『不便益のススメ: 新しいデザインを求めて 』⑥(2019/2/21・川上浩司著)の続きです。
不便益8種類の益
⑤ 安心・信頼できる
使利なものはブラックボックスであったり、途中をすっ飛ばしたり、人の恣意が介在するのに対して、不便なものは物の理に従うものが多いです。これは、安心や信頼をもたらします。このことを、不便益の一つに数えます。
リモコン式の車のキーのほうが、挿して捻る式より便利です。しかし、リモコン式の鍵で車をロックした時、ハザードランプが光っても本当にロックされている保証はありません。ロックとハザードランプの間に因果関係はありません。人がそういう決まりにしているだけです。車メーカーでロックの開発をしている部門の人たちを信じるしかありません。ところで、1回光るとロック、2回光るとアンロックだと知っている人も少ないでしょう。これは人との約束事でしかありません。
一方で、挿して捻る式が手首に与えてくれる反作用や各ドアからの機械の作動音は、物の理に裏付けられて、ロックやアンロックを保証します。これが、安心や信頼をもたらします。
不便益8種類の益
⑥ 上達できる(飽和しない習熟)
便利なものより不便なもののほうが、上達(習熟)できる伸び代が大きいものです。このことを、不便益の一つに数えます。
さらには、上達が飽和せず、青天井のこともあります。「これ以上に上手な運転はない」という天井は、マニュアル車では考えにくいです。「これ以上に上手な文字はない」という天井は、手書き文字にはありません。どんどん上手になることができるし、独自の文字にすることもできます。
上達できるという益は、工夫ができるという益や対象が理解できるという益に支えられています。対象がどうなっているかが理解できているから、どんなことが試せるか(工夫できるか)がアフォード(提供)されて、試してみた結果が物の理に基づいてフィードバックされることで、上達を後押ししてくれます。
便利な全自動ワンプッシュボタンの押し方は,習熟のしようがありません.
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