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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか③

2023年03月10日 | 日記

『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(2021/10/15・ハワード・J・ロス)からの転載です。

 

 

 私は、イスラムの神秘主義スーフィズムの古い言い伝えを聞いたことがある。それは、間違った場所で真実を探すことについて語った民話である。その民話の主人公はナスレッディン・ホジャといい、13世紀のトルコの有名なトリックスターとして知られている。どういう話か説明しよう。このナスレッディンは、隣国から国境を越えて故郷の国に帰るうとしていた。彼は、ロバを綱で引きながら歩いていた。ロバの背には、藁が山と積まれていた。国境の見張番は、ナスレッディンが巧みに人を驅すという噂を聞いており、何かを密輸しているに違いないと思ったので、不正をあばいてやろうと彼を呼び止め、尋問した。

 「おまえがこっそり持ち込もうとしてるのは何だ?」と見張番はナスレッディンに尋ねた。「何も」とナスレッディンは答えた。「おまえを調べてやる」。見張番はそう言ってナスレッディンの持ち物を検め、ロバの背の大きな藁の積み荷を解いたが、何も見つがらなかった。男は、がっかりしながらナスレッディンを入国させた。

 それから数日後、ナスレッディンはまた、別のロバの背に木切れや藁をどっさり積んで戻ってきた。今度も見張番に持ち物を検められたが、やはり何も見つがらなかった。これと同じことが、一週間ごとに何か月も繰り返された。いつもナスレッディンがロバの背中に、たいして値打ちのなさそうな荷物を乗せてやって来るが、それを検めても貴重なものは何ひとつ見つからない、というパターンだった。

 ある日とうとう、不満が頂点に達した見張番がナスレッディンに言った。「おれは今日で仕事をやめる」と見張番は言った。「おまえが何かをこっそり運んでるのはわかってるんだ。だが、なかなか突き止めることができない。そのせいで夜通し寝ないで、おまえが何をしてるのか考えてきた。おれはもう仕事をやめるんで、もうおまえをわずらわせたくない。だが、どうか頼む。

おれの気が済むように、おまえがこっそり運んでいたものが何なのか教えてくれ」「わかりました。では、お教えしましょう」とナスレッディンは言った。「私は、ロバをこっそり運んでたんですよ」

 私たちは公平性や平等を求め、多様な人間や文化を受け入れようと苦闘しながらも、正しい場所でそれを探してきただろうか? それとも、何も入っていない藁の包みの中を探してきたのだろうか?(以上)

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