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超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

閃光少女 3巻(最終巻)&オトナのいろは 1巻/あさのゆきこ

2013-12-13 17:45:41 | 漫画(新作)



















同時発売・・・だったんだっけ、忘れたけど近間隔で発売された2作の感想。





















◆閃光少女 3巻(終)

途中でちょっと泣きそうになりましたね
泣きはしなかったんだけど、泣きそうになった。
この方の絵柄は本当にほんわかしてて可愛くて優しくて大好きなんですが
それにペーソスや「泣き」の演出が少しでも入るとつられて泣きそうになってしまいますね
濱野先生の事を大切に思うからこそいつも笑顔で居て欲しいという彼女の願いは気持ち的に号泣でした(笑
3巻で早々と終わりましたけど一応「再起」というテーマは完遂出来てると思うのでこれはこれで
馬鹿にされた見返しに関してもあの人らに初心を思い出させる、というオチも付いたし
中々丁寧にまとめ切った良作だと思います
個人的には推し、です。

文化祭の出し物に関しては正直めっちゃ面白いアイディアだと思いましたね
それぞれの価値観による「華」っていう回答は平凡から抜け出てる面白さがありましたし
実際ああいうのがあったら楽しかっただろうな、って思う
人の笑顔も、女の子も、ゴシップも、植物も食べ物も加工写真もそれぞれの価値観でそれぞれが素晴らしい
「その人なりの趣向」を一切否定しなかったエンディングはとても価値のあるものだったと思います
価値観を比べる必要や各々の趣向を否定しあう必要など本当は一切なくて
その人が本当にそれを楽しんでいるなら
それに触れている時笑顔ならば
優劣も否定のし合いも全く持って意味のない事、
己の尺度で独自の価値観を見い出すことこそ個性的かつ尊いことなので。
みんなの個性を尊重しあったラストは写真云々突き抜けて思想的な意味合いでも良かったと思う
ここまで見事な文化祭の出し物も中々ないんじゃないか、ってくらい。


人の評価を気にして楽しめなくなってしまう、っていう気持ちは誰にだって存在するもの
でも思い返してみれば他人に評価をされるために「それ」を始めたわけじゃない
初めは誰だって純粋にその行為が好きだったから始めたわけで
「人に評価されること」が目的になっちゃいけない
それはただ単に他人の顔色を伺ってるだけ
そうじゃなくて、もっと夢中にもっと初心の「楽しさ」を心に持ってぶつかっていく心意気―
一度は心労とプレッシャーの為リタイアしてしまった濱野先生だったけど
ヒカリと出会った事でその気持ちが蘇って来た
その気持ちを維持出来るようになった
だからこそヒカリという「光」を求めた、何度挫けても写真を嫌いになれない自分を思い知れた。
・・・というかなり上手い着地点だったと同時に
考えさせられる内容でもあって。

「評価される」というのは確かに嬉しいし、光栄なことなんですが
「評価されない」というのはとっても悔しくて心の傷の一部として延々と残ってしまう
だけど、そういったものを「気にする」為に自分はやってるのか?って言えばそれは違う
だって最初は評価云々関係なくただただ好きで「それ」を始めたはず
そういう「評価」に対して異様に拘っていると
「本来自分がやりたかった事」がないがしろになってしまう危険性が発生する
そうなる前に、もしくはそうなった後に、「何の為」に自分が「それ」をやってるのか再確認した方が良い
そういうメッセージも個人的に感じ取ることが出来たのが嬉しい最終巻でした
濱野先生はこれからもグジグジ状態になるだろうけど、
でもそういう「初心」すら忘れなければ何度だって「そこ」に帰ってこれる
挫けたって涙したって、それでも「好き」だって思える事を再確認する為の物語だったのかも。
これからはヒカリが側で照らし照らされていくんだろうし、二人の前途が心地良いものであるといいですね。
なんだか最終巻のヒカリはおてんば娘だった1巻からグッと大人の女性に成長してたみたいだった
濱野先生を強く想う気持ちにも素直に感動させられたなあ、と言った具合ですね
個人的に年の差、部の指南役ってだけだけど教師と生徒ってシチュが大好きなので最高でした(笑)。
最終話ですっかり仲睦まじく(?)なってる二人を見てニヤニヤしてしまいました。

あとは、何気にカップリングをいっぱい成立させてるのが無性にときめきました
はっきり公言はされてないけど速水くんと誉ちゃんはそういう仲なんでしょうかね
そういう仲だって思いながら読むとなんだかニヤけてきちゃいます
その他にも部員同士の組み合わせも沢山
そういう部分も含めていつか外伝で描いて欲しいなー、なんて望みつつ
ちゃんと全部の部員に対してスポットを当ててくれた真っ当さもまた好きな漫画でした
終わってみれば全部の部員を好きになれているところはやっぱ流石だなって思う
ヒットはしてないし、話題になってたわけでもないけど
こういう地に足の付いた良作が私は好きです。 素敵な物語をありがとうございました。
そしてヒカリはやっぱり天使レベルでした。たまらなかったです。行動も容姿も。

個人的には太った誉ちゃんのが好き(笑)。
速水くんにスポットを当てたお話も凄く頷ける上に自分を路傍の石だと思っているような
そんな人に是非読んでもらいたいエピソードに仕上がってました。
光ってない人だって実は光ってるものなんだ。




◆オトナのいろは 1巻(新)

最終巻があれば新刊もある・・・って事で今度は4コマですね
でもこれは普通の4コマと違って結構ストーリー漫画としても読めますし
その上できっちりオチもついてたりして中々にスムーズに楽しめる秀作になってました
この漫画でも挫折した大人が出てきますがこれは逆に上手すぎて周りの嫉妬を買ってしまったパターン
そのせいで書道が嫌になってしまった女性が懸命に習字を頑張る主人公に感化されていくお話です

この漫画の肝はやっぱり綾乃って女性のペーソスですね
かつて愛した男性、そして決別、最終的には喪失を味わって
中々前に進めない様子、その物悲しさが心に沁み入る内容になってます
だからこそ頑張る主人公の健気さも際立って相乗的にもグッと来る流れになってるんですが
時折挟み込まれる綾乃さんの昔の思い出がどれも哀愁に満ちていて気持ち的に泣けるんですよね
その上、褒められないまま適当に「大人」やってる主人公が
少年のように書道にのめり込んでいく様は懐かしい気持ちを思い起こさせますし
そういう意味合いでも大人向けの漫画という気がします 哀愁だけじゃなく、あの頃の熱い気持ち。

主人公は綾乃さんと出会ったことから何かに向かって頑張る気持ち・上達する楽しさを思い出し
綾乃さんは主人公の羨望や懸命さに感化されて徐々に書道へと向かう気持ちを取り戻していく
そんな二人の恋愛模様も望めそうですし
正しくwin-winの物語として楽しめそうな素養がいいですね
あさのゆきこの漫画は基本的に「ペーソス」と「恋愛要素」を忘れてないのがいいです
こんな可愛くてぬくぬくした絵柄なんだからギャップ狙ったり甘々要素も欲しいですよね、って(笑
4コマとしては綾乃さんのおっぱいネタの繰り返しが一番笑えたかな
でもこれは半分はストーリーものなんでお話を楽しみながらクスクス笑う事が出来る
何気に個性的かつテンポよく読み切れる良い具合に隙間を突けてる4コマ作品だと思います
個人的にはこういう半分はストーリー漫画な4コマ作品増えて欲しいです
4コマがそこまで・・・って人にも通じる素養があるので。


過去編含めて1巻の時点で大分お話が進んでいる印象なので割と早めに完結するのでは
でもこの「密度の濃さ」はやはりあさのさんの漫画らしいですね
1巻だけでも「挫折からの一歩」というオチに辿り着くまできれいに描かれてるのが尚素敵です
色々と苦悩や挫折を味わってたり一歩踏み出す勇気を失くした大人向けの漫画。続巻も楽しみ。



















本当はリアルタイムで2冊同時感想やりたかったんだけど色々あってこの時期に
でも落ち込んでた時に「オトナのいろは」読んでなんだか気分が上向きになりましたし
複雑な心境の時に「閃光少女」の3巻を読めたので結果的にはgoodでした
また、心温まるような新作にも期待しつつ、いろはの2巻目にも期待しつつ。
この方の描く人物はやっぱ魅力的! ちょっと女性をふくよかに描く癖が個人的に超ツボです(笑)。





ペーパーブレイバー 1巻/藤近小梅

2013-12-06 19:16:13 | 漫画(新作)






















藤近小梅「ペーパーブレイバー」1巻読了。




















現役女子高生でデビューした藤近小梅の初連載・・・って書くと
少女漫画誌の誰かみたいに思えますが少年誌の上にチャンピオンなんですよねえ(笑
その意外性も随分面白かったんですが、同時にそれってある種のフラグでもあるので個人的には
正直やや警戒してたんですけど
思ってた以上にイイ感じだなー、と途中から思うようになって単行本を購入しました
絵柄は可愛く素朴でもあるので多分読みやすく万人受けもしやすい、それにチャンピオンスパイスを少々・・・
って感じの塩梅でしょうか
でも絵柄と題材(勇者パロもの)を考えるとややスクエニ系っぽく思えなくもない
あとがきのオマケ漫画を読むとエレメンタルジェレイドが好きだったみたいですし(笑

年齢の割には絵が達者で、
その上ツッコミや台詞回しのセンスもあったりして
若々しい印象を受けつつも基本的には楽しめる漫画だと思います
ストーリーは最近流行りの勇者パロもの、現代に於ける勇者云々~という流れで
ダメ勇者の勇人を白魔道師の白窓さんが鍛え直す、っていう入りやすいものになってるかと

でも個人的に印象的だったのはそこにストーリー漫画の要素も少しあって
鍛え直しつつも本心では強いてしまって申し訳ない、だけど魔王の末裔に狙われるかもしれないから
勇人の為を想って行動している、という心情
勇人も最初はダメダメだったけど、そんな白窓さんの努力が少しずつ伝わり
後半ではいつもサボってばかりの自分を後ろめたく思い始める等
割とキャラクター自身の「成長」だったり「心情」に関してもフォーカスが当てられてるのが良かったです
普段はもっさりしてる勇人が白窓さんの為に一生懸命彼女を抱えて逃げるシーンは正直グッと来た
勇人もたまには格好良いところ見せれんじゃん!って印象で好感度上がりました(笑)。
まだメリハリに関してはそこまで鮮やかに決まってるとは感じませんが
これから更に良い作家になっていくような素養は感じられた1巻目
安定している上に、
ストーリー的に面白味を感じられるパートも多々あって楽しめた作品でした
てっきりゆるゆるコメディだと決め付けていたので積み重ねの良さも垣間見れたのは中々の収穫でしたね。
意外と単行本向きの作品なのかも。


前述のように、オーソドックスなお話でも台詞回しが結構練られているので
そのお陰もあって安定感が生まれている・・・というのもありますね
例えば「あれえおかしいなあ 赤の他人が話しかけてきますよお?」というツッコミ
「呼吸さえ意識せざるを得なくなり生きてることを実感させられた朝でした」というボケ
そういう目を引く台詞が多々散りばめられているので
その意味でも退屈せず最後まで読めるんじゃないかと
キャラも各々で個性的で面白いのでその二つの要素が上手く絡まって相乗効果を生んでてイイです。

で、後はおまけの3コマ漫画が凄く面白かったです(笑
白窓さんと八兵衛のお着替えのエピソードになっているんですが
二人の上半身下着姿が見れる上にネタも楽しくこれだけでも買う価値ありって感じ
それとお尻を触られて激怒する八兵衛はちょっと可愛かったなあ。
まだまだ、更に楽しくなるポテンシャルを秘めてる漫画だと思います(今の段階でも十分大好きですが!)
これからの更なる飛躍に期待しています。


それと、ちょいちょいラブコメっぽい雰囲気も挟まれてるので
ラブコメ好きとしても嬉しいですね。
なんせ白窓さんの性格とキャラデザが最高なので時折彼女のデレモードが見れるのは収穫です
他にも勇人と白窓さんの関係が恋人だと邪測されたりもするので
勇者パロ好きの方以外にもラブコメ好きの方にも案外通じるんじゃないかな、と
いずれにせよ前述のように高いポテンシャルを感じられるのは間違いないですね。カバー裏も美麗イラストで◎。













最近の本誌のお話も中々面白いので興味あればそっちも 
今週分は特にユニークで面白い出来でしたね。全くの一話完結なのでそっちも是非!




サクラサク症候群 2巻/保志レンジ

2013-12-04 20:16:31 | 漫画(新作)





















保志レンジ「サクラサク症候群」2巻読了。






















この漫画は「少年ライバル」って言うその名の通り少年誌でやってるラブコメな訳ですけど
少年誌のラブコメと言うと基本的にヒロインが複数居て、
片想いのようでいて実は相思相愛で~ってパターンが自分の見た限りでは大半、
というかそれがある種の基本になっていて私自身そういう作品を好む趣向があるんですが
そういう「お約束」から考えるとこの漫画は随分異端に映るんですね。

まず、主人公が誰からも想われてない(笑)。
2巻の段階でもそれを貫いていたんで正直ビックリしました
片想いは片想いのままだし、かといって主人公を想ってくれる新ヒロインも現れない
あくまで景虎というヒロインに恋焦がれつつある若竹、という構図は2巻でもそのまま
そういう関係に悩みつつ迷いつつ試行錯誤しつつも
距離が縮まったり、
青春の猶予期間を疑似体験出来るような心地良い内容に仕上がっています
「実はヒロインも主人公を好きだった」「他のヒロインも主人公を好きになる」という
2大お約束をきっぱりと回避している上にその景虎自身はあくまで若竹を「最高の友達」だと思っている
男女間の友情を信じ切っているからこそなんとなく読んでて切ない気持ちになってしまう・・・
凄く話題になっている訳ではありませんが
何気にかなりのニュータイプ、稀なラブコメとして成立していると思います
青年誌とかではまた違うのかもしれませんが、少なくとも少年誌ラブコメとしてはかなり貴重な存在ですね。
だからラブゲームの行方とかではなく純粋に若竹の頑張りを応援したり
秘めた恋心の揺れを楽しむのが面白い漫画になってます
少年誌ラブコメで「このヒロイン健気だな~」って思う事は多いですが
まさか主人公に対して健気でいじらしいな~って思えるのはちょっと少ないですね
この巻では葛藤の末に叶わない恋を愚かながら選んでしまう若竹、
だからこそ少しは彼が報われる時が早めに訪れればいいなあ・・・なんて思ってしまう
物悲しくも、時折挟まれる心地良い距離感の描写に心が温かくなる漫画です
正直こういうの「も」待ってた気がする
オルタナティブだと思います。


また、この作品はそういう二人の距離感や若竹の恋心の進捗の様子以外にも
「未成熟な若者の成長」というテーマ性もあるようにはっきりと感じられました
まずちょっとおてんばが過ぎる景虎のキャラ性の時点でそれは結構感じてたんですけど(笑
でも、それ以外のサブキャラ達、美々ちゃんの共通観念に従ってしまう弱い性格、
連帯感から逃れられない選択が上手く出来ない性格の描写
スズメというこれまた未成熟故に自己中心的な行動を取ってしまう女の子、
ただただ「好き」なだけで無鉄砲な将鷹、
そして何が正解なのかも自分では分からず暗中模索を続ける迷いの胸中の若竹・・・
どのキャラも思春期の穴にハマっているようなキャラクターたちばかりなのは多分作為的なものかと思われます
二人の関係描写や各々の片想いの行方と同時に「青春の機微」も同時に描こうとしているのを感じられて
その意味でも深みを感じるような内容になってました
景虎はおてんばなだけじゃなく、親との確執も発生しましたし
そういう思春期全般のあれやこれをあまさず拾おう、という志の高さを感じます
なので、ラブコメとしての期待と同時に思春期ものとしての期待も同時に持てる所が益々好きですね
今後スズメというキャラクターがどういう変遷を遂げていくのか、
将鷹にもきっと悩みがあるだろうし
他キャラの恋愛に関しても微妙に気になってたり・・・
若竹が最終的に高校問題に関してどういう決断を下すのかも中々楽しみですし
そういう猶予期間、モラトリアムのモヤモヤだったりちょっと晴れた時の美しさだったり、
一歩一歩手探りで成長していく感覚が恐らくこの漫画のもう一つの売りなんだと個人的には思いました。

加えて、美々や将鷹の存在に良い影響を与えてもらって
若竹が辛い恋を健気に選んで、自分の「好き」を貫き通したあの結果に関しては
その事実だけでちょっと涙が出そうなくらいグッと来てしまいました
まだ面と向かっては言えない、
まだ行動に移すほどの勝手さは持てない
だけど、その気持ちを殺さずに守って、尚且つ「好き」という意思もハッキリさせて、、、という
そういう若竹がまた一つ成長出来た姿と景虎がおてんば娘から思い遣りを与えてもらって
少しは他人を思い遣れる子に変化しつつあるというこれまた一種の「成長」もまた
この巻を読んでいて確かに嬉しかった事実の一つでした
二人は今は最高の友達、
でも疎遠から心温まる友情を戻す事が出来た時点でひとつカタルシスを生む事が出来ている気もします。
二人でお忍びの勉強会や景虎の妹が邪測する事で生まれたラブコメっぽい空気も好みでしたし
今後きたるべき二人の遊び回にもまた大きな期待が懸かりますね(笑
景虎の成長に関しては前半がおてんば維持だった分
後半できちっとその片鱗を見せてくれて少し安心した部分もありました
その上である意味不穏な引きがやや気になりますが、今の二人ならきっと乗り越えられるはず。
親の相互関係など気になる要素を多々含みつつ3巻もまた相当に楽しみにしています。
今回もまた少年誌ラブコメの基本から離れた独特の内容にカタルシスもらいました。頑張れ、若竹!













それにしても、ちょっと恋愛関係?みたいに周りに邪測されると
若竹には追い風だろうなあ、って思えて少しニヤニヤしてしまいます(笑
美々ちゃんも景虎の妹もそういう役割的に貢献してやって欲しいですね。
若竹の間接的告白を思いっきり聞いてしまった美々ちゃんのシーンは可哀想だけど笑った。
若竹、不遇だけど男的には格好悪いけど、その姿には感情移入してしまいますね。ある意味カッコいいよ。



食戟のソーマ 5巻/附田祐斗・佐伯俊

2013-12-04 14:45:37 | 漫画(新作)






















附田祐斗・佐伯俊「食戟のソーマ」5巻読了。






















まず巻のサブタイが「躍る料理人」なのが個人的に分かってるなあ、って感じで
その時点で好印象でした(笑 あの回はソーマ史上3本の指に入るくらい好きなエピソードなので。

「食戟のソーマ」は、正直初期から人気自体は安定していたと思います
掲載順は所謂補正期間を抜けてからグンと上昇してたしカラーも連発していた
しかしその状況を更に好転させたのが例の四宮シェフとの対決シリーズだった訳で
あれでハッタリが効いた少年漫画好き、或いは元々のファン以上に
「王道の少年漫画好き」がこぞって反応してくれたのはこの漫画の地位を高く押し上げる結果になった
あの決定打のお陰で今や割と普通に「ソーマいいじゃん」って勧められる空気が出来たのは事実
だけど、この巻で描かれている「それから」の描写もまた、
四宮編に負けないくらいクオリティが高いんですよね。

あの四宮編は田所ちゃんの成長と、創真の少年誌主人公としての覚醒を中心に描かれてましたが
この巻で描かれているのは創真自身の成長ですね。
田所ちゃんに至らぬ点(勇気、踏ん切りのなさ)があったように
創真もまた完璧ではないし大衆食堂の出身、という設定自体が彼の足を引っ張る結果にもなった
創真は初期こそ無双系の俺つえー主人公でありましたがこの巻以降は徐々に「成長」がテーマになります
それは自分本位だったのに徐々に相手を認めるようになった3巻の時点で芽生えてましたが
この巻で一気に開花していく印象ですね。


で、4巻のあの絶望的な引きの続きが気になってた方も多いと思いますけど
個人的にも驚くくらい地に足の付いた方法論で解決してたのにビックリしました
まず創真がピンチに陥ったのは大衆食堂出身が故にビュッフェに関しては未経験だった
その経験不足による予測の出来なさが失策を招いた結果に
時間が経てば萎んでしまう料理を選んでしまった訳なんですね。つまり見た目の派手さにこだわってしまい
「持続性」に関しての思慮が足りなかった、と。
ここで複線として、
①料理自体は完成度高い
②隣がえりなだから人が賑わっている
という二つの点が後々一気に一つの線に繋がる事になります

創真が解決法として選んだのはその場しのぎの新作でなく、根性論やミラクルを起こすでもなく
ライブクッキング、つまりは派手なパフォーマンスをやってのける事で人を呼び評価を得る方法論
元々完成度が高い、というのは既に提示されてる上にえりなの隣な訳ですから
みんなが注目して手に取ってくれれば即座に消費されていく、という寸法
味だとか見た目とか持続性とかじゃなく
人を惹きつける様な調理の仕方でその内容の素晴らしさを証明した形になった、と

これは本誌を読んだ時も感心したのですが
単行本で一気に読むと益々美しく思える流れで素晴らしかった
作画のスピード感も併せてこのお話も今作屈指のエピソードに仕上がったかなと思ってます。
何よりいつもは不敵な創真の珍しくダウンしたところが新鮮で面白かったのと
それによる「格落ち」を事情を添えて避けてたのもプラスでしたね
それは最後の締めが凄く良かったのも作用してるとは感じるんですけど。
少年漫画はこと「勢い」に頼りがちではありますが、このシリーズはそういう縦(その場)ではなく
横(積み重ね)的な面白さ、地に足の付いた作劇をしっかりと展開出来ていたのが素晴らしかったと思う
この「納得」は個人的には四宮編にも負けないカタルシスを感じられて一気に読んでしまいました

そのカタルシスの決定打になったのが締めの創真のセリフ、
「失敗したっていう「経験」は得た」というシーンですね
今回の創真の選択は明らかに未熟な上に完全な失策であったワケですけど
それを恥じるんじゃなく汚点として捉えるんじゃなく
貴重な「経験」としてこれからに活かさん、とする姿勢は個人的には胸を打たれた、と同時に
この漫画屈指のメッセージ性たりえたんじゃないかなあ・・・とも感じられて大好きなシーンです
創真がどうしてここまで強くなれたのか、その源泉がしっかりと感じられるエピソード
それと同時に彼の「成長」もはっきりと感じさせるエピソードで
今後の活躍が楽しみになる描き方、ラストだったからこそ余計にこのビュッフェ編お気に入りなのかな、と
いつまでもぐじぐじ後悔するよりは、むしろそれを糧として捉えるという美意識。
そういうものを提示してくれた心地良い締めだったかと思います。


あと、細かい点なんですが
アリスが創真をやたら気に掛けてたのも
主人公だから~って理由じゃなく4話の大胆不敵な宣告が理由だったんですよね
これ正直今考えると凄く上手かったなー、というか
宣告をしたのは大衆食堂が小バカにされてる空気感を受けたからこその反抗だと思いますけど
だからこそ踏み台扱いされた人々が創真に食って掛かる「理由」も作れている、という
やっぱりあの4話がこの漫画にもたらしたものは大きかったのかも、なんて
アリスとの触れ合い描写を眺めてたら改めて感じたな
創真が話題の中心になるのが補正じゃないというか
それが自然な流れになってる辺りが附田祐斗の裏の真骨頂なのかな、と。

そんなアリスのキャラクター性は最高ですね
飄々としていて不敵で、でもどこか憎めない可愛らしさもある
言い方は悪いですがツンツン状態のえりなを正しくリファインしたようなキャラ造詣
えりなが苦手な人もアリスは結構な確率で好きになってくれるのでは
えりなに抗う理由もちゃんと付随してるしね(笑

材料切れの為に「一応は」えりなよりも結果は下、というのも
もし材料が切れてなかったら・・・?と想像を掻き立ててくれてそういう部分もまた良いですね
そんな訳で、「憎めない強敵」であるアリスとの直接的な対決が真っ当に楽しみにもなりましたね
それと純粋にアリスの作った料理と作戦自体も面白いと思えるものでした。
彼女のこれからの活躍や立ち位置にも注目して行きたいです。

かなり好みのタイプです(笑
カバー裏のちょっと清楚な姿とオチもまたグッと来させてもらいました。


で、個人的に手応えを感じたビュッフェ編が終わり
その次に校外で商店街の町おこしの為に奮闘する唐揚げ編が始まります
始まります、って言ってもこの巻中でしっかりと終わるものでもあるんですが。
これはまず進退が懸かってない、例え失敗しても創真の境遇自体に変化がないのが分かってるので
それまでの対決や試練と比べると若干緊張感という点に関しては低いかもしれません
逆に言えばその分気楽に読めるようなお話にもなってますね
ラブコメっぽい描写もあり、
創真が意外と人情に熱く人をしっかり観察出来ている事も分かるようなエピソード
そしてこの話の肝は純粋な料理の味でなく客層を意識した品で巻き返しを目論む、という
きちんとそれまでの経験が活かされている点ですね
多分味自体が勝った、って話でなく
客層的により好むものを仕上げられたという話だと思うんです
そういうアプローチと共に相手の意見を尊重し認める姿勢と
割とオーソドックスな小休止に思えて何気に成長の成果を発揮出来ているエピソードでもありますね
ライブクッキングもさり気に取り入れてるところもポイント高し。
完璧にドス黒いポジションで登場したきぬさんが「純粋さ」を取り戻すオチも良かったです
多少毛色は違いますがこれはこれで安定して楽しめたお話だったかなと。

そして、小休止だけでなく十傑の会議の様子をチラ見せしたり
創真の目標に向かう真っ直ぐさを34話で描いたり後々の展開を予測させる複線を撒いたり
選抜に向けての因縁や期待感を煽ったり早くも次の高みに向けての仕込みもゾクゾクと垣間見れます
あとは途中で卓球漫画になったり(笑)
今回もまたすっごく濃ゆくメッセージ性の高い内容に仕上がっていました
今巻はとみに創真が格好良く一段とタフに成長する姿が見れるので、ハッタリ描写好きや
ヒロインの可愛さ、或いは作者買いしてる人以外に純粋な少年漫画ファンにも触れて欲しいな、と。
そう思えるくらいには主人公としての矜持が光っていた新刊でした。
面白かった!















さて、6巻もネタバレになるので控えますがかなり面白い展開が待ってますよ
間の附田祐斗の挿絵も結構こなれてきていて普通に可愛いと思えるレベルになってます(特に倉瀬さん)
倉瀬さんみたいなタイプこそ附田祐斗らしいヒロインなのかもしれないですね。あと田所ちゃんも。
勿論新機軸のキャラ達も大好きですが。

他にちょこちょこと内容に関連したおまけカットも付いてます
郁魅と倉瀬さんの武装した姿での戦いっぷり、正装の一色先輩に驚く創真、
あとはドレス姿でおめかししてるアリスのカットが良かったです。個人的にアリスと田所ちゃん推し!




エゴコロ・トイロ 1巻/林崎文博

2013-11-19 22:10:36 | 漫画(新作)


















林崎文博「エゴコロ♡トイロ」1巻読了。

















この漫画目当てでグランドジャンプPREMIUMを毎号購入するようになりました
そしたら雑誌自体も相当面白くて個人的にもうけものだったんですけど、
実は第1話のラストが雑誌とは違っていて見開き追加と若干の書き直しがあるんですね
そしてその単行本バージョンのが個人的に好きなので雑誌派の方も是非・・・という感じです
巻末にはおまけ漫画も付いていて今作の裏話と、
あとは過去作「つきあってよ!五月ちゃん」の新規イラスト(ラフ)なんかもあります
前作「ぼっちの人魚姫」が大好きだったので方向性は違えどまたこの方の恋愛話が読めて嬉しいですね。

久々に古巣の集英社に凱旋しての王道ラブコメ漫画な訳ですが
以前のようなお気軽なライトHラブコメという訳でもなく
経験が生かされている感じ・・・というか
明らかにその数十年前とも違うし
勿論「VF」とも違うし最近の作品群とも違う
割り切りの良いお色気シーンはそのままに集英社離脱後の作品群に於ける情感だったり
雰囲気漫画的な心地良さをしっかり活かしての王道ラブコメという印象なので
その意味では原点回帰、というよりは
もう一段階上に、原点を活かしつつも今の方法論も活かしてる感じなのが非常に良かったですね
話のギミックは多少違うけど「ぼっちの人魚姫」好きだった自分も楽しめてる感じです。


その王道ラブコメの目玉となるヒロイン勢に関してなんですが
所謂性格やタイプによる個性付け・・・というよりはもっと違う角度から個性を分けている感じです
性格に関して言えば、ダブルヒロイン両方とも健気で素直になれない良い感じの性格で
容姿は勿論違いますけど差異という差異はないように思える
それは記号から外しているんだと感じますが
じゃあどこで差異を付けてるのか、と言えばズバリ体型なんですね。

主人公・透の義妹である麦は豊乳キャラだと思うんですが
そう言い切るにはやや下の方もふくよかでありムッチムチという表現のが似合うようなキャラ
っていうか一歩間違えばぽっちゃりに分類されるんじゃないか?というギリギリのライン
漫画ちっくな痩せグラマーでなくかなり現実ちっくな豊乳として描かれています

一方で、所謂貧乳キャラというレッテルを貼り付けられそうなもみじに関しては
貧乳なんて軽い言葉では済まない位の美しい体型ライン
スレンダーな女性の魅力・・・というものをしっかりと描けている体型描写に仕上がっています
ぶっちゃけ私は麦タイプの方が好きだったんですが
この漫画を読んでいるとスレンダーはスレンダーで最高なんだな、って思える
貧乳などという言葉では形容したくないくらいに痩せ型の女性の美しさがはっきり描かれていて。

要するに、性格や○○タイプという漫画的な個性付けではなく
もっとリアリティを含んだ個性付けをしているのがこの漫画って事ですね
勿論状況に関して言えば漫画らしさは残っていますけど
あまり美化しないそのままのきれいさ・・・みたいなものを感じられるのが良いです
多少下が膨らんでても、物凄くやせ細っていても、それはそれできちんと女性的なんだな、っていう。
恐らくグラマラス派でもスレンダー派でも派じゃない方の魅力に気付ける漫画になっているのでは(笑)。
実際これ読んでスレンダーの良さにちょっと気付いた自分もいたりね。


そのダブルヒロインのグラマーな方の麦は、
あんまり素直になれずに遠回りな言動が多いんですが
その分時折無邪気に笑ってくれたり透に甘えたり、子供らしい態度を取ったりすると
普段も可愛くはあるんですが普段以上にめっちゃ可愛く変化するのがとてもいいですね
正に妹然としたキャラクター・・・って感じの相当の良キャラだと思います

可愛い部分だけじゃなく、透のずさんな対応に不機嫌になったり
いじけたりする表情もまた個人的に可愛く思えます
誰よりも一途で、
そして人間くさい温か味のあるヒロイン
大胆な行動の数々にもラブコメ的にドキドキさせてもらえる最高のヒロインだと思います
個人的にめっちゃ好きなキャラクターです(笑 憤りも理不尽に感じないのが良い。

だけど、もう一人のスレンダーな方のヒロイン、もみじもこれまためっちゃくちゃ可愛いです
この子も素直になれないんだけど、主人公が気付かない部分でさり気に努力してたり
健気な姿勢が男心にグッと来るキャラクターですね
健康的な笑顔と、
時折見せる女性らしい色気
でもウブな部分もまた年不相応でかわいらしい感じ

透は結構常識はずれな部分があるのでたまに彼の態度に付いていけない時もありますが(笑
でもスランプだった時の透を実質支えてくれていたこの子もまた重要な女の子
両方のヒロインに均等に感情移入出来る・・・という点に於いて
とても秀逸な作品だと感じられます
想いの深さがしっかりと伝わって来る描写の数々がとってもいいですね。

ヒロイン達に想われている透は実は少年時代の輝きを失い中で燻ってたんだけど
秘めた実力は確かですし、麦との再会をきっかけにどんどんと男らしさ
頼れる部分を取り戻して行く方向性になっていきます
不安な麦を兄として抱きしめなだめたり
もみじの安否の為に危険を顧みず火中に飛び込むその勇気だったり
燻っている大器、というポジションから少しずつ男らしさを垣間見せていくのが中々良かったです
お互いに支えて、支えられて・・・と役者は揃ってるので後はその変遷をしっかりと描いていくだけ
なので結構オートマティックに各々の恋模様を楽しめる類の漫画になっているかと
ちなみにもう一人透のバイト先の弁当屋に麦以上にむっちりしている熟女ヒロインも存在しています
だから何気にフェチ感に強く訴えかけるラブコメ、という見方も出来そうですね(笑

しっかりした基盤に、各々の体型の良さ、というテーマを反映させている優良ラブコメに仕上がってました
この先の透の選択や麦やもみじのアタックや関係性にも期待が持てる良い具合の1巻目ですね
掲載は青年誌で多少大人向けの要素もありますが少年誌のラブコメ好きにも是非、
といったところでもあります
たまに変態的な場面が出てくるのはご愛嬌、って事で(笑
今個人的に支持したいラブコメ漫画の一つ。














ちなみに先輩であり友人ポジションでもある黒川先生もまた好きですね
彼女は彼女でサバサバとした女性の魅力に溢れています
その友人'sも良いキャラしてたのでまた出番希望(笑
次のグランドジャンプPREMIUMでは表紙&巻頭カラー!って事で人気もちゃんとあるようで安心
各話感想も書いてるので機会があれば是非。そのヒロイン達の造詣と健気さに夢中になれるラブコメです。

ちなみに掲載順も常に高い。「ぼっちの人魚姫」は大体巻末だったので待遇の違いに驚き。