JAZZ最中

考えてみればJAZZばかり聞いてきた。いまもJAZZ最中。

見えざる物となって Evidence of Things Unseen / Michael Cain

2013-01-27 14:48:07 | 聞いてますCDいいと思う


変な勘違いからかったアルバム「Indira」がとてもよかったので、以後目につくと買うようになったMichael Cainのアルバムがあったので拾ってきました。

録音は持っているアルバムの中で一番古く、1994年、松本市立The Harmony Hallでの直接CDRへのワン・ポイント・デジタル録音です。
1990年にNYに移ってCDデヴューして4年後、とても勢いのつき始めたころの作品ではないでしょうか。

1曲目、ラグのスケールをベースにしたような演奏から始まります。

このアルバムのタイトルが「Evidence of Things Unseen」、アメリカの黒人作家ジェイムズ・ボールドウィンが晩年、アトランタで起きた連続幼児殺人事件について書いた作品のタイトルです。
ボールドウィンは昔「山にのぼりて告げよ」という自伝小説が評判でしたが、ケインのヒーロだそうで、アルバムのライナー・ノーツにこのタイトルについてかなり難しく、そして自身を露呈するほどに書いていることが、聞く側の聴き方を改めさせるほど興味深いものです。

2曲目は静かな語りかけの曲、一寸短い。
3曲目、音を散りばめたストラクチャルな構成力のある演奏です。

マイケル・ケインが書いたライナー・ノートを小林満理子、山本恒隆両氏が訳しているので、抜き書きをしてみます。

ジェイムズ・ボールドウィンを僕のヒーローだと語り「~彼の紡ぎだす文章は、情熱と叡智、勇気、そして率直さや洞察力に富んでいる。それはぼくの見えざる魂の在りかを照らしだす。~『見えざる物の証明』というタイトルはぼくがつねづね関心を懐いていることや、また知悉していることごとのなかの、ある特殊な関係を解きあかしているように思われるのだ。~」

そして彼は自身のアイデンティーについ語る「~ぼくは先に黒人だと述べたけれど、それは必ずしも正確な表現ではない。すなわち、母は白人とネイティヴ・アメリカンの混血であり、父親の方が黒人なのだ。~友人とことなる容姿に気がつくまで、ぼくは疑いも知らずに白人の世界に所属していた。
ぼくはつねに自分が部外者だという意識をもつようにいたった。むろん、ぼくは様々な集団の一部である。しかし、そのどれに対しても帰属感をもっていないのだ。~奇妙にきこえるかもしれないが、ぼくは黒人であることを学習したのだ。」

4曲目はバラッドといってよいかも、スケールとかコードのつらなりとかを考えるのでなく、心のおもむくままに弾いているように感じます。

ノートに綴ったことが、このアルバムにどう関わりがあるかを語ります。「ノートに書き綴ってきたあれこれは、レコーディングをしているあいだの、ぼくのこころをとらえていたことなのだ。おかげでこのアルバムは、音楽を通じてぼくの人生の真実を解きあかす、最初のものとなった。~あとからその演奏をきいてみると~そこには驚くべき内的風景が展開されている。~ぼくの音楽はこれまで典型的なジャズとして分類されてきたが、その枠気味をから解放されるだろう。~このアルバムを発表する勇気を得るまでには一年という月日を必要とした。~赤裸な本音の世界が惜しみなく転載されている。それを聴いてほしいと思う。このコレクションは、ぼくの見えざるものの証明なのである。」小林満理子、山本恒隆訳 

5曲目“kobe”は厳粛な感じの曲で、神戸・淡路震災をおもわせるが、これはその前年、なんだか予感めいている。
6曲目はクラシカルなはじまりから、フリー、7曲目はゴスペルがすこし入った感じ。
8曲目は静かな美しい曲。

学んだという黒人らしさや、クラシックの素養、そしてこの時点でケインが感じている焦燥感までが見事につたわってくる。
それはノートを読んだ後、聞く側のこちらも立ち位置を消して、素直にみえざる物の証を求めたからだと思う。

こうゆうライナーノートは結構貴重なので、抜粋させてもらいました。

Evidence of Things Unseen / Michel Cain

Michel Cain piano


1 Evidence of Things Unseen
2 All My Life
3 Maria Becomes Rotwang's Prisoner
4 Home Continuity Evidence of Things Unseen
5 Kobe
6 Maria and Rotwang Struggle
7 Maria Dances Her Freedom
8 Memoria
9 Talk Speak
コメント
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