久々に羅列形式で全曲レビューやります。まずは口ロロの「CD」です。
前作はボリューミーでテーマ性もバッチシ決まってた傑作、って考えると
今作は軽量化という感じで幾分か聴きやすい。
でも、それが何よりの利点でもあって
40分ちょいって時間に加えて最先端の洗練された、正に今の時代性がはっきりと打ち出された音楽が
緩急を付けて存分に味わえる、サクッと現代的感覚を養える作品になってるので
単純にパッと味わえるカタルシスではこっちのが全然上
逆に
長時間でじっくりと楽しみたい時は前作、って感じで良い具合に使い分けが出来るのもまた面白い。
最先端の音楽技術と、でも古き良きメロディの再現も忘れてない
正に一歩進んだ音楽、として鳴らされているのがこの「CD」だと思います。ブックレットも見応えアリ。
1.はじまり
短い言葉や動詞を数珠繋ぎのように発して繰り返し、
最終的に一つの言語感覚にまとめるという、実験的でありながらポップな一曲。
音源だけで聴いても楽しめますが、
これは歌詞ありき、
歌詞カードを眺めながら楽しむのがベストと言い切れるくらい工夫があってユニーク。
その仕組みがCDってメディアで発表する必然を伴っているのが凄い。
2.1234
タイトル通り、4人のボーカリストが順番に言葉を発しながら
リレー感覚で歌いきる、これまた超ユニークな楽曲。ですが、歌詞の方は、
誰かと軋轢が生まれてしまった時の
頭の中が混沌としているあの感じを上手く表している、感情移入のしやすいものになっています。
それをここまでポップに聞かせれるのに色々と驚く一曲。
「ドリンクバー 紅茶 メロンソーダ ウーロン茶
飲みたくもないのに一杯ずつ その度通路回り道」
3.ヒップホップの経年変化
いとうせいこうメインのヒップホップ。前作でもありましたが
こっちはよりメロディアスで聴きやすいですね。
おまけに
歌詞の内容もまた、素直に若者に対して意志や応援を投げかける感じになってて
唯一といってもいいくらいストレートな曲調が逆にアクセントになっている、という印象。
というよりも、いとうせいこうが歌うと嫌味も暑苦しさもないのがいいのかも。
4.恋はリズムに乗って
口ロロお得意の、純正たる良質な歌謡曲のメロディー。
もっと言うと
サニーデイ・サービスが歌っててもおかしくないような曲でもある。
あまりにも優しいメロディと
空気を読んでるアレンジ
その調和に聴いてて不意に泣きそうになる一曲です。
「いつか僕が忘れたままにしてた
ざわざわをきっと 誰かがきっと また」
5.スカイツリー
生活音の音楽って言うここ最近の口ロロのテーマ性がモロに反映されてる曲。
日常の一部分を端正に切り取った構成は新鮮で面白い。
6.あたらしいたましい
個人的にアルバムでは特に好きな一曲。
これもすっごく面白い曲で、
断片的な「あ」とか「し」とかいう短い文字が
最終的に一つのフレーズにビシッとまとまる様は当時も今もやたらに感動します。
この場合の感動は泣けるとかそんなんではなく
純粋な意味での感動ですけどね。
そしてめちゃめちゃポップでストレートなメロディにもまた気持ち良さを覚えます。
7.ちょwwwおまwwww
タイトル通りです(笑)。それ以上でもそれ以下でもない。
8.ヵゝヵゞゐ。
タイトルの読み方に最初は戸惑ったんですけど(笑)。
乾いた印象のパンクロック的アプローチを含む完全なるロックサウンド。
基本打ち込みかポップス調が基本なだけに
こういう試みは面白い。
そして歌詞もオチも面白い(笑)。前衛的だがハマればハマる曲。
9.iuai
この曲も大好き。かなりロウなテンションでボソボソ歌われているんですが
不思議と中毒性や聴きやすさもそなわっていて
ずっとダラダラ聴いていたくなるような。
それでいて歌詞の所々に出てくるシリアスなフレーズにドキッとしちゃうような。
なんとなくゆら帝の「空洞です」好きな人にもオススメ出来そうな一曲です。
10.lʌ'v mi
これまた読み方に困る一曲、ですが
楽曲自体は渋谷系独自のエッセンスを今風にブラッシュアップしたもの。
最後に聴きやすくて分かりやすい曲を、って感じの配置で
最終的にキラキラして終われるのは良い判断ですね。
開き直ったような、
突発的な明るさが印象に残る曲です。
とにもかくにも実験精神だらけのアルバム、ですが
それがポップに、紐解き易い形で提示されてるので驚きも新鮮味も受け易く、
ボリュームも手ごろなので
何度もリピートしたくなってしまう。分かりやすく口ロロ独自の中毒性を改めて提示した、って印象の
今こうやって音楽の価値が揺れ動いてるからこそ
聴く意味合いや、
新しい面白さが発見出来る、と薦めたい様な。そんな作品。
当時も傑作だと思いましたが、10ヶ月経って聴くとまた感じ方も捉え方も違ってくる
長く楽しめるタイプの作品だと思います。それでもって、若干沁みる。