心と神経の哲学/あるいは/脳と精神の哲学

心の哲学と美学、その他なんでもあり

山本貴光・吉川浩満『心脳問題』を買った

2013-08-15 09:28:57 | 脳と心

2004年6月に出版された山本+吉川著『心脳問題 「脳の世紀」を生き抜く』(朝日出版社)をアマゾンのマーケットプレイスで350円で買った。

「脳が分かれば心が分かるのか」をスローガンとしたこの本は、脳科学の限界を「心」の概念を分析しながら論じたものである。

前から概要は知っていたのだが、この本には私の2001年の『脳と精神の哲学 心身問題のアクチュアリティー』(萌書房)の影響が表れているように思えてならない。

少なくとも触発しているだろう。

この本の参考文献表には私の『脳と精神の哲学』は掲載されていないが、山本と吉川のHP『哲学の劇場』だったかどこかに2004年の8月に「『脳と精神の哲学』に続く河村氏による心脳問題の書第二弾」として、その年の6月に出版された『意識の神経哲学』が紹介されていた。

とにかく『心脳問題』は脳をめぐる科学と哲学の対話に大変な波紋を投げかけ、今日まで影響を遺している。

一部には心脳問題は不毛だと主張する人もいるが、脳還元主義は年ごとに勢力を弱め、「心」の概念を脳を超えて自然的世界、環境世界、社会の情報構造へと拡張して理解する傾向が強くなってきている。

これに合わせて脳科学では「社会脳」の概念が重視されてきている。

問題は「心」が脳に還元されない超自然的精神実体だということではない。

そう思われるから、誤解の輪はどんどんひろがるのである。

問題は「社会」と「生活」と「世界の情報構造」というところにある。

「生活世界」である。

「心」はそこに住み着いた生態的現象なのである。

それを脳の神経システムの働きに還元しようとするから、無理が起きる。

心脳問題は、そこに目をつけて、脳を含んだより広大な「生命的情報世界」の中で「脳と心の関係」の再把握を狙っているのである。

まあ、その前に「脳しかない」という能無しの発言を徹底して批判し、同時に「心しかない」という唯識論的主張も粉砕しておかなきゃならないんやけどね。

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