超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

オシエシラバス 5巻/高尾じんぐ

2012-12-25 19:18:25 | 漫画(新作)











高尾じんぐ「オシエシラバス」5巻読了。











面白かった。
でも・・・ただ「面白かった」だけで済ませてはいけない気もします
5巻目にして初めて重たいテーマ性を打ち出してきたなあ、って感じました。
他人の忠告ってやつを誰もが必要以上に煙たがるけれど
そうやってうざったく感じるという事は
内心響いてる証拠な訳で
無理矢理自分を正当化して逃げててもいつかは向き合わなければいけない命題な事も確か
馬鹿の一つ覚えみたいに迷惑がるよりも、少しは冷静になって考えてみたら?っていう提案のような、
ある種のメッセージのようなすうちゃんのお叱りは個人的にグッと来ました。
よくよく思ってみれば、
忠告される事でその人にとってのメリットが増える訳ではない
そういう隙間というかあんまり他の作家が描かないようなテーマ性を打ち出すのがじんぐさんの個性なのかも

ここからがもっと大事なんですけど、中盤からは教恵とまといの仲違いが描かれています
これがまたどっちの肩を持てばいいんだろう?って思っちゃうほど「分かるなあ・・・」ってケンカで
一方は無理難題を押し付け
一方は過剰な達観を示して
どっちもどっちだなあ、って内容のケンカなんですけど
この絶妙なリアリティこそがこの漫画、というか作者の肝な訳で
漫画っぽい部分と漫画っぽくない部分のバランスの取り方が一般的な作品よりも絶妙
その意味では今回もまたこの作家ならではのグレーゾーンをめいっぱいに感じた次第、
割り切れない問題っていうのはいつの世の中にも存在するもんなんですよね。

まといの気持ちとしては、自分のペースで自由に気楽にやりたい、何も気にせずに生きたい
それもまた一つの生き方ですし、他人に決められるもんじゃないというのは事実
だけど、「天才」とか「凡人」、「得手」と「不得手」って
物凄い便利な言葉で誤魔化して
あまりにも受動的な感じはするといえばするのもまた事実なんですよね。
誰もが都合良く使う常套句ですけど、その結果人生そのものがたるんでしまう危険性だってある訳で
まだ学生の内から達観しちゃうのは危険と言えば危険な兆候でもあるんです
「頑張る力」を養う時期だと今になっては思うので。
ただ単純に成績が下がったから怒ってるのではなく
教恵的にはその言い訳のような達観自体が許せない、彼女的には直したい部分なんだと。

その一方で、教恵の提唱する無理難題を言われるがままにこなしていけばいいのか?って疑問もあります
何でもかんでもアゲアゲな言葉でてっぺんを目指せ、って言われても意思の力は人それぞれ
その過程で磨り減って元々の意思すらなくなったら本末転倒な訳で
教恵の言う事が全部が全部正しいわけでもない
間違ってる部分もある、
まといの友人が言う通り個人個人で向上心には差があるのが事実だし
それは結局本人の気力だったりキャパシティ次第だったりしますからね。
簡単に出来ちゃう人に言われても納得出来ないのもまた本音。


そんな相容れない二つの思想、二人の人間。
答えの出ないテーマ性をここに来て打ち出してきたなあ・・・と感心しましたが
早くもその軋轢に対する進展も出てきたようで、教恵は少し反省してまといに謝った
そしてまといはと言えば、友人の差し金で一度辞めた筈のテニスに再燃
再び届かない「悔しさ」を覚えるなど
何気に今後の展開に向けての複線も撒かれつつある模様
後は、お互いがお互いに対してどう作用していくか・・・ですね。
少しだけ現状に対する不満のような感情を取り戻したまといの表情に微笑む教恵
一方でそんな教恵は自分の不得手な部分をしっかりと学んだり
さり気に経験も積めた新刊だったんじゃないかなと
これから先どういう変遷を遂げていくのかは分かりませんが、芯のあるテーマ性が提示された以上
中々に手応えのある作品として完結に向かってくれそうな予感もヒシヒシとしてきました
お互いぶつかりあって作用しあって、段々と丁寧な変化を遂げていく
考えさせられる部分もありつつ
最終的には爽やかなカタルシスを手に入れることも出来る
今の時点でも十分傑作良作の類だと思います。ますますこの作品を大好きになれた5巻目
白黒付かない物語の面白さと余韻を改めて感じさせてもらいましたね。堅実なドラマ性が最高でした!
テニス部の複線もあるし続きを読むのもすっげえ楽しみです。
取り合えず、
何気に距離自体関係性自体は縮まりつつある感覚が実に素敵でしたな(笑
最後の全力で頑張った二人の表情が成果を物語っていました。

それと、個人的には善くんの様子も気になりますね(笑
教恵の勘違いさせるようなコメントがもうね。
悩む時点で間違いなく恋なんですけど
それに対して必死に言い訳を考えてる姿が正に思春期男子!って感じで素敵です
ようやく善くんも男の子っぽくなってきて個人的に嬉しいですねえ(笑
彼の今後も是非期待させて欲しいですね。
素晴らしいキャラなので。
出来れば教恵とデートする話とか見たいッス。










初期はあくまでまといの視点という印象でしたけど
最近は完全に教恵視点の半分生真面目な教育漫画になってる印象も
作品が元々持っている題材から決して逃げずに向き合う真摯さも含めて大好きな作品
考えさせられるような内容が多かったですけど、
読み手の見方次第で自由に捉えて持ち帰る事の出来る懐の広さもあったなと。
こういう背中をちょっと押してくれる漫画は大切ですね。
出色の5巻目でした。





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