ヘルゲ・リエンの新譜は心待ちにしていますが、今回は驚いた、タイトルが“懐かしい”でその1曲目はまるで日本のポップ・メロディ、これがタイトル通り心を懐かしい世界に連れて行ってしまうのです。
私は聞き出してすぐに井上陽水の「少年時代」を思い浮かべていました。
「 夏が過ぎ風あざみ 誰のあこがれに さまよう
青空に残された 私の心は 夏模様
夏祭り宵かがり 胸のたかなりに あわせて
八月は夢花火 私の心は 夏模様 」
ジャケットのジオラマと相俟って、毎年夏休みに行く海岸の町に思いでがふっとよぎるのです。
1人裏山に登り向こう側にみた海の輝き、斜面に咲く百合の花、そこで頬をつたう風、誰もがきっともっている“懐かしい”を見事に引き出してくれたのです。
1曲目の強い印象に2曲目リズミックになっているの頭はそちらは拒否して流れます。
3曲目になるとこれは内省的な日本ではないスウェーデンの森に迷い込んだような、前作「HELLO TROLL」につながる世界です。
5曲目アルコと重いピアノのハーモニーが、ただ淡い懐かしの世界だけでない、けじめをつけなければいけない過去も必ずあるという曲。(勝手ですが)
7曲目ベースのソロがあり、ドラムスもピアノを常にサポートする効いたリズムで聴き応えのある演奏です。
8曲目は現代的なインプロだけのような短いテーマの曲で9曲目がベースで始まって8曲目のテーマを定着させたような演奏です。
10曲目が題名“Living In Different Lives”でも感じられるように再び日本にもどったような曲、最初と最後の曲と間に挟まった曲が、こちらの感じ方に落差を起こさせるのは私が日本人だからかも知れません。
間の曲が決してつまらないわけではありませんが、1曲目だけでとても嬉しい気持ちです。
NATSUKASII / HELGE LIEN
Helge Lien (piano)
Frode Berg (bass)
Knut Aalefjaer (drums)
1. Natsukashii
2. Afrikapolka
3. Bon Tempi
4. E
5. Sceadu
6. Meles Meles
7. Hymne (Til Jarl Åsvik)
8. Umbigada
9. Small No Need
10. Living In Different Lives