎

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新春講演 竹中平蔵

2009-01-22 17:17:25 | 社会・政治・一般
先週末、私の所属する税理士会支部の60周年記念講演のゲストに呼ばれたのが、小泉政権における構造改革の旗手であった竹中平蔵氏だった。

構造改革に批判的な意見は随分と聞いたが、このあたりで改めてその批判の矢面に立たされた人の話を聞くのも有益と思い、忙しい最中時間をやりくりして講演会に参加した。

やはり行っただけの価値はあったと思った。いくつか印象深い話、面白い話もあるのだが、自分なりに検証を済ませていないので、いずれまた改めて書き記したいと思います。

ただ、私の日頃の考えと一致する話もあったので、その点だけは書いておきたい。

平成21年現在、日本が不況の最中にあることは間違いないが、この不況の始まりは昨年ではなく、その前年すなわち平成19年だと、私は考えています。

すなわち姉歯建築士による不正構造計算事件を受けて、霞ヶ関の官僚たちは建築の確認申請の手続きを強化して、不正の再発防止に着手しました。その意図は善しですが、問題はその実施。

かなり厳密な資料を求められるように改正したのはともかく、その資料を検査する人員の体制が出来てないまま、この構造計算の検査体制の改正は強行されてしまった。それゆえ、建築確認申請は大渋滞を引き起こし、いくら待てども許可が下りない。

おかげで、マンション、テナントビルなどの仕事の受注はいくらでもあったのに、構造計算の確認に役所側が手間取り、実際の建築作業に入れない。

日本のGDPの10%を占める建築の世界での、仕事の遅れはじわじわと業界を痛めつけ、遂には資金繰りに詰まった企業を倒産に追いやった。私はこれを「官製不況」と呼んでいます。

竹中平蔵氏もやはり同じ見解であるようで、行き過ぎた規制が、市場を歪めたと声高に批難していました。

因みに、この官製不況で責任を取った霞ヶ関の官僚は誰一人いません。はっきり言いますが、TVや新聞はあまりに怠惰です。実のところ、この官製不況については、幾つもの番組などで報道もされているし、現場を取材した記事も掲載されていました。

ですが、その場限りの報道が多く、不思議なくらい霞ヶ関の怠惰に踏み込んだ報道は少なかった。どちらかといえば、不正構造計算による欠陥マンションを買わされた消費者の側に力を入れた報道が多く、そのせいか不正構造計算の防止という良き建前の改正を批難する方向には行き難かった印象があります。

おかげで、倒産を引き起こすほどの失策をやらかした官僚たちは、その経歴に傷ひとつなく出世を重ねていくでしょう。つまり、失策はないとみなされ、反省する必要もない。つまるところ、同じ過ちは今後も繰り返すことになるでしょう。

この手の行政手続き上の失政は、一般消費者には縁遠い話であり、マスコミが力を入れて批難しない限り、決して行政には反映されないものなのです。問題視する政治家もいますが、マスコミの報道と世論の支持がないと、肝心の官僚側が耳を傾けません。

繰り返しますが、現在の不況の要因の一つは、この官製不況でした。この建築業界の不況と倒産のダメージが、昨年の不動産市況の悪化につながっているのです。

霞ヶ関のお偉いサンたちは、不況を望んで法改正をしたわけではありません。ただ、そのやり口が稚拙であっただけです。この点をなおざりにしておけば、また同じ過ちを繰り返すであろうことは断言していいと思います。
コメント
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