ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

ナタリー・ダンカン@ビルボードライヴ東京

2013-02-21 16:28:33 | SSW
NATALIE DUNCAN / DEVIL IN ME

2月18日、ビルボードライヴ東京にてナタリー・ダンカンを観てまいりました! 昨年デビューしたばかりですが、既にポスト・エイミー・ワインハウスの最右翼などと評されたりもする、注目の英黒人女性シンガー・ソング・ライターです。デビュー・アルバムがいきなりジョー・ヘンリーのプロデュースですからね。その事実一つだけで彼女の才能が保証されたようなものですが、実際に彼女の歌声を聴けば尚更なのです。日本ではつい先日その1stアルバムがリリースされたばかり。そんなタイミングでの来日です。私が観たのは2ndショー。整理番号1番のかぶりつきでした。

ナタリー・ダンカンはステージ向かって左端のグランドピアノに向かって腰掛ける。その右隣からギタリストのトム・ヴァラル 、ベーシストのヘンリー・ガイ、バック・コーラス&鉄琴?の女性ハティ・ホワイトヘッド、そして右端のドラムスにグリン・ダニエルズという布陣。アルバム「Devil In Me」にも一部参加しているバック・バンドですね。

1曲目は「Devil In Me」。私この曲大好きなんです。この曲を生で聴きたいがためにライヴを観に来たと言っても過言ではない程。何と言ってもナタリーの歌声ですよ! 冒頭のアカペラ部分から彼女のドロリとした黒くジャジーなフィーリングにグイグイ引き込まれる。初めて聴いた時の衝撃そのままの歌声! そしてピアノが奏でる暗く物悲しい旋律。内省的な情感を研ぎ澄ませつつ「Devil」という言葉を吐く度に徐々に得体の知れないエモーションを放出していくかのようなナタリー。ピアノの真横に座った私はそんな彼女の姿にただただ見とれるばかりでした。

1st作「DEVIL IN ME」収録曲を中心に進むセットリスト。ナタリーのハスキーでありながらふくよかな歌声のもつ苦みや、抑制された感情表現の節々からほとばしる刺すようなエモーションが辺りの空気を支配していく。バック・バンドの演奏も独特のスイート&ダークなムードで貫かれていて凄く良い。実は「DEVIL IN ME」の中でこのバンドがバックを務めているのは2曲だけ。しかもその2曲とも作品中で最もオルタナ的な質感を持った曲だったので、このバンドでのライヴはCD以上にクロスオーバーな感じになるのでは?と、ルーツ好きの私にはちょっぴり不安だったりもしたんです。ですがそのシンプルな演奏はまるで闇夜に曲の輪郭を浮かび上げるようなシックなジャズ感を感じさせ、そのサウンドは柔らかくナタリーの歌声に溶け込むようでした。正直、ジョン・スミスやグレッグ・コーエンを擁したジョー・ヘンリーによるスタジオ録音よりも私はこちらの方が断然好み。CDでは若干散漫に感じられた個性的な楽曲群も、この日のライヴでははっきりと一つの世界観を描き出していました。

その世界観はナタリーの持つ一種独特のダークネスであり、それを際立たせるバンドによる一種の箱庭のような美しさ。彼女は曲間に少しMCを挟む意外、淡々と歌い続けます。歌っている最中は客席の方もほとんど見てなかったんじゃないでしょうか。まあ、ピアノが横向きに置かれていますから仕方ないんですけどね。もちろんバンドとの馴れ合いのようなお遊びもなければ、観客に安っぽい一体感を煽ることもない。まあ、手拍子ぐらいはありましたけど。ただただ、ひたむきな歌と演奏があるだけ。しかしそこには何者も不可侵な彼女達の世界がある。いや、新人さんによる言葉の通じない国でのライヴと言うのはいたってこういうものかもしれません。ですがそれが返ってナタリー・ダンカンというシンガーの凄みを浮き彫りにした感じでしょうか。

どこのジャンルにも括られない現代的な感覚の持ち主ながら、いにしえのジャズやブルースに秘められた魔力を持っている希有なシンガーであることは間違いないでしょう! 2nd以降の活躍が楽しみです。個人的にはこの日のライヴのような路線、もしくはもっと黒い方へ行ってくれると嬉しいんですけどね~。だいたい、そういう期待って裏切られるんですよね…。



この日のセットリスト↓

01. Devil In Me
02. End
03. Lonely Child
04. Sky Is Falling
05. Songbird
06. Black Thorn
07. Been Alone Too Long
08. Old Rock
09. Brother Forgive Me
10. Find Me A Home
11. Grace
12. ???(Hold Your Head)
13. Keep Her Smiling
14. Became So Sweet
------------------------
15. Uncomfortable Silence


ナタリー・ダンカンの足下にあったセットリストには「Old Rock」の後に「Pick Me Up Bar」が記されてましたが、私が観た回では多分やりませんでした。(既に記憶が曖昧ではありますが…)。「Devil In Me」はもちろん、「Lonely Child」、「Sky Is Falling」、「Find Me A Home」、「Keep Her Smiling」など、アルバム「DEVIL IN ME」収録曲は味わい深いものがありました。そして唯一のアップテンポ曲「Became So Sweet」はCDよりさらにスピードを上げ、ナタリーが早口で歌う切れ味はリズム&ブルース的で格好良かったです! あと知らない曲も結構あったんですけど、調べてみたらそのほとんどがデラックスエディションもしくは日本盤のボーナストラックとして納められている曲でした。ですが12曲目だけは未発表の新曲のようです。“ソウルサーチャー”吉岡正晴さんのツイッターによりますと「Hold Your Head」という曲だそうです。そう言えば「ホ~ジョ~ヘ~」っていうサビが印象に残っています。


*写真は終演後にサインを頂いた「DEVIL IN ME」。黒いマジックが背景と混じって見づらいですけどね…。