読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

新型インフルエンザの恐怖

2008年01月14日 | 日々の雑感
新型インフルエンザの恐怖

12日13日とNHKスペシャルで鳥インフルエンザが人間から人間に感染することで生じる新型インフルエンザの恐怖を取り上げた特集をドラマ仕立てとドキュメント風の二本立てでやっていた。その前になんかのニュース番組ですでに新型インフルエンザが世界中で爆発的に発生し世界中で1億人が死ぬということを聞いていたので、どきどきしながら見ていたが、やはり逃げ場はないということが分かった。

ほとんど人との交流のない山奥とか孤島にでも住んでいない限り、私たちのように都会に住んで、電車に乗って通勤し、多数の人との接触のある仕事をしていると、だれが保菌者か分からないわけで、どんなに注意してもインフルエンザは飛まつ感染や空気感染だから、感染をシャットアウトすることはできない。

だから肝心なのは新型インフルエンザにかかわる医療体制(危機管理体制)だということがこの番組で分かっただろうか? 行政に携わる人たち、医療関係の人たちに、今すぐ対策を打って、タミフルの十分な備蓄、そしてワクチンの早急な開発をしなければならないこと、そしてもしどこかで新型インフルエンザ感染者第一号が出たときに、学校、会社、空港、バス、電車などの輸送機関をどうするかということの段取りをきちんと決めておかないと、あっという間に数百万人の死者がでるぞということが分かっただろうか?

このドラマでもそうだったが、厚生労働省だか東京都の会議だかなんか分からないが、対策本部みたいなところの会議のなんと危機意識の希薄なことだろうか。危機意識を持っているのはこの問題の専門家として5年も前から段取りを進めてきた磯山とかいう官僚だけのように見えた。いったいどうやって学校を休校にさせるのか公共輸送機関を停めさせるのか分からないと言っているのだから、頭にくる。その結果、次々と新しい型のインフルエンザが発生して、手のうちようがなくなって初めて、輸送機関を停めると言い出すしまつ。もうそんなんなってからでは遅いよ。

あの番組では首相とかがまったく出てこなかったが、きっと現実の場合には、首相が決断して、公共輸送機関をとめ、あらゆる公的機関を休みにするというような措置を取るべきだろう。でなかったらどんどん広がるばかりだ。

怖いのは医者が怖れをなして患者の受け入れを拒否するということ。NHKの別の番組でも品川区だったとおもうが、そこの行政関係者が医師会を通じて、医者に協力を要請したところ、ほとんどの医者が拒否したらしい。一番怖いのはこれだ。インフルエンザにかかっているかどうか診察する前にどうやって区別するのだ?区別できないのに、インフルエンザは拒否するということは、診察そのものを拒否するということではないか?こんなことを医者に許していいのだろうか?こんなことをする医者からは医師免許を取り上げるべきだ。

アメリカでは核兵器やテロの脅威以上の脅威として位置づけ、国家が責任を持って対抗策を実行している。たとえば呼吸器。品川区ではほとんど予備はない。一台が数百万円と高額なこともある。アメリカでは毎月積立金のようにして緊急用の呼吸器を買いためている。ワクチン。ワクチンは実際に人から人へのインフルエンザが発症してからでないと作れないが6ヶ月で国民全員分を作る体制を作っているし、まただれからワクチンを打つのかというラインも制定している。医療関係者と警察関係者が真っ先にワクチンを投与され(これなんかは当たり前だよね)、つぎに高齢者という予定だったが、国民の意見を聞くと、老人自身が自分たちよりも孫の世代を優先してくれという意見が多く、その結果まず乳児、そして3歳から18歳までの未成年者というようになっている。こうしたガイドラインを国が作っておけば、いざ投与しなければならないときに現場で混乱が起きることはないだろう。日本はそんなこともなにもないどころか、呼吸器の予備がないということについて厚生労働省の役人は「それは私たちのかかわることではなく、自治体の管轄ですから、国民の皆さんのご理解を得て」と責任放棄のいつもの文言を繰り返していた。

こんなときこそ、こんな問題こそ、国がイニシアティブをとって率先して、準備をしなければならないのに、日本の危機管理体制はまったくお粗末だ。これはいつも言われることだが、なんど経験しても身につかないのは、官僚が自分たちのことだと考えていないからだろう。それにいざ発症しても一番に自分たちがタミフルを投与したらいいとでも思っているのではないだろうか。

この新型インフルエンザの流行は起こるか起きないかの問題ではなく、いつ起こるかの問題だとWHOの人が言っている。そして起きたら全世界で1億人が死ぬ、日本では300万人くらいが死ぬだろうといわれている。300万人と言えば小さな県が四つ五つはなくなるということだ。核の恐怖どころの話ではない。1918年に流行したスペイン風邪(風邪と言っても実際はインフルエンザのことだ)では12億人の人口のうち2500万人が死んだということだ(これはあくまで推計)。人口は5倍になっているから1億人というのはけっしてあてずっぽうの数字ではない。しかも人間の移動ということから見ても、交通機関の発展は当時の比ではない。あっという間に広がるだろう。なんでもそうだが、こんな激しいインフルエンザでも全員が死ぬわけではない。周囲がみんな罹患してもかからない人もいるのだ。それはどんな生き物でも同じこと。結局、こんな風にして自然は人間を淘汰するのだろうかもしれない。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「漢方小説」 | トップ | 「現代フランスの病理解剖」 »
最新の画像もっと見る

日々の雑感」カテゴリの最新記事