読書な日々

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「年収300万円時代を生き抜く経済学」

2006年02月23日 | 人文科学系
森永卓郎『新版年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社、知恵の森文庫、2005年)

この人のことは以前からテレビで喋っているのを見て「なかなかいいこと言うな」と思っていたので、この本は一度読んでみたいと思っていた。素晴らしい本です。とくに第1章と第2章が素晴らしい。選挙のたびにコイズミ旋風とかいって、コイズミを、そして彼の言うカイカクを、なにか神風のように、くさったもの老獪なものを取り去ってくれる、新しい息吹のように思い込んで応援してきた人たちに、この本を読んで、彼が、そして彼を支援する経済界のなかの「勝ち組」がいったい何を狙い、何をしてきたのかを勉強しなさい、と言ってやりたい。この本を読むとすでに潤沢な資金なり資本をもっている人たちがさらにそれを増殖させて、アメリカの金持ちみたいに、召使をたくさんはべらせたような生活をしたがっているのがよく分かる。

たとえば、身近なところでは、なぜか知らないが、私のようなところにも、頻繁に、マンションを買って賃貸にして家賃収入を得るという資産運用をしないかというような電話がかかってくる。最初は、適当にあしらっていたのだが、「お金になりますよ、借主が現れなくても、うちが家賃分は保証しますから」というような言葉に乗せられて、いちどローンを組んで支払いをして、家賃収入との差額で、どれくらいの収入になるのか計算してみたことがあるが、たいした差額にはならないし、第一、家賃収入分は保証するといったって、その会社がずっと存在するわけでもなく、倒産デモしたら、そんな保証はなくなってしまう。結局、マンションを買って家賃収入で利益をあげることができる、それが条件の良い資産運用の一つとなるのは、二つや三つのマンションをポンとキャッシュで買えるような資産をすでにもっている人にとっての話であって、われわれのようにローンで買ってなんて人の場合には、絶対に利益なんか生じないのだ。それが分かって以来、この手の話は適当にあしらっているが、株の運用だって、似たようなことだろうと思う。結局は、資産のある人にとってのうまい話にすぎないのだ。

この本で森永は、ここ数年の経済動向というか政府の経済政策も、超金持ちと年収が300万円程度の「中流」と年収が100万から200万円の超下流という二極化を作り出す仕組みになっていることを分かりやすく示している。あの道路公団のカイカクだって、今井委員長による事務局案がよりよいものであったのに、猪瀬直樹らの建設慎重派案とのどうでもいいような対立を使って、コイズミが自分を改革推進者として見せかけるために、今井委員長をコケにし、道路公団カイカクをつぶしてしまったことまで、森永は示している。

ほんとうに、彼にはもっとテレビに出て、コイズミカイカクの欺瞞を暴き立ててほしいものだ。


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