goo blog サービス終了のお知らせ 

超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

NICO Touches the Walls「HUMANIA」全曲レビューその2「衝突」

2012-01-26 03:13:56 | 音楽(全曲レビュー)





NICO Touches the Walls「HUMANIA」全曲レビューその2「衝突」です。





2.衝突





この曲は正直現段階でも相当助けられてますね(笑)。
ものすごく非生産的な曲なんですよ。
疲れただとか
嫌になっただとか
そういう言葉だけで、まったく解決の糸口さえ見つからないまま終わる、っていう。
本当に救いの用意されてない、しかもそれがやたらリアルっていう傷口に大きく沁み込むような歌なんですけど。
じゃあそれが単なる嘆きの歌なのか、って言ったらそれもまた違くてその最中で必死にもがくと言うか
全力でじたばたしてるようなある意味ではシンパシーを生むような作りになっていて。

例えば初期のこういう曲でも、全く光の無いまま終わるって事は無かったと思うんですけど
この曲は一切の光明を掴めないまま一人ぼっちで終わっていく曲なので
割ともうちょっと落ち着いてから出しなよ、って曲でもあって。
でも個人的にはこういう曲を今の、微妙に売れつつあるタイミングでやってくれたのが逆に嬉しいっていうか
要所要所で変わりつつも、肝心な根本は変わってないんだな、むしろ掘り下げられてるんだなって。
そういう訳で長年のファンとしてもこういう曲をアルバムの掴みにしてくれたのは大きかった。
なんで、その意味でも個人的には結構な重要曲ですね。
ライブで聴くと重みが増しててそれもまた◎でした。





【もういい やれやれだ 疲れちまった】

疲れてる時にこういうフレーズ聴くと逆にフラストレーションが発散されて
結構気分が楽になったりするんですけど
これもまた
音楽の中で本音で会話するっていうか、正直こんなんしょっちゅう思ってますからね。正しい歌詞だと思う。
それを大きな声とダイナミックなサウンドで思い切り吐き出せる効果は何気に凄く大きいですね。


【いやいや笑っちゃうくらい みんな間違ってるのさ 
  俺は俺でしかないから 責められやしないぜ  】

他人と自分を比べたり、他人と違う自分を恥ずかしく思ったりする事も正直あるけれど
だからと言って安易に変えられるものでもないし、体が変えられないですし。
そこに対して引け目を感じたとしても
結局はしょうがないっていうか
本当に責められやしないんですよね。自分は自分でしかないっていうのも事実だ。
だから、こうやって必死に自分の中で言い聞かせて咀嚼しようとしているギリギリの歌詞
そこにやっぱり大きなカタルシスを感じてしまうし、シンパシーも同じ位感じちゃうっていう。

他人の心境なんて分かりませんけど
自分の心境だけで判断するならば、思った以上に自分に対する自信なんてないですからね。
むしろ、生きてると隣の芝が青く見えることばっかでね。
それに対して延々と悩むのはどうなんだ?って思ってても
思春期とか過ぎたとしても
永遠にまとわり付く課題でもありますからね。だからこそ、そこに対して必死に肯定しようとあがく
確信の無いまま進もうとするこの歌詞が自分の中で異様に響いちゃったのかもしれません。
このフレーズの部分に突入すると毎回感情移入してしまいます。



【そうやって曖昧にして答えを急いだって ジレンマは消えやしないんだ 白黒つけるの大変だ】

これが歌詞の後半に来るって事は
本当に悩み苦しみもがいたまま終わりを迎えるって事で
それがある種痛快でもあるんですけど
逆に言えば、そんな簡単に答えも出口も見つからないんだよってメッセージでもあるように思えて
でもそれが一つの人間らしさなのかなあ、って気はしますね。

特に何も考えずに、無理矢理暗示して搾り出した答えよりも
数ヶ月長年若しくは数十年一生そうやって考えて見つけて出した答えの方がいとおしいのは明白で。
誰だって何かしらのジレンマは抱えて生きてるもんだと思いますけど
そうやって痛みや迷いを感じる事自体必死な証拠っていうか
それもまた生きた証しなのかもなあ、と。
少なくともこの曲を聴いてるとそんな風に感じられますね。奥深い詞だと思います。個人的な意見ですが。




ツアーでも既に演奏されてますが、回数を重ねる度にどんどん磨かれそうな予感。
音源以上にリズム隊のアピール力が強く感じられて面白かったですね。



NICO Touches the Walls「HUMANIA」全曲レビューその1「Heim」

2012-01-15 17:22:35 | 音楽(全曲レビュー)





どのタイミングでやろうか迷ったんですが、一度ワンマンで観てからの方がいいかな、と思って。
そしたら全曲演奏してくれたんで容赦なくこのタイミングでやるべき!と思い(笑)。
満を持して「HUMANIA」の全曲レビューを始めます。
前作「PASSENGER」に引き続きNICO好きな方はどうぞよろしくです。

このアルバムはNICOの本質が詰まっている、もっと言うとNICOそのものだと思います。
影響を受けた音楽を照れのないままに全力で吐き出し、
様々なジャンルの楽曲をそれぞれに振り切れさせ暴走させて歌声で一つに纏める、統一感を演出する。
アクの強い声だからこそ出来た大技であり、逆にどの曲を歌わせてもNICO節っていう
王道のロックバンドに果敢に挑戦するその姿勢は正しいと思うし
今他にこういう事やってるバンドもあんまないと思うし。
そんな最新作「HUMANIA」の楽曲群について自分なりに紐解いて行けたら、と思ってます。まずは「Heim」から。





1.Heim




時間としては3分以下の、そしてバンドサウンドでなくほぼ弾き語り、っていう
これまでの一曲目とは趣向の違うナンバーになってるんですけど
じゃあ単体で聴けないのか、って言われたらそれも違くて今までのNICOにはない素朴さがあって。

いつもだと元椿屋の中田裕二とかFoZZtoneの渡會将士みたいな
歌謡曲のエッセンスを含む芯の強い歌い方が光村龍哉にとっては常套ですけど
この曲に関しては相応に崩してる印象で
あくまで素朴に、
色を付けずに素のままっていうか
ありのままっていうか。
歌手としての歌声っていうよりは人間らしい歌声って気がしますね。
こういう曲をこなせるようになったのもシンガーとしての一つの進化を感じます。
「梨の花」とかとも違う、正に純度100%かと思うくらい無添加な声で。

歌詞は家族を意識したらしい、
これまた間口が広くて誰にも伝わるようなテーマ。
でもぶっちゃけ、
普通に歌詞読んでるだけじゃ分かりづらいとも思うけど(笑)。
要するにイメージの固定化を避けたって事なんだろうな。
家族がテーマであるとはいえ、
他の何かにも普通に例えられそうな懐の深さはグレーゾーン好きとしては反応してしまう部分です。


【ただのあなたが そこにいてくれたから】

あなたが側に居てくれて~っていうベタなフレーズの一歩先に踏み込んだような歌詞。
「ただの」って言葉はよく否定的な意味で使われますけど、
逆に剥き出しとかそういう意味でも使える訳だ。
そのまんまのあなた、
飾らないあなた。
それを「ただの」って言葉で表現するあたり妙な開拓精神を感じますねえ。
そう考えると言葉って日本語って本当面白いなって感じる。
思わせてくれたこの曲には何気に感謝ですね。そこにいるだけで嬉しいと思える存在の強さ。
シンプルで短い曲ながら感じる事柄は色々、と一曲目から中々新鮮な楽曲でしたね。




ライブの印象は、もう音源以上に無添加で透明に響いてて初聴きの段階ではまさしく絶品でした。
清廉された空気感に酔いしれる事の出来るサウンドと演出でしたね。




COMEBACK MY DAUGHTERS「Outta Here」 全曲レビュー

2011-12-22 21:20:31 | 音楽(全曲レビュー)





まだちょっと続く全曲レビュー、今回はカムバックマイドーターズの「Outta Here」です。




このアルバムは宝石みたいなアルバムなんですよね。
過度にナチュラルな雰囲気と洗練されたメロディ、懐かしさも漂うボーカル・・・と
とにかく良い音楽をしっかりと届けよう、っていう気概が伝わってくる作品で
個人的にですが全曲好きってレベルのアルバムです(全曲好きだから全曲レビューしてるんですが 笑)。
純粋な音楽の楽しさ、メロディの旨み、原点に立ち返ったかのようなサウンド。
その全てが存在感と絶対的な気持ち良さを放つアルバムであり
正にエバーグリーンな、って形容が似合ういつまでも聴ける類のアルバムなんじゃないか、と思います。
愛情を込めて、一曲一曲、以下。





1.Secret Castle

一曲目から鋭い感性が光る曲。
曲調はゆったりとして落ち着いてるんですが、
雰囲気がピリピリしてるっていうか、張り詰めたような感触がクセになる曲で。
短い曲でもあるんですが、そんなの関係なしに存在感の高さをアピールしているような楽曲です。
個人的にこの時点から堪らん。もっと言うと歌い出しの時点から。



2.Why

清廉な朝の街並みを彷彿させるような純度の高いナンバー。
このアルバムではキラーチューンの役割を担っている楽曲であり
実際自分も一番好きな曲かもしれません。
アップテンポなんだけど
メランコリックなテイストたっぷりだったり、そのさじ加減が非常に気持ちの良い楽曲ですね。
ライブだと更に熱量を込めて歌われていてその迫力も凄かった。
アンニュイな気分に浸りたい時も、是非。



3.Yours Truly

仲違いしてしまった相手の正しさを認める歌。
チクショウ、ってなるのもいいけれど
全部相手の所為にしてても結局は自分が苦しくなるだけだから
あの日のあの君に向けての餞のような歌を贈ろう、と。
聴いてると若干切なくなってきますが
その分得れるカタルシスも相応のもので。自棄や皮肉ではなく
本気で相手を思って歌われる決別の肯定ソングって体だけでも、込み上げてくるものがあるナンバー。

【それでも僕らの荷物は増えた
 それらを担いで 精一杯タフに見せてる】



4.Mona Lisa

雄たけびのような悲しい咆哮が鳴り響くこれまた浸れる一曲です。
ライブで聴いた時のインパクトが高く
合いの手のような掛け声を逐一入れてるアイディアや
伸びやかでシンプルなサビのメロディ等今までのカムバックにはなかった類の
半ば新鮮な曲として響きつつ
今までどおりの心地良さも保たれている、そんなバランスの取り方も上手い楽曲です。
歌詞の内容はそんな寂しげな歌声に比例してネガティヴなものになってますが
そんな悲しみの感情をここまでクリアに鳴らせる事にまずは感動したりしますね。名曲レベルの一曲。



5.Slow Down

この曲、個人的に大好きです(笑)。
カントリーを取り込んだ親しみやすい曲構成と
口ずさみやすいフレーズ、にしっかりと付けられたグッドメロディの素晴らしさ。
理屈ではなく感覚で楽しむような一曲ですが
こういう穏やかで楽しげな曲なのにライブではモッシュ続出とファンの逞しさも思い知った曲。
同時にチャンスが来るまで、その時が来るまで急がないでっていう
地に足のついたメッセージも光る、大事に聴きたい一曲でもあります。



6.Henji ha iranai

まるで流暢に流れる水のようにスムーズなメロディと
心地良いアレンジとサウンドの気持ち良さ
何を考えずに聴いても
手際よくもてなしてもらえる、みたいな・・・。そんなオアシス的な楽曲であると同時に
ほぼサビのない一定のメロディーラインだけでここまで聴かせられるセンスもまた見事だと思います。



7.Lavender

この曲は非常に若々しく、純度が異様に高い一曲ですね。
まるでジャングルの王様になったかのような高本さんの雄叫び!にグッと来つつ
そんな原始的で自然を髣髴とさせる音作りに懐かしさを感じたり。
心の帰郷ってフレーズが似合うような素敵なナンバーです。
こういう曲って中々ないんじゃないかなあ。
根本的な人間らしさっていうのかね。



8.Carpenteria

あまりにもスウィートな音と歌がジワリと響くこの時期にはピッタリの一曲になっています。
ちょうど夜更けの暗い部屋で、ちょっと明かりを点けてチビチビ酒を飲む的な・・・
或いは暖房の横でゆったりと聴きたくなるような。
そんな至福の時が過ごせる一曲。
歌声だけで浸れます。



9.Strange Boy

これまた抜けの良いギターサウンドが軽快に鳴り響く、
それでいて中立的なサビのメロディも面白いカムバック流のオルタナ・ソングといった楽曲。
個人的にはオールディーズの匂いたっぷりのリフだけで
ある程度はイケちゃうような、そんな曲です(笑)。
やっぱりまんま模倣よりは自分たちのオリジナリティに落とし込んでる方が自分は好きだな、と。

【君が通り過ぎたその曲は実はとっても素晴らしい】



10.Always on your side

このタイトルの歌唱パートの歌声があまりに優しすぎて聴く度に気持ちが揺さぶられてしまう(笑)。
本当に側に寄り添うような歌声で歌われてるので信頼感も半端ではないんですよね。
それでいてナチュラルな演奏とアレンジもその誠実さを際立たせている感じで。
口ずさみやすくもある、心地の良いポップソング。大好きな曲です。



11.See you later alligator

【僕たちは君がいて幸せだった 
 ここへ来て良かったよ
 また会いましょう  】

最後は笑ってお別れ、切なくも楽しいアウトロ的な役割を果たしている楽曲。
でも、それにしてはメロディに気合が入っていて
最後まで心地良く紐解いて聴いて心酔出来る様な、磐石の締めになっているように感じます。
このアルバムは口ずさみやすいシンプルさに満ちているけれど、この曲も例外ではなく。
苦しい気持ちや宛の無い感情も歌われているアルバムですけど
終わりにこういう曲が入ってることである程度気持ちが楽になるような・・・そんな作用もあると思います。






今まで以上に聴きやすく
今まで以上に洗練されていて
今まで以上にナチュラルで。
そんな質の高い音楽がたっぷりと楽しめる
今年出たアルバムの中でも随一の純度を誇るような、そんな作品に仕上がってるな、と
聴いてて改めて感じました。それはアコギ主体としたサウンドだからって訳ではなく
元々のモチベーション自体がそうだったんじゃないか
今色々と複雑になってきてるから、シンプルで力強いサウンドに移行したんじゃないか・・・と
そんな思惑まで勝手に考えてしまうような、堂々たる傑作アルバム。
バンド史に於いても一種のマスターピースとして輝くような一作ではないでしょうか。
この作品の後にどういう変化を遂げるかもまた楽しみな所ですね。



the band apart「Scent Of August」 全曲レビュー

2011-12-19 04:52:45 | 音楽(全曲レビュー)





どんどん続きますよ。今回はthe band apartの「Scent Of August」です。



このアルバムは、割りと今までのバンアパになかった要素を取り入れつつも
聴いた時の感触はきちんとバンアパ、っていう
中堅バンドの見本的作品と言いますか
ボリュームもたっぷりあるしで深く広く彼らの表現を楽しめるアルバムになっていると思います。
最早パンクメロコア系のカテゴリーから出てきたとは思えないくらい多彩な表情やアンサンブルは
ますますバンアパならではの記名性を強く高めていて好印象、
正に傑作という形容が相応しいアルバムでした。
何気に未だにヘビロテ中ですね。表情が豊かなアルバムは聴いてて楽しい。では以下。




1.Photograph

正にバンアパ節!とも言うべき王道のメロディーライン、バンドアンサンブル。
ファンなら納得
ご新規には新鮮、と言った感じの入り口にはふさわしいキラーチューンになってます。
疾走感こそないものの、メロの強さやサビの部分の絶妙なアクセント等
今までと違う角度からのキラーチューンといいますか
ベテランならではの味が光る一曲になってます。
ミドルテンポでもキャッチーさをアピール出来るのは進化を感じますね。



2.Game,Mom,Erase,Fuck,Sleep

ここでいつも通りのテンポのグッドメロディを投入、
「fool proof」を今風にブラッシュアップしました、って感じの
既存の曲を踏襲して作ってる感覚がまた昔からのファンとしてはニヤリとさせられる一曲。
適度に踊れて適度にアップテンポなのに
どこかカフェで流れてそうなオシャレさとの融合がやっぱりツボです。



3.AG(skit)

このアルバムは曲数が多いので間にインタールード的な曲が挟まれています。
でも単なるインタールードではなく
単体で聴いても結構気持ち良いんですよね。女性の声も彼らの音には往々にして似合いますね。


4.light in the city

これまで割とテクニシャンな曲が続いてましたが
ここでストレートな一発が届きました。
とはいっても
レーザーガンみたいにガンガン打ち抜くような激しいアンサンブルには
ストレートと一言では形容出来ない迫力を感じるのですが。
そういった意味で
真っ直ぐであり、捻じ曲がった部分もあり。そのさじ加減が絶妙に思える一曲です。

詞の内容は純粋無垢な欲求の歌で、その比例する感触もまた気持ち良い。



5.Azure

バンアパっぽくない神妙なテイストが癖になる一曲。
重ねた楽器の音色と
しとやかに歌われるボーカルにウットリしつつ
その実歌われているのは重いメッセージ・ソング。
衝突も不意に来る痛みも
伝わらない思いも
あるのが当然、大事なのはそれを踏まえてどう行動するか
闇に落ちるか光に当たるか。
シンプルではある言葉ですけど、そこに至るまでの過程が丁寧なので
素直に耳を傾ける事が出来る様な・・・そんな一曲でもあります。
珍しいタイプの楽曲ですね。



6.FUCK THEM ALL

攻撃的なタイトルと歌詞とは裏腹にメロディはポップでアレンジはミニマムで・・・
とその真逆の内容が実に面白い作りだなあ、と思う一曲。
でもこういうくたばれ、嫌いだみたいな感情は
誰にでもあるものだから
ある意味表立って言ってくれてるだけありがたい。

【君の声を聞くのはもう飽き飽きだってこと わからないのかな
 だけど君の無邪気なその笑顔を   羨ましくも思うんだ】

こういう感情は何気に良く分かる。
同時に誰かにもこういう思いをさせてたのかな、とも
ふと考えてしまったりもする今日この頃です。



7.Source K(skit)

これも前述の通りインタールード的なショートソング。
前作の「July」のエッセンスを含むメロディにここでもまたニヤリと。
こういう過去から地続きな感じがこのアルバムは優れてると思う。



8.Taipei 台北

タイトルが新境地ですね。
これもポップで可愛いメロディの曲になってるんですが
途中でまったく別の楽曲に変化する
そのプログレっぽさが実に面白い楽曲です。
口ずさみやすくもあるし
何気に今作の中でも最も聴きやすい曲かもしれない。



9.Bind

この曲は非常に格好良いですねえ。メロディが洗練されてるっていうか
歌謡曲ファンにも通用するんじゃないか、って思えるくらい
馴染みの良いムーディなサウンド
ドラマ主題歌にも使えそうなくらい独特の雰囲気が優れている楽曲です。シングル向けっていうか
多少妖艶な感じもしますし、これもまた今までにはなかったテイストの気がする。
ムーディ且つ格好良い系っていうか。そして踊れます。

【責めるべき相手はどこにもいない 最後まで続けなければならない】

これもまた真理のような気がします。
自分の中では。



10.Rays Of Gravity

変化球の多いアルバムなだけに、ちょうど来て欲しいところに直球が来た!というか
相変わらず聴き手を誘う手さばきの良さに感心しつつ(笑)。
前述の「light in the~」以上にストレートで分かりやすいメロディ、キッズも納得と言った感じの
バンド感、疾走感でカタルシスをたっぷり与える感じの即効性の高い楽曲に仕上がってます。
曲としては「light~」の方がオルタナ感あって優れてるとは思いますが
シンプルの良さもこれはこれで、ね。



11.Karma Picnic

何気にめちゃくちゃ好きな曲です。
この曲も完全なる変化球なんですが、メロディがヘロヘロなんですよ。
つかみ所がないといいますか
ヘンテコな感触のサビとコーラスワークなのに
その捻じ曲がった感触が異様に楽しい、っていう。こういう脱力系の良さ、みたいなのを
まさかバンアパで聴けるとは思わなかった。
詞の内容も鉄板で
きっと隠れた名曲ポジションの楽曲だろうな、って思います。


【ええと 最終的に信じられるものは何もなかったよ】

歌い出しからしてシンパシーが・・・。



12.WHITE

このアルバムにはバラッドがあんまりないんですが
唯一の?バラッドかな。
しかし、それも途中までで加速するアンサンブルの力強さに圧倒されつつ
結局は高速のパンクナンバーに変わってる、っていう
これはこれで不思議な曲ですね。
でもこういう途中から全然違う曲調に変わるってアイディアは割と好きだったりもする。



13.1000 light years

普通に爽やかで、聴きやすい一曲です。
改めて聴き返して思ってたんですが
このアルバムは何気に爽やかさよりもオルタナティヴ感やムーディな要素のが強いので
そこを補う為に作られた楽曲なんじゃないかな~って個人的には思ってます。



14.Stay Up Late

これまでアルバムの最後は割と短い時間の中でキッチリ聴かす曲が多かったように思えるのですが
この曲は、っていうか前作もそうですけど普通に尺のあるメロディアスな曲を配置するようになってますね。
前作はバラッドが目立つアルバムで
今作はバンアパ随一のボリュームのアルバムなので
最後をポップソングで締める、っていう方向性はアルバムに合わせてるようで好印象です。
このアルバムのテーマが悩みぬいて壁を越える、って
そんなテーマにも思えるので
そういうシリアスなアルバムの最後には相応しいポップ且つ意志の光る出色のナンバーという印象ですね。




当時の感想でも書きましたが
変り種の多いアルバムでもあるので
若干飲み込みは苦労したんですが
今はもう堂々と
新要素を飲み込んでものにして提示したバンアパの新境地、って個人的には断言出来ます。
独特のエッセンス漂うアルバムではあるんですが
その奥深さを理解出来たとき
このアルバムの価値はグッとその人の中で上がるんじゃないかなあ・・・と。
そんなある種の無敵感も含んだ現在進行形の成果がこれですね。
気付いたら好きな曲ばっかになってた、
そんなアルバムでもあります。




ランクヘッド「[vivo]」 全曲レビュー

2011-12-18 19:55:42 | 音楽(全曲レビュー)






去年もそうだったのですが、年末に全曲レビュー集中させ過ぎな気がします。
あと2~3作品やってから今年のベストを選ぶ感じですかね。
10日ちょいで今年も終わりますけど
出来れば最後までよろしくお願いします!


今回はランクヘッドの「[vivo]」です。本当は一曲単位でやっても良かったんですが
当然の如く時期過ぎてる&今からやってたら終わる頃にはニューアルバム出てるという理由から
ここで一まとめにしてお送りすることにします。それでは以下。




1.狂った朝

一発目からインパクトの高いオルタナ・ソング。
ちょっとシンフォニックな響きも垣間見られるその神妙なサウンドは聴き心地が良いと同時に
残酷な現実をまざまざと思い知らされるような歌詞にもなってて
その対比が面白い曲で。
きれいなサウンドに醜い歌詞が重なり
そのコントラストがとても美しくも思える、そんな一曲でもある。
正に一曲目を飾るに相応しい曲調だと感じるので、スタートを切る一曲としても素晴らしい曲だと思います。
踏みにじられる側にも価値はある、と言いたげなフレーズが無性に優しく感じられます。



2.何も怖くなどなかった

先日ようやくライブで聴けました。
音源でもそうなんですが、イントロの部分が暴発し過ぎで色々と面白いです(笑)。
衝突事故でも起こったのかと思えるくらいの迫力から
一気に直線状に伸びるような真っ直ぐなギターロックのアンサンブルが
堪らなく気持ち良い、
疾走感溢れるという形容が非常に相応しいと思える一曲。
ただ、疾走感とはいっても爽やか、ってよりはむしろある種の攻撃的なエッセンスも含む
男らしい力強さが溢れているのがこの曲ならではの特徴ですね。過度にエネルギッシュな感覚が凄くて。
「誰も強くなどなかった」ってフレーズは聴いてると毎回グッと来ます。
アルバムを代表する一曲。



3.百日紅

これもまた半端なくエネルギッシュな一曲。
轟々と燃え上がる炎のような曲なんですけど
歌詞自体は結構にシリアスで
悲壮感も漂いつつ
でも最終的には悲しみや痛み、怒りを忘れずに連れ回して
その憤りを燃やして
自分の理想とする場所に辿り着ければいい、と強く願う切実な曲でもあります。
怒りや痛みに慣れないで、むしろそれを糧に生きていけ、と。
それで前に進めるのなら
それもまた正しい方法の一つなんだと思います。
怒りを原動力に
悲しみを肥やしに。
そのストレートなボーカルの熱量にもまた圧倒される曲ですね。



4.密室

誰にも気付かれず
誰にも気付いてもらう事も出来ず
ただ一人で終わっていく人間の歌です。
これは
メロディも極上だし演奏も良い線いってるんですが
それよりもなによりも
「密室」ってタイトルが最も秀逸だと思うんですよね。
誰も入ることの無い、
自分だけの部屋ならばそれはもう密室と同じ事だと。秀逸ですが切なくもある。
そんな何か出来るようで、何も出来ない気持ちを燃やし尽くすような激情のロック。

【誰にも言えない言葉が今日も この手を擦り抜けていく】



5.シンドローム

とてもユニークな詞であると同時に
すとんっていうのはSTONEとも掛けてると思うわけで
そんな簡単に落っこちて転がる人間の心情のメタファーとしては優れてるとも思うわけで。
ダンサブルで痛快に踊れる曲調でもあるんですが
同時に黒い感情、醜い感情、さっきまで笑ってたのにふとした事で一気に感情が落ちてしまう
そんな人間の脆弱さも歌われている曲なので、正に暗黒ディスコっていうか
シリアスに踊れる、って形容を地で行くような曲になっていると思います。
でも決して暗いだけの曲ではなくて
繋がりを必死に求める全体的な流れにもグッと来てしまうナンバーにもなっているかと。



6.誰も知らない

あの日悔しかった自分も
あの日泣いてしまった自分も
あの日嬉しくて笑った自分も
誰も知らない
自分の感情は自分でしか理解し得ない。
そこに寂しさを感じるのと同時に
それは絶対的なものでもあるわけで、
その感情は総て正しいんだよ、って。
誰にも知られなくても
誰にも伝わらなくても
確かにそこにあって、自分の中にあった感情たち。
に向けての餞のバラッド。
肯定するバラッド。

という風に自分は解釈してます。これもまたタイトルが秀逸ですなあ。



7.泥日

【無力なだけなら 白さなどこの手には要らない】

このフレーズが全てを物語っていますね。
生きる為には
きれいなことばっか
正しいことばっかでは生きていく事が出来ない
間違いを一度も犯さずに生きている人間などいない上に
間違いを本当に嫌って犯さない人間すらもいない
でも
それで守られてる命、感情、想いも確かに存在していて。

真っ白なままでは、無防備では生きていけないから
所々黒く染まった部分もあるけれど
それもまた致し方ない
それすらも認めて、自分の幸せの為、自分の光の為に前に進め、と。
自分の幸せを手放してまで笑えるような力がないのなら
どんな手を使ってでも守り生き抜け、と。
これもまた熱量の高い曲ですが
更にギターリフが凝ってて面白い曲でもありますね。差別化出来てる感じもします。



8.螺旋

本作の中でも随一にアッパーで激しい曲で
不協和音のようなサンサンブルノイズまみれの音楽の上で
縦横無尽に駆け抜ける歌、と
アグレッシヴにも程がある過度に暴力的なナンバーになっているんですが
そこに乗せられた言葉はただ「生きたい」と願うだけの、
それだけの事で。
それだけだから逆にグッと来てしまう。

【泣きたいくらいに私は知っている 誰もが生きたいと願っていた】



9.風の作り方を知っているか

で、この曲でそれまでの流れが極まった感じはしますね。
歌うというよりもがなって捲し立てるタイプの曲なんですが
途中からラウドロックみたいな音像になってきて
ここで一回果てて
最後に決着、みたいな。
男らしさのシンボルのような一曲。燃えます。



10.ゲノム

最後は壮大なバラッド。
ここに至るまでに痛み、苦しみ、悲しみ、迷い、怒り、その他諸々のペーソスを吐き出しつつも
それでも最終的には生きることを肯定する、
生きる為に生まれた事を肯定する。
する、っていうよりは
したい、って言葉の方が似合ってるか。
それでも生きたい、だからこそ生きたい、そんな生に対する強靭な執着心。が歌われていて
それまでの流れが徹底されているだけに感動も倍ってくらい
感情移入して聴ける一曲でもあります。
轟音ロックが多いアルバムだからこそ、最後はバラッドで一本締めみたいな感覚が個人的に好きですね。





このアルバムは、とても強烈なインパクトを残すアルバムであると同時に
前作「AT0M」の延長線上のような作品でもある訳で
普通延長線上って新しい事何もやってない訳だから、評価は前作よりも落ちるじゃないですか?
でもこのアルバムの凄い所は、延長線上なのに前作と同じレベルの感動があるっていう。
これは正直ビックリしましたね。
サウンドのタフさも作品を重ねる毎にグングン上がってて
今やイースタンやブッチャーズと並んでも違和感ないくらいの激情バンドになってきた感覚もします。
ポップなシングルを実験的に連発していた時期はどこへやら、
ようやく真髄を連発出来る季節になったんだなあ、と
古くからのリスナーとしても嬉しかった、そんな情熱滾る一作になっています。
ネガティヴな感情を燃やしてポジティヴに進む、って方法論は自分向けだなあとつくづく感じますね。傑作です。

「AT0M」全曲レビュー