宗教業界新聞『中外日報』(25.4.4号)に、以前は滋賀医科大学 医学部 教授であった早島理氏(現龍谷大学大学院特任教授)が「仏教の生死観・生命観とiPS細胞」というタイトルで執筆されておられました。
特筆すべき点は、生命の問題は、生命倫理委員会だけで無理があるとする点です。そして下記のようにあります。
先端医療が発展するほど、「いのちの意味」を問い続けることの重要性が指摘されてきているが、その任務を生命倫理のみに預けることは、その成立過程から見ても無理がある。生命倫理はもともと「生命の構造・機能」の分野に付随して成立してきた背景があるからである。この問題を考えるときは、人間の生存欲望を肯定する立場から、そして何よりも「生」のみを扱う生命倫理とともに、生存要望の抑制をも視野に入れ「生・死」(しょうじ)の両方を論じる宗教の視座、具体的には仏教の考えとの両方が必要であると考える。「死」の根底に踏まえてこそ「生」の意義があらわになるからである。(以上)
長く生命倫理にかかわってきた方だけに、問題の突っ込み方が学問的です。それは“生の欲望を肯定的にみる”という倫理の問題点を指摘して、仏教の土俵を際立たせている点です。そして結論は下記の通りです。
(1) 生命科学に携わるすべての研究者もそしてマスコミも、この・IPS細胞による治療やNIPT(新型出生前診断)がもたらすメリットだけでなく、世代を超えて何か起こるかわからないことのデメリットをも隠すことなく情報提供する責務かおるだろう。(2) 一方私たちは「夢の治療方法」などのうたい文句に踊らされることなく、このメリットーデメリットの情報や議論を踏まえたうえで、生老病死みないのちの視点から「生き抜く力」と「死に逝く力」のバランスを一人一人が選択する覚悟が必要となるであろう。そして(3)そのことが「いのちの限りを生き抜き、心おきなく死んで逝く」というあたりまえの生き方を可能にするのではなかろうか。(以上)
生きることへのプラスだけではなく、死んでいくという事実も踏まえて、この問題をどう考えるのかが問題だといっています。確かに「死を遠ざける」だけの医療であれば、死への敗北感を助長するだけに終わります。
ということは、生命倫理を考える上でも、世界保健機関(WHO)憲章で示される健康の4つの定義、
1)physical health(肉体的な健康)
2)mental health(精神的な健康)
3)social health(社会的な健康)
4)spiritual health(直訳:霊的な健康)
とある、スピリチュアルな面も入れて検討しなければならないということでしょう。
特筆すべき点は、生命の問題は、生命倫理委員会だけで無理があるとする点です。そして下記のようにあります。
先端医療が発展するほど、「いのちの意味」を問い続けることの重要性が指摘されてきているが、その任務を生命倫理のみに預けることは、その成立過程から見ても無理がある。生命倫理はもともと「生命の構造・機能」の分野に付随して成立してきた背景があるからである。この問題を考えるときは、人間の生存欲望を肯定する立場から、そして何よりも「生」のみを扱う生命倫理とともに、生存要望の抑制をも視野に入れ「生・死」(しょうじ)の両方を論じる宗教の視座、具体的には仏教の考えとの両方が必要であると考える。「死」の根底に踏まえてこそ「生」の意義があらわになるからである。(以上)
長く生命倫理にかかわってきた方だけに、問題の突っ込み方が学問的です。それは“生の欲望を肯定的にみる”という倫理の問題点を指摘して、仏教の土俵を際立たせている点です。そして結論は下記の通りです。
(1) 生命科学に携わるすべての研究者もそしてマスコミも、この・IPS細胞による治療やNIPT(新型出生前診断)がもたらすメリットだけでなく、世代を超えて何か起こるかわからないことのデメリットをも隠すことなく情報提供する責務かおるだろう。(2) 一方私たちは「夢の治療方法」などのうたい文句に踊らされることなく、このメリットーデメリットの情報や議論を踏まえたうえで、生老病死みないのちの視点から「生き抜く力」と「死に逝く力」のバランスを一人一人が選択する覚悟が必要となるであろう。そして(3)そのことが「いのちの限りを生き抜き、心おきなく死んで逝く」というあたりまえの生き方を可能にするのではなかろうか。(以上)
生きることへのプラスだけではなく、死んでいくという事実も踏まえて、この問題をどう考えるのかが問題だといっています。確かに「死を遠ざける」だけの医療であれば、死への敗北感を助長するだけに終わります。
ということは、生命倫理を考える上でも、世界保健機関(WHO)憲章で示される健康の4つの定義、
1)physical health(肉体的な健康)
2)mental health(精神的な健康)
3)social health(社会的な健康)
4)spiritual health(直訳:霊的な健康)
とある、スピリチュアルな面も入れて検討しなければならないということでしょう。