二流大学や三流大学から一流大学や超一流大学の大学院に進学することを学歴ロンダリングという。
この現象は、私が大学を卒業して母校の大学院に進学した1984年頃に既に存在していたが、そのパーセンテイジは低かった。
しかし、前の記事でも書いた大学院重点化と博士量産が始まる1991年以降、大学院進学による学歴ロンダリングは増加していった。
たとえば、地方Fラン私大である八戸工業大学や青森大学から旧帝の東北大大学院に進学するとか、亜細亜大から東大の大学院に進学するとか、京都産業大から京大大学院に進学するのである。
理系、特に工学部では1980年以前からロンダはあった。
特に有名なのは東京理科大で、ここから東大、東工大、筑波大、早大などの大学院に進むものは、昨今計200人にのぼるが、30年前から一定数のロンダが見られた。
しかし、厳密に言うと理科大から東大、東工大の院への進学はロンダとは言えない。
Fランからのそれこそロンダなのである。
大学における学問習得や研究のことを知らない多くの人は、Fラン大学から東大の大学院に進学することに疑念を抱き、インチキだと思いやすい。
東大からですら東大の院に入れない場合があるのに、Fランや二流以下の大学から入れるのか、というわけである。
これは受験偏差値と大学における学問習得の違いが分かってない人の意見である。
大学入学時の学力と大学における学問習得能力は正比例しない。
文系でも理系でも逆転はいつでも可能である。
特に文系はそうである。
私などはもともと旧帝の理学部に入れる地頭があったのに、高校中退後三流私大に入って、そこで猛勉強した。
哲学専攻で理系の素養があり、抜群の読書力があったので、大学→修士→博士→講師と経歴を重ねるうちに、明治クラス、早慶クラス、東大京大クラスをどんどん抜き去って行った。
結局は地頭と学問研究のねばり強さが決めてなのである。
それゆえロンダで頭角を現し、大学や研究所の専任のポストを獲得した二流~Fラン出身者はけっこういる。
しかし、東大や京大や阪大の生え抜き、つまり学部から大学院に進学した者はたしかに優秀である確率が高いであろう。
しかし、100%ではない。
70%ぐらいであり、残りの30%は勤勉で主体性や独創性のあるロンダ組に負けるのだ。
これはロンダせずにCランクの母校の大学院に進学した者と東大京大の生え抜き院生を比較しても言えることである。
受験偏差値と学問研究力は比例しないのである。
私が大学院生のとき東大の院生(生え抜き組)と話した際、同僚の多くが三年で提出しなければならない修士論文が書けずに中退したことを教えてくれた。
受験秀才は、自ら問題を設定し主体的に研究方法を開発したり論文を書いたりすることで挫折する場合がある。
だから、神戸大医出身のジャマナカこと山中教授に京都大医出身のエリート笹井教授が負けたりするのだ。
ただし、1991年以降、総じてロンダが激増したことは博士量産の政策の帰結であり、高学歴ワーキングプアを生み出した元凶だと思う。
やはり、生え抜き組の就職が比較的強く、ロンダ組は弱いのだ。
しかし、生え抜き組も化けの皮がはがれたり、大学生が減って教員のポストが減ったせいで無職化率が上がっていることも事実である。
とにかく、三流大生え抜きでも一流大生え抜きでもロンダでも逆ロンダでも、優れた教授についてきちんと勉強した人が優れた研究者・教育者になりうるのである。
その点では今話題の小保方さんなどからっきしダメだと思う。
もともと早大理工はソニーの創始者に代表されるようなメーカー経営者・管理職養成に強いのであり、研究者養成という点では弱いのである。
しかし、笹井氏をはじめとする研究者として一流の人たちもいいかげんやなー。
小保方さんみたいな世渡り上手が出世して、質実剛健なタイプの人が日の目を見ないのは科学・学問の進歩にすんごく悪影響やと思う。
とにかく、研究費返還して、理研の幹部も責任とって、とくにかく質実剛健な地味で優れた研究者の貧困を救済しなはれ。
どこの研究所でも大学でもそうや。