1月31日、ビルボードライヴ東京にて、ミーターズ・エクスペリエンスを観てまいりました。ミーターズの伝説的ギタリスト、レオ・ノッセンテリを中心にしたスーパー・ファンク・バンドです。私は最前列ど真ん中のテーブル、椅子で数えると前から2列目。レオ・ノッセンテリの目の前の席に座りました。
開演予定時刻を数分過ぎてステージに現れたのは首領レオ・ノッセンテリ(g)を中心に、スタントン・ムーア(ds)、ビル・ディケンズ(b)、CRグルーヴァー(key)、スティーヴ・ペリルー(per)の5人。間近で見るレオ・ノッセンテリはその体格も含めなかなかの迫力。そしてドラム・セットの奥に腰掛けるスタントン・ムーア。もちろんギャラクティックのあのスタントン・ムーアです。1曲目、いきなりミーターズの名曲「 You've Got To Change(You've Got To Reform)」。私がギターアンプの目の前に居たせいか、とにかくレオ・ノッセンテリのギターの音がでかいでかい。アンプ直でビンビンに響いてくる。そしてそのレオが弾くギター・リフのタイム感と言うかフィーリングが堪らない。ねっとりともっちゃりと、まさにミーターズのノリ。その独特なグルーヴそのままにキメのギター・ブレイクも炸裂! もちろんスタントン・ムーアのドラムも良い! レオのバックでスタントン・ムーアがミーターズ曲を叩くというのもなんか感慨深いものがありますよね~。
この2人のコンビネーションがさらに濃密グルーヴを醸したのが「Cardova」。ミーターズの1st作収録曲。いわゆる初期ミーターズの肝である“間”を活かしたファンクです。タメの効いたスタントンのドラミングに絡むレオのギター・リフ。骨格だけでディープなグルーヴを生み出す、これぞニューオーリンズ・ファンクですよ! ベースのビル・ディケンズも流石の職人振り。7弦ベースを駆使するスラップ・ベースの巨人ですが、正直、ミーターズのジョージ・ポーター・ジュニアとはあまりにもタイプが違うのではないか?と思い心配していたんですが、これはあくまでもミーターズではなくミーターズ・エクスペリエンスですからね。彼の存在こそがミーターズとは違うモンスター・バンドを演出していたように思いました。そして切れ目無く初期ミーターズの代名詞「Cissy Strut」へと至福のリレー。やっぱりレオ・ノッセンテリのギターの存在感が強烈。もう言ってしまいますよ、彼こそミーターズです!!
実は私にとってのミーターズのファンクネスって、やっぱりジガブーとジョージのリズム隊こそっていう印象があったんですよね~。ちなみに私がレオ・ノッセンテリを初めて生で見たのは93年にミーターズが初来日した時で、その時のレオに抱いた印象はやたら弾き過ぎていて、あまりミーターズらしく無いな~というものでした。いやはや、あの頃の私はレオのギターを解っていませんでした…。もちろん今回も弾きまくってましたよ。ミーターズ曲もジャム・バンド的な展開になり、レオも曲想から逸脱したようなフリーキーなソロを決めまくってました。ですがそんなソロも含めて、レオの弾くギターに内包された独特のフィーリング、特にギター・リフにおけるネチネチとしたグルーヴ感は、まさにミーターズ!いや、これこそミーターズ!!と叫びたいぐらいでした。しかもアンプ直の爆音ですからね。もう浴びるようでしたよ。
しかし今回はミーターズ・エクスペリエンスです。レオ以外のメンバーも見せてくれます。「Cissy Strut」で気を吐いたのはスタントン・ムーア。彼のドラムはファンキーと言う以上に歌心がありますよね。この曲の後半、単独ドラム・ソロに雪崩れ込みましたが、これがまた最高でした。別に派手なことはしませんよ。あくまでも素人目線の感想ですけどね、いたってオーセンティックな印象。ですが人間味溢れる抑揚があって、歌心を感じさせてくれるんですよ。叩いてる時のエモーショナルな表情もまたチャーミング。それも含めて彼のドラミングには妙に引き込まれますね。
またオルガンを弾くCRグルーヴァーも地味ながら良い仕事してましたね。この人は元々はアトランタのサザン・ロック・バンド、OUTFORMATIONなどジャム・バンド界隈で鳴らしていた方だそうで、現在はニューオーリンズで活躍している鍵盤奏者です。レオ・ノッセンテリを始め数々のニューオーリンズ・レジェンドのバックを務めているようですが、近年はラジエイターズのReggie Scanlan(b)、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドのJake Eckert(g)、ネヴィル・ブラザーズのWillie Green(ds)達とTHE NEW ORLEANS SUSPECTSというバンドを結成し、昨年デビュー・アルバムもリリースしているようなので、今後、さらに注目を浴びる逸材かもしれませんね。
さて、いきなりのミーターズ3連発に続き、ここで2人のファンク・レジェンドが紹介される。1人はジェイムス・ブラウンのバックを支えたトロンボーン奏者、フレッド・ウェスリー!! もう一人はP-FUNK軍団の名物鍵盤奏者バーニー・ウォーレル!! 彼らの登場で場内の熱気がまた上がる。もうこうなっちゃうとステージ上の誰を見れば良いか分らない状態。まずはフレッドをフューチャーしてJB'Sの「Pass the Peas」。フレッドはいつも通りに伝家の宝刀なトロンボーン・フレーズをファンキーに繰り出します。ですがレオのカッティングがどうにもこうにもミーターズなノリでまったくJBファンクになりません! でもそれがミーターズ・エクスペリエンス。続いてフレッドの18番「House Party」。お馴染みの “パーティ!パーティ!” というコール&レスポンスで盛り上がる。途中、フレッドは時計を見て「あ、もう僕、時間だから帰らなくっちゃ」って感じで立ち上がり、それをレオが「いやいや、ちょっと待ってくれよ」的に引き止めるような一幕があったんですけど、その時のフレッドの困った顔が可愛かったです。フレッドってホント楽しい人ですね。
それにしてもフレッド・ウェスリーとレオ・ノッセンテリが並んでプレイするステージ、感激でしたね! 93年にミーターズとJBホーンズの共演ライヴ盤がリリースされ、私も大好きな両雄の合流に興奮したものですが、それを思い出させられました。私にとっては夢の共演。しかもここで鍵盤を弾いてるのはバーニーウォーレルですから! P-FUNKのエッセンスも入っちゃってます。(フレッド・ウェスリーもP-FUNKですけどね)。
さて、そのバーニーがウニョウニョとキーボード・ソロを弾き始めると、会場の空気もまた一段と密度が上がる感じ。ゴスペルっぽいオルガン・ソロにシフトし、そのままファンカデリックの「Red Hot Mama」へ。もちろん歌うはバーニー様。“Red hot mama from Louisiana!” ですからね。その辺を意識した選曲でしょうか? この曲ではビル・ディケンズのベース・ソロがあったんですが、これがまた強力でした。これが7弦ベースの音なのか、それともエフェクトを効かせてるのか?もうほとんどギターソロ。しかもソロを弾きながら2階席まで上がっていき会場を一周。観客への激しいアピールもあって盛り上がる盛り上がる。あの時の彼はまさにヒーローでした。
本編ラストは P-FUNKが誇るファンクの代名詞「We Want the Funk」で大団円。結局、JBファンクもP-FUNKも全て爆音ミーターズなノリで弾き倒したレオ・ノッセンテリでした。このアクの強さ、自己主張の強さ、まさにワン&オンリーの個性です!
ステージを去りかけたメンバー達ですが、鳴り止まない拍手にまた戻ってくる。そしてスタントン・ムーアが叩き始めたビートは「Hey Pocky A-Way」ですよ! キター!!って感じですが、そのビートに合わせるレオのチャカチャカしたカッティング!! まさに「Hey Pocky A-Way」!! これまで色々なライヴで生「Hey Pocky A-Way」を聴いてきました。例えばネヴィル・ブラザーズとか、シリル・ネヴィルのソロとか、ファンキー・ミーターズとか。ですがこのレオのカッティングを聞いた瞬間が一番しっくりきましたね。これぞ本家ですよ! やっぱりミーターズのグルーヴに果たしたレオの役割って言うのは半端無いなと実感させられましたね。私の中でのレオ・ノッセンテリの株が急上昇です!
最後はジャラジャラしたネックレスをメンバー達が観客達に投げまくってマルディグラ的な盛り上がりで終了。およそ1時間半のファンク絵巻でした。
この日の2ndショー、セットリスト↓
1. You've Got To Change(You've Got To Reform)
2. Cardova
3. Cissy Strut
4. Pass the Peas
5. House Party
6. Red Hot Mama
7. We Want the Funk
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8. Hey Pocky A-Way
ちなみに、私が見た日の1stショーがフジテレビNEXTで生中継されていました。私も録画して帰宅後ゆっくり鑑賞したのですが、印象がまるで違います。何が違うかって、レオ・ノッセンテリが弾くギターの音量がちょうど良いんです…。流石はライン録り!って思いましたが、なんかつまんないんですよね~。実際の会場、少なくとも私が観た位置では、全ての楽器の音量より桁違いにレオの音がでかかったんです。バッキングしててもレオの音が一番でかいんです。ヴォーカルよりも、他の人のソロよりも。初めは流石にこの音量バランスは酷いんじゃないか?と思いましたが、聴いてるうちにレオのグルーヴに飲み込まれていくんです。そして全てを自分流に弾き倒す彼の我の強さにやられまくったのです。アンプの目の前と言う、音量バランス最悪の席に座ったがために、返ってレオの凄みを味わってしまったのかもしれません…。まあ、何はともあれレオ・ノッセンテリ、決して器用なタイプのギタリストではありませんが、ニューオーリンズが生んだ怪物の一人と言って間違いないでしょう。天晴でした!!
さて、ここからは恒例のサイン自慢です。今回は出演メンバー全員によるサイン会という大盤振る舞い。私もグッズ売り場で買ったレオ・ノッセンテリの写真にサインして頂きました(写真上)。もうどれが誰のだか分らない感じですが、みんながレオの腕に入れ墨の如くサインをしていく中、一人余白に書いてくれたのはフレッド・ウェスリーです。
FRED WESLEY / FULL CIRCLE
こちらは私が持参したフレッド・ウェスリーの99年作「FULL CIRCLE」。私がこのジャケットをフレッドに渡すと、彼は隣に居たバーニー・ウォーレルにそれを見せ、クレジット欄を見ながら何やら2人で盛り上がってる。サイン会そっちのけな感じで…。もちろん英語の分らない私も蚊帳の外。私は単純にサインを頂くのに良い色目のジャケを選んで持って来ただけだったのですが、迂闊でした、このアルバムにはバーニー・ウォーレルも参加していたんですね~。すっかり忘れていました…。
LEO NOCENTELLI / LIVE IN SANFRANCISCO
本日の主役、レオ・ノッセンテリにも単独でサインを頂きました。
STANTON MOORE / GROOVE ALCHEMY
最後はスタントン・ムーア。この時もこのアルバムをスタントンに渡すと、彼は隣に居たビル・ディケンズにそれを見せ、なにやら説明し出しちゃって、なんか2人で盛り上がってる。もちろん私は蚊帳の外でその話が終わるのを待っている…。とは言え私が持って来たアルバムで盛り上がってくれるのは嬉しいですけどね~! でも私の後ろに並んでいた方々、妙に時間かかっちゃってごめんなさいね。