小政

家人が売り子の手伝いに出掛け「お昼ご飯は適当に食べて」と言われ、そうなんだと頷いた。秋になった頃から昼御飯も欠かさず食べる様に成り、今日は何を食べようかと、仕事をしながらほくそ笑む。

近所蕎麦屋に出掛ける。新蕎麦が出ているはずだ。

店に入るとテーブル席に先客が有り、座敷席に座る。久しぶりに中央の座席に座ると店内が広く見え、ゆったりと構えられる。一人で座るのは申し訳の無い気もしてくる。テーブル席は確かに隅っこに追い遣られている様だけど、あれはあれで落ち着いたりする。

末客なので、先客の料理が来なければ来るはずもなく、人の頼んだメニューを聞くともなしに聞いていた。「天ぷらそばが出来ました」と看板娘がテーブルに運んでいる。
急に寒くなったので、あったかい蕎麦も良いなあと思う。以前は蕎麦が伸びるからと冷たい蕎麦しか食べなかったのだけど、カレー南蛮そばを時々食べる様になってから、柔らかくなった蕎麦もそれなりに美味しいと思えるようになってきていた。

天ぷらそばを食べようとしたご婦人の御連れの方が「新蕎麦が出回っている時に天ぷらそばを食べるのは、愚の骨頂だ。とテレビで言っていた」と話し始めた。それを今言わなくても良いのにと思いながら、自分もあんな事を言ったりしているかもしれないと自戒を込めた。

先日この店に来た時に「小政（写真）」を注文しようと思ったのだけれど、後から来た家族連れの多人数のお客が「小政」を注文しようとしているのを聞き、先に注文するのを遠慮してたのだった。

今回改めて食べて見ると、美味しい。特にゴマの掛かったご飯がおいしい。蕎麦は冷たい蕎麦を頼んだ。かけになっていて、冷たい汁がそこの方に有った。これはよくカンマして（かき回して）から食べる方が美味しい。

道路の拡幅工事がこの店の近くまで来ており、この先どうなるのだろうかと気になる。収用を期に、移転してしまいそうだ。店の駐車場が無くなってしまったら、客商売は成り立たない。遅々として進まない公共事業は、こんな時はなんだかホッとする。