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超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

口ロロ「CD」 全曲レビュー

2011-12-08 23:08:06 | 音楽(全曲レビュー)






久々に羅列形式で全曲レビューやります。まずは口ロロの「CD」です。



前作はボリューミーでテーマ性もバッチシ決まってた傑作、って考えると
今作は軽量化という感じで幾分か聴きやすい。
でも、それが何よりの利点でもあって
40分ちょいって時間に加えて最先端の洗練された、正に今の時代性がはっきりと打ち出された音楽が
緩急を付けて存分に味わえる、サクッと現代的感覚を養える作品になってるので
単純にパッと味わえるカタルシスではこっちのが全然上
逆に
長時間でじっくりと楽しみたい時は前作、って感じで良い具合に使い分けが出来るのもまた面白い。
最先端の音楽技術と、でも古き良きメロディの再現も忘れてない
正に一歩進んだ音楽、として鳴らされているのがこの「CD」だと思います。ブックレットも見応えアリ。





1.はじまり
短い言葉や動詞を数珠繋ぎのように発して繰り返し、
最終的に一つの言語感覚にまとめるという、実験的でありながらポップな一曲。
音源だけで聴いても楽しめますが、
これは歌詞ありき、
歌詞カードを眺めながら楽しむのがベストと言い切れるくらい工夫があってユニーク。
その仕組みがCDってメディアで発表する必然を伴っているのが凄い。


2.1234
タイトル通り、4人のボーカリストが順番に言葉を発しながら
リレー感覚で歌いきる、これまた超ユニークな楽曲。ですが、歌詞の方は、
誰かと軋轢が生まれてしまった時の
頭の中が混沌としているあの感じを上手く表している、感情移入のしやすいものになっています。
それをここまでポップに聞かせれるのに色々と驚く一曲。

「ドリンクバー 紅茶 メロンソーダ ウーロン茶
 飲みたくもないのに一杯ずつ その度通路回り道」


3.ヒップホップの経年変化
いとうせいこうメインのヒップホップ。前作でもありましたが
こっちはよりメロディアスで聴きやすいですね。
おまけに
歌詞の内容もまた、素直に若者に対して意志や応援を投げかける感じになってて
唯一といってもいいくらいストレートな曲調が逆にアクセントになっている、という印象。
というよりも、いとうせいこうが歌うと嫌味も暑苦しさもないのがいいのかも。


4.恋はリズムに乗って
口ロロお得意の、純正たる良質な歌謡曲のメロディー。
もっと言うと
サニーデイ・サービスが歌っててもおかしくないような曲でもある。
あまりにも優しいメロディと
空気を読んでるアレンジ
その調和に聴いてて不意に泣きそうになる一曲です。

「いつか僕が忘れたままにしてた
 ざわざわをきっと 誰かがきっと また」


5.スカイツリー
生活音の音楽って言うここ最近の口ロロのテーマ性がモロに反映されてる曲。
日常の一部分を端正に切り取った構成は新鮮で面白い。


6.あたらしいたましい
個人的にアルバムでは特に好きな一曲。
これもすっごく面白い曲で、
断片的な「あ」とか「し」とかいう短い文字が
最終的に一つのフレーズにビシッとまとまる様は当時も今もやたらに感動します。
この場合の感動は泣けるとかそんなんではなく
純粋な意味での感動ですけどね。
そしてめちゃめちゃポップでストレートなメロディにもまた気持ち良さを覚えます。


7.ちょwwwおまwwww
タイトル通りです(笑)。それ以上でもそれ以下でもない。


8.ヵゝヵゞゐ。
タイトルの読み方に最初は戸惑ったんですけど(笑)。
乾いた印象のパンクロック的アプローチを含む完全なるロックサウンド。
基本打ち込みかポップス調が基本なだけに
こういう試みは面白い。
そして歌詞もオチも面白い(笑)。前衛的だがハマればハマる曲。


9.iuai
この曲も大好き。かなりロウなテンションでボソボソ歌われているんですが
不思議と中毒性や聴きやすさもそなわっていて
ずっとダラダラ聴いていたくなるような。
それでいて歌詞の所々に出てくるシリアスなフレーズにドキッとしちゃうような。
なんとなくゆら帝の「空洞です」好きな人にもオススメ出来そうな一曲です。


10.lʌ'v mi
これまた読み方に困る一曲、ですが
楽曲自体は渋谷系独自のエッセンスを今風にブラッシュアップしたもの。
最後に聴きやすくて分かりやすい曲を、って感じの配置で
最終的にキラキラして終われるのは良い判断ですね。
開き直ったような、
突発的な明るさが印象に残る曲です。





とにもかくにも実験精神だらけのアルバム、ですが
それがポップに、紐解き易い形で提示されてるので驚きも新鮮味も受け易く、
ボリュームも手ごろなので
何度もリピートしたくなってしまう。分かりやすく口ロロ独自の中毒性を改めて提示した、って印象の
今こうやって音楽の価値が揺れ動いてるからこそ
聴く意味合いや、
新しい面白さが発見出来る、と薦めたい様な。そんな作品。
当時も傑作だと思いましたが、10ヶ月経って聴くとまた感じ方も捉え方も違ってくる
長く楽しめるタイプの作品だと思います。それでもって、若干沁みる。



MONOBRIGHT「ACME」全曲レビューその12「WONDER WORLD」

2011-11-16 23:44:46 | 音楽(全曲レビュー)






MONOBRIGHT「ACME」全曲レビュー、その12。最終回です。「WONDER WORLD」。





個人的にこの「ACME」は今年出たアルバムの中でも相当の出来だと思ってるんですが
その最後の曲にあたる「WONDER WORLD」は正に全身全霊、
余力一切残さずの全力アンセムになっていて
これもまた桃野らしいメロディだなー、って初めてライブで聴いた時思ってたんですが
その後クレジットを見てみるとヒダカ作曲だったというオチが。
これもまたファンに向けてのフェイクといいますか
良い具合に弄ばれてるなー、って思いつつ
自分色ではなく、敢えて桃野陽介の作風に近い曲を提供するあたり、
よく分かってるよな~って個人的には思います。
最後の曲がバラッドでもポップでもなく、アグレッシヴに終わるっていうのは勢いがあって素晴らしいですね。
スケール感の大きい、でも独特の激しさは忘れずに鳴らされた新たな柱曲・・・って感じでしょうか。



【普通ってなんだ?】

でもこの曲の歌詞もまた一筋縄ではいかないですねえ。
正直分かりすぎちゃうっていうか
不満を周りへの違和感を抱えながら生きてる人にとってはストレートに響く言葉だとは思うけれど
誰もが誰も常識に当てはめて当てはめられて
同じ様な人間しかいない
そこから浮いている、はみ出している自分に対しての不満と欲求。他者や社会に対しての攻撃、かと思いきや

【繰り返す雑踏退屈は 本当は 自分のせいだ】

と、そんな自分に対する嫌悪感をも吐き出してるのが実にリアルですね。
その狭間で迷ったり、悩んだり、考えたり・・・
そういう最中のフラストレーションを一気に解放するかのような、シンパシーを獲得出来る類の
気持ちの良い暴走感がクセになる一曲です。
自分が変われば
自分の世界だって変わるかもしれない。
それをせずに不満をタラタラいうのは、案外軽率なのかもしれない。
ただ一つ言える事は
考える事は決してやめるな、って事なんだと思います。
作業よりも
人の諸行を。そんなメッセージ性なんかも感じつつ、引用させてもらったフレーズを更に掘り下げると・・・


人から外れる事を異常、人と同じ事が普通って言うならば
どんどんと人は
自らを普通に当てはめて行く訳ですけど、実際本当の意味で誰かと同じ人間なんていないから
そもそも普通って概念自体が疑わしいものなんだよな、っていうのは感じます。
だとしたら
みんな実は普通ではないのなら、他人と違う事したって違う性格であったとしても
それは異常ではなく、むしろ当たり前とも言える訳で。
だから
無理にそんなバランスを考えなくてもいいっていうか、その差を気にする必要があるのか?って事ですよね。
そんな風に考えれば、誰もが普通で誰もが異常で、でもそれが人間なんだって。
自分で元々持っていた枠は
自分で改造する必要も照らし合わせる必要もなく
そのまんまで、ありのまんまで別に良いと思う。それが変に思われたとしても、みんな実は変なんだから。
それを隠すか隠さないの話。その選択くらい、自由にやっていいんだよ、って
この曲を聴いてそんな風に個人的には思いました。
悩んでる最中で
なまじ答えをはっきりと提示してないだけに、
聴き手としても考える余地や選ぶ余地があるような・・・そんな曲にも感じられますね。決定打の一つだと思います。





という訳で、今回で「ACME」の全曲レビューは終わりです。
今まで読んでくれてた方、どうもありがとうございました!また次も頑張りますね。
楽しんで書き切る事が出来て良かったです。また来年以降のアクションも実に楽しみ。




MONOBRIGHT「ACME」全曲レビューその11「miu」

2011-11-12 21:09:59 | 音楽(全曲レビュー)





MONOBRIGHT「ACME」全曲レビュー、その11「miu」です。タイトルは「海」を業界用語っぽくした、とのこと。





11.miu




アコースティック風味、常夏の匂い漂う爽やかで色気のあるサマーチューン。
渋谷系っぽいエッセンスを漂わせつつ
歌詞の中では
本音もさり気なく混ぜ込んで、ただ単にスッキリした曲になってないのは流石ですね。
一聴してさわやかなように聴こえても、その実何気に誰かに噛み付くような、そんなメッセージ性のある曲。
っていうのは勿論個人的に解釈して噛み砕いて感じた事でしかないのですが。
このアルバムの中でも相当ポップな位置に属する曲で、
シングル曲よりもシングルっぽい・・・ってこの形容他の曲にも使ったな(笑)。
要は敢えて新機軸をシングルに据えたのかなー、とは思います。今になって考えてみると。
普通に「この夏の決定打!」とか、そんな触れ込みで出てそうだもん。
逆に「COME TOGETHER」なんかはアルバムのリード曲っぽいと感じるんですよねえ。不思議なもんだ。




【仮想の世界が邪魔をします】

例えばの話、人と話しててもそれが全部本音だなんて限らなくて
その場しのぎも、軽薄な発言も
いつの間にか主張が変わってたり、そんなのはザラだから
裏切られた事もそれぞれにあるだろうから
変なイメージが付いて他人に素直に接する事が出来なくなっている自分に気付く。
要は経験が人を育てていくけれど、
経験でダメになってく部分も往々にしてあると思うんですよね。一度付いた嫌なイメージは
どんなに努力しても自分の力では消せないし
信じるしかないんですけど
じゃあ何もかも簡単に信じれる?と言ったら当然違う訳で。経験によって育てられ
経験によって防御策も壁も生まれてしまう、っていう。
それを
どれだけ取り払えるか、真面目になれるかやれるかどうかの勝負。そんな意味合いに感じるフレーズ。


【空想以上に僕はリアルさ】

人間は人形ではないから
美しいだけのおもちゃではないから
触れれば傷付く部分もあるし
想像の範疇や一般的な思考では補えない部分も次々に出て来るわけで
それを認めてこそ
お互いの汚さや間違いを認めてこそ前に進める節はあると思います。
空想の中の自分、
理想の中の君・・・そんなものいるようで、実際はどこにもいやしない。存在してない。
ここにあるのは、リアルっていうありのまんまの自分や他人でしかない。
それを互いに分かり合うのが
個人的には人間関係なんだ、って思うんですが
実際はそうそう簡単に上手くもいかない訳でね、難しい所なんですけど。
ただ、理想の中に完璧に当てはまる人間なんていやしないし、自分も含めてそうなんだと。
だから「夢」ってフレーズも出てきますけど
夢みたいなもんだと思うんですよね。すぐ消えちゃう、すぐ冷めちゃう。それを分かっていて、


【サンダー 君に落とされたいよ】

と、切望するこの曲は、自分が思っている以上にタフな楽曲なのでは・・・と感じるんですよね。
軟派に見えて、実は必死だった、という。それもまた見せ掛けだけの判断でしかない。
本当の本質なんてものは一石一朝で分かるようなものではないですからね。
だからこそイメージに頼る事は危険だなあ、と
そんな風にも思った一曲なのでした。ラスト前の配置だけど、十分に気持ちは盛り上がる一曲ですね。




MONOBRIGHT「ACME」全曲レビューその10「COME TOGETHER」

2011-10-29 15:49:45 | 音楽(全曲レビュー)





MONOBRIGHT「ACME」全曲レビューその10は「COME TOGETHER」です。先行シングル。
起き抜けに聴くと良い感じの曲。






10.COME TOGETHER




それまでの曲が内省的に自らを掘り下げる内容だっただけに
ここで一発突き抜けてきたな、っていうか。
流れとしては非常に上手いし
明朗快活っていうか
分かりやすくノレる曲って感じの一曲に仕上がってます。キーボードのアレンジも耳障りが良いし
全体的に漂う爽やかな雰囲気も基本文化系テンションのモノブライトの中では異端。
そんな訳で一つの新境地とも取れる楽曲になってますが
詞の方はやはりモノブライトっぽさもちゃんと残っていて。



【恥を知るな怠けるな かといって無理はするな】

人はどうしても周りの人間の色だったり
基本的に格好悪さから自分を遠ざけようとしますけど
そうじゃなくて
もっと自分の好きな事ややりたい事、求める事を思いっきりやってやれ、っていうか
それに対しては恥なんて知らなくても良い、
周りを気にする必要なんてない。
自分の感じるままに。
・・・とは言いつつ、それをゴリ押しではなく、マッチョなノリではなく
「無理はするな」とあくまで文化系のノリのメッセージになってるのがモノブライトらしいですね。
この辺で一線引いてる感じ。巷の応援歌とのセンスに於いて。

【勝利とは、自分の為ですか? そうさ自分の為さ】

人はどうしても、
っていうか日本だとどうしても
謙虚な姿勢だったり
周りに遠慮をしがちになりますけど
結局は何をするにしても、自分の為にやらなきゃ
先なんて見えないし
奇麗事なんか抜きにして、自分が幸せになる為に頑張るのもまた真理なんだと。
確かに独りよがりでもいけないけど
だからといって自分をないがしろにする必要なんて全くないし
自分を幸せにするのを怖がる必要も引け目も要らない。
そういう努力に関しては
もっと貪欲で居ても良いんじゃないか、っていう一つの思想。それもまた欠けてるパーツなのかもしれません。
そうやって「本音」を次々と暴くような言葉が多いですね。特にこのアルバムは。




周りに対して気を使いすぎる事も
自分を捨てる必要もなく、
むしろ剥き出しのまま生きた方が実は楽、っていう
堅実なメッセージ・ソングになってるのと同時に、フォローもきっちり入っているという
無責任じゃない所がまた心地の良い一曲。大きな会場で聴くと一体感が最高です。




MONOBRIGHT「ACME」全曲レビューその9「スロウダイヴ」

2011-10-27 00:13:20 | 音楽(全曲レビュー)





MONOBRIGHT「ACME」全曲レビューその9「スロウダイヴ」です。





9.スロウダイヴ




【じさつした心がくるしい】

なんか6曲目以降ひたすらに自らの過ちを掘り下げたような構成になってるんですが。
前のアルバムでも思ったんですけど
最近の「流れを作る感覚」っていうのかな、散漫とさせない方向性って言うのは
以前と比べて格段に進化した部分だと思います。
こういう楽曲を、アンニュイな楽曲を並べて配置する事で
よりそういうイメージだったり
底の底って部分を
強烈に植え付ける事が出来る、っていう。言っちゃえば、その後は上がるだけですからね。曲順的にも。
その鬱屈した感情の極みなのがこの曲なんじゃないでしょうか。心が死んだ日の夜の歌。

人間はどうしても
自らの心を押さえつけなくちゃいけない部分があるっていうか
耐えなければ
心を殺さなければいけない時があるんですけど
そんな時に、
何も言わないんじゃなくて
我慢するんじゃなくて
こうやって堂々と言ってもいいっていうか・・・それが人間らしいと思うし
落ちるときは落ちてしまえ、と。この曲はbloodthirsty butchersの「4月」にも通じるエッセンスがある曲で
そういう点でも潜在的にブッチャーズリスペクトがあるような曲だな~とも思えちゃって
その意味でもとても好きな曲ですね。
心のザラザラした部分を掬ってくれるタイプの曲って言うか。
必要のあるなしに、そういう作業を行うって事は快感だし気持ちの整理も付いたりする。
出来れば夜、深夜1時を越えた辺りに部屋で一人そっとヘッドフォンなんかで聴いて欲しい曲ですね。
この前の曲「夜明けのバル」も含めてね。ノイズに近いギターの音が非常に心地良いスロウバラッドです。





ちなみにこの曲は先にミニアルバムで別バージョンが収録されてますが
そっちはこれよりもちょっと聴きやすくした感じのアレンジで、こっちはそれの重厚版、みたいな。
どっちのアレンジも個人的には好みですけど、やっぱこっちの方が深く潜れる感じはする。