『言語の力 「思考・価値観・感情」なぜ新しい言語を持つと世界が変わるのか?』(2023/12/21・ビアリカ・マリアン著)からの転載です。
1945年、第2次世界大戦の末期に、連合国のリダーたちがドイツで会合を開いた。参加したのは、アメリカのトルーマン大統領、イギリスのチャーチル首相、ソ連のスターリン書記長だ。米英両首脳は中華民国の蒋介石総統の同意も得て、日本の無条件降伏を迫る「ポツダム宣言」を発表した。ポツダム宣言には、宣言を受け入れない場合は、どんな返答であるとも、「迅速にして徹底的な破壊」につながるという記述もあった。
記行会見の煬でポツダム宣言への対応について質明を受けた日本の鈴木貫太郎首相は、「コメントを控える」という意味の政治用語で答えた。具体的には「黙殺する」だ。この言葉はさまざまな意味に解釈することができる。「過剰反応はせずに静観する」という意味かもしれないし、あるいは「無視する」、「怒りを内に秘めて黙っている」という意味かもしれない。しかしここでは最悪の訳語が選ばれ、それが歴史的な悲劇を引き起こすことになる。アメリカ国家安全保障局の文書から引用しよう。
この言葉には、鈴木が意図した意味とはきわめて異なる意味もある。残念なことに、各国の通信社は、この言葉を「コメントに値しない」という意味だと解釈した。日本政府は、連合国からの最後通告に対してそのような態度を選んだということだ。アメリカ政府は鈴木の言葉に激怒し(中略)強硬策をとることに決めた。それから10日もしないうちに原爆投下が決定され、そして実際に原爆加投下された広島は一面の焼け野原になった。(以上)
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