ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

十角館の殺人 綾辻行人

2009-01-13 07:12:20 | 
子供の頃から推理小説が大好きだった私だが、十代後半ぐらいから全く読まなくなっていた。

特に理由がある訳ではない。当時はSFや伝奇などに夢中であっただけで、気がついたらミステリーを読まなくなっていただけだった。事実、スパイ小説や、冒険小説などミステリーの香りの強いものは、よく読んでいた。ただ、本格的な推理小説には魅力を感じなくなっていたのも事実だ。

そんな私を推理小説の世界に呼び戻したのが表題の作品だ。たしか20代後半の頃だったと思う。当時は税理士試験の受験生であったので、読書は控え気味にしていた。しかし、綾辻行人の密室トリックの面白さは、その私の決意を揺るがすほどの面白さを秘めていた。

科目別に受験できる税理士試験を3年連続で科目合格していた私だが、4年目は不合格だった。この頃から病状が改善して、将来の社会復帰に向けて希望がもてるようになった。それゆえ、今まで我慢していたコンサートや美術館巡り、映画鑑賞などを余暇に楽しみだしたことが、結果的に不合格につながったと私は考えた。

当然、綾辻氏の密室ミステリー・シリーズもその一因であったことは間違いない。だから、読むのを中断してしまった。何かを得るためには、何かを犠牲にしなければならぬと頑なに考えるのが、私の長所であり欠点でもある。極端すぎるのだよね、私は。

まあ、翌年には残り全ての科目を合格して、晴れて官報合格となり、長かった税理士試験を終えた。好きなものを我慢した甲斐があったというものだろう。

ところが、病み上がりから働き出したので、余暇はひたすら寝るだけになってしまった。やはり長きにわたった療養生活は、相当に体力を奪ったようだった。

そんな訳で、私が再び綾辻氏の本に手を伸ばすのは、40をすぎてからになってしまった。つまり、未読の本がたっぷりあるってこと。嬉しいやら、悩ましいやら、微妙なところだ。

私の場合、表題の作を基準に綾辻氏の作品を評価してしまうので、作品によっては辛い評価となってしまう。密室ミステリーへのこだわりは、もはや求道の域に達しつつある綾辻先生だけに、たまにトリックのための筋書きが透けてみえるのが辛いが、今後も十分期待できる名人でもある。

嗚呼、本を読む時間が欲しい。いくらあっても足らないゾ。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする