ボクの奥さん

ボクの奥さんは、甲斐よしひろさんの大ファン。そんな彼女との生活をお話したいと思います。

筒美京平さんと甲斐さん3

2020-10-30 18:05:00 | 日記
甲斐さんは「メロディー(を作ること)はパズル的な要素がある
最初のとっかかりだけフワッとつかめれば、あとはパズルみたいにはめていける
その意味では理工系的な頭なんです」と話されてましたが

高校時代から筒美さんをご存知の作詞家・橋本淳さんによると…
筒美さんは、時代に合う和音の流れを見つけ、その配列を色んな曲に多用されているそうで
「和音は数列の組合せのようなもの
筒美さんのスゴさは、数学的な構造力、配置力にある」とおっしゃっていて

筒美さんの特徴とされている、洋楽の要素を歌謡曲に取り入れ、日本風に昇華させる手法は
ご自身が影響を受けられたという、バート・バカラックやポール・マッカートニーを始め
海外でヒットしている曲を構成するコード(和音)進行を分析なさって編み出されたものらしい

「ポップミュージックを作るには、街とかメディアにアンテナを張って
自分の音楽と人の音楽が戦ってるみたいな緊張感を持っていないとダメ」とおっしゃる筒美さんと

「時代をいつもチャンと見極めていることが、歌を歌う奴の務めだと思う
だから、映画も観るし、当たり前なんだけどCDも買う
でもそれって、ガキの頃からずっとレコード聴いて、集め出して…と何も変わらない」という甲斐さん

その時代に則した曲を書こうとなさる姿勢には共通するところがあるものの
筒美さんは、ご自身が会心の出来と思われた作品でも
レコーディングの際に、急きょ歌詞が変更になったり、歌手の方が歌いこなせなかったり
…といった突発的な事態が起こると、迷うことなく作り直されたそうで

それは「シンガーファースト」という主義に基づかれたものというか
作品を手直しすることも仕事の一環だとする「職業作曲家」としての矜持というか
もちろん、ご自身の作品に自信もプライドもおありだったでしょうけど
それよりも「ヒット曲を生み出す」ことを一番に考えていらしたんじゃないかと…?

一方、甲斐さんは…博多の夜の歓楽街で垣間見たキャバレーやスナックのドアから漏れる光…
「明るい闇」を原点に、ジャズもポップスも歌謡曲も…という、あらゆる音楽が流れる環境で
ディープ・パープルやキンクス、ザ・ピーナッツや日活の映画音楽などを好んだ少年が
その後、ボブ・ディランやビートルズ、ストーンズらに衝撃を受け

「洋楽で泣けるのは、切なくなるのは、そのビートとかアンサンブルじゃないですか
だけど、歌謡曲で泣けるのは、日本語の歌詞で泣けるんですよね」と
やがて「日本人の言葉と洋楽のサウンドをミックスしたい」と考えるようになり

「好きで好きでしょうがない人っていうのは、どこまでも行く訳ですよ
だって、自分の嗅覚が捉えたものだから、勘が働くものは行かざるを得ない
無駄なことの方が多いけど、その無駄が生きて来る…膨大な無駄が生きて来るんですよ
僕もどんどん自分の中に取り込んで来た訳じゃないですか、無駄も含めて…
そうすると結局、自分が良い表現をやって行きたいっていうのしか残らな」くて

その結果、自分の琴線に触れた映画や音楽、スポーツ、ニュースなど
ありとあらゆるものから刺激を受けて出来た曲には
ムード歌謡っぽい要素(笑)やGSの名残が、そこはかとなく漂ったり
夏休みを過ごされた田舎での青い空や真夜中の汽笛を彷彿させるメロディがあったり…
それには、意識的に使われたフレーズもあれば
どうにも抗い難いほど、お好きなメロディや
自然と湧き上がるリズムもおありなんだと思われますが

亀和田武さんは、あらゆる現代音楽のルーツについて…
「誰が何の影響を受け、何をベースにして自分の音楽を作り上げて来たか
つまり、いったい何がオリジナルなのか
何がその人のルーツなのか、非常に見えにくくなってしまった

例えば、ある特定の人の音楽の原点はここにあると分析してみても
その人は原点となるべき音楽を知らなかったり
ということは、その時点で、既にルーツ探しは無意味になっていて
たとえ探し当ててみたところで、それは枝葉末節な分析でしかないし
逆に、ありとあらゆるものが今や影響を与え得るんだってことの証明になる

…にも関わらず、あるいはそれ故にと言うべきか、邦楽のヒット曲が生み出されるたびに
音楽業界関係者やマニアから得意気に発せられるパクリ談義の横行という事態を招いた
注目すべきなのは、単にパクリの事実を指摘するだけでなく
コピーの仕方の優劣を論ずるような、新しく高度な接し方が生まれて来たことだ
筒美京平に対する『パクリの天才』という、一種の好意的評価など、その好例と言える

相倉久人によれば『音楽をコピーするってのは人間的作業であるし
同一パターンのコピーが出て来る訳がない
コピーをとる段階…つまりマネをして、あるいは影響されて何かを作っていく段階で
様々なノイズがまぎれ込む、それを個性と呼んでいいのだ』ということになる」と分析され
「それぞれのコピーの仕方、すなわち個性の違いに注目し
作品として表れて来た時のその差異を楽しむという、聴き手のスタイルを生み出すのだ」

…と記されてるんだけど、亀和田さん同様、甲斐さんのお友達でいらっしゃる町山智浩さんは
筒美さんの訃報が流れた際に「もう日本のラジオは、朝から晩まで筒美京平を流すべきですよ」とか
「『真夏の出来事』素晴らし過ぎて言葉を失う…」といったツイートをアップされたあと

「ヒデとロザンナの『愛のひととき』は、フランシス・レイ」や
「いしだあゆみの『ひとりにしてね』は、バート・バカラック」に始まり
「マッチの『情熱・熱風せれな~で』はナンだっけ?」とか
「野口五郎の『グッドラック』は、アル・ジャロウだと思うんですけど
具体的な元ネタは何じゃろう?」といった、元ネタ探しのツイートを連発(笑)

それにしても、町山さんが「筒美京平」というお名前を耳になさって
アレもコレもと次々に曲名が…それも、どちらかと言えば、メジャーな大ヒット曲ではなく
スマッシュヒット的な曲ばかり、挙げておられたのが印象的でしたが
それくらい広く深く、色んな世代の方々の思い出の曲として浸透しているということなんでしょうね?

余談ですが…「はっきり言って美声ではないが、実にユニークな響きのある声
ちょっと甘えっぽく少年的でもある松本伊代さんの声が、私は大好きです」と筒美さん
「『真夏の出来事』を歌った平山三紀のブツブツ切れるような声
少年時代の郷ひろみの妙に鼻に抜ける声と共に
私の好きな3大ヴォイスのひとつです」とおっしゃっているんだけど

橋本淳さんは「良い曲が出来ると、三紀ちゃん用に残しておくんです」と明かされていて
筒美さんの作曲家としてのターニングポイントと言われている
「真夏の出来事」を歌われた平山さんは、やはり特別でいらしたようです
コメント
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