読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『スプートニクの落とし子たち』

2018年05月23日 | 作家カ行
今野浩『スプートニクの落とし子たち』(毎日新聞社、2010年)

1957年の世界初の人工衛星スプートニク1号(ガガーリンが乗っていた)の成功のおかげで、日本では科学技術を重視する方向に政策転換が行われ、大学も理工学部が拡充された。

もちろんこうした政策転換は、若い学生の意識も変えた。これからは科学技術が重視される時代になる。科学技術の世界で生きていけば、食いっぱぐれしない。

こうして1958年に東大工学部に入学した著者と同期の学生たち―エリート集団―の人生を描いた私小説ということのようだ。

ただ、私でも知っている野口悠紀雄をはじめとした有名人(なのだと思うが、私は知らない人ばかり)すべてをまんべんなく描いているわけではなくて、彼らの中で、唯一、悲惨な死に方をした藤原公彦という人が大きなスペースをとって描かれている。

あまりの面白さに一気読みしてしまった。ただ私が感じた面白さは、自分自身も還暦を過ぎて、もうジタバタしても始まらない年令になり、やたらと中学校の同窓会(2020年に開催予定)が待ち遠しかったり、大学時代のサークルの仲間たちとの写真を見返しては、再会したいなと思ったりする(そのくせ、落ちこぼれだった高校の同期生会が今年の夏にあるらしいのだが、これには行きたくないなと思ったりする)ような、精神状態の中で、人の人生をなんだかのぞき見してみたいという根性から来るものだろう。

だから、アマゾンのレビューの多くが、多分若い人が書いたのだと思うが、こんなプライベートなこと、ブログにでも書けばいい内容で、金を取るな、みたいな論評があるのも当然だろう。若い人がこんなものを読んでも面白くないはずだ。だが、人生の選択に間違い、とかあるのだろうか。

だれが付けたのか知らないが、タイトルはいい。『スプートニクの落とし子たち」だって。私の時代なら『アポロ11号の落とし子たち』かな。



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