前にブラック企業について述べたが、最近「過労自殺」に関する本を読み漁っている。
岩波新書の川人博著『過労自殺』は最も入手しやすい良書である。
これは、これまで二、三回読んでいる。
今月の前半にも久しぶりに読み直した。
そして、アマゾンのマーケットプレイスで過労自殺に関する本を新たに二冊買った。
川人博『過労自殺と企業の責任』(旬報社)とストレス疾患労災研究会編『激増する過労自殺』(皓星社)である。
どちらも安く、かつ内容が充実していそうなので買った。
症例が豊富で大変参考になる。
色々な職種の様々な地位、年齢、性別の人の過労自殺に至る過程が紹介されている。
過労死というと底辺の中小企業、零細企業を連想する人も多いと思うが、実はエリート的階層にも及んでいる。
超一流大企業の社員、医者、公務員、教師、研究者などである。
去年の8月に自殺した理化学研究所CDB副所長の笹井芳樹さんも、うつによる過労自殺の一種と言える。
彼についてはこのブログで前にも取り上げた。
言うまでもなく、ブラックな企業や組織が従業員や構成員を過労自殺に追い込むのだが、自殺する本人には共通する性格特徴がある。
それは「うつ病親和性」という性格類型であり、責任感が強い、几帳面、まじめ、内向的、神経質、頼まれると断れない、などの特徴に集約される。
脳の内部のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の調整が、ストレスにさらされるといとも簡単に破たんする、という生理学的面も指摘できる。
「追い込まれたら逃げればいいじゃないか」「無断欠勤して遊べよ」と言いたくなるが、彼らは自分を追い込んでしまうのである。
もちろん悪いのは、自分を追い込んでしまう彼らではなく、彼らを追い込んでしまうブラックな組織とその幹部たちである。
それは振込詐欺において、だまされる人には全く非がなく、だます人が全面的に悪いのと同様である。
しかし、我々の中には人を犠牲にしてでも楽して金を得たいという影の欲望があり、それは容易には消えないのである。