第7位
GIL SCOTT-HERON / I'M NEW HERE
ソウル界の吟遊詩人ギル・スコット・ヘロン。13年振りとなる最新オリジナル・アルバム。ストリングスをバックにしたオープニングのポエトリー・リーディングから、デジタルなビートの鳴りに力強い歌唱が絡む「Me And The Devil」へ。なんとロバート・ジョンソンのカヴァーですよ! ロバジョンをこんな風に歌うとは! さらに「Your Soul And Mine」などヘヴィなリズムにドロリとした朗読が乗るダークな質感は下のトリッキーにも通じる世界。一方、アコギをバックに優しく呟くように歌い語る「I'm New Here」、ボーナス・トラックながらジャズ・ピアノをバックにスキャットまで披露するその名も「Is That Jazz」など一筋縄では行かない。ハイライトはピアノとシンフォニーをバックにした「I'll Take Care Of You」でしょう。歌詞はラヴ・ソングのようでもありますが、その歌声には絶望感のような嘆きが濃厚。アルバム全体を貫く世界観は、私のような凡人にはなかなか分かりにくいですが、限りなくディープなその音像と声には、何故か心をえぐられる。手拍子を中心にしたプリミティヴなリズムにざらついた声、そこに電子音と女性コーラスが絡む「New York Is Killing Me」も強力。レジェンドでありながら、これ程までに刺激的な作品を現代に落とすギル・スコット・ヘロン、彼もまた怪物。
第8位
TRICKY / MIXED RACE
トリップ・ホップ界の寵児トリッキー。彼こそ現在のブルースマンだ!と本気で思っていたりするところが「ルーツな日記」流。だからと言ってブルース・ファンの皆様、トリッキーってブルースなの?って思わないでくださいね、全然ブルースではないですから…。とは言え、デビュー以来、混沌とした魔力的なサウンドを打ち立ててきたトリッキーですが、今作ではよりルーツ的な方向へ魔力を求めてきたように感じます。サン・ハウス辺りのミシシッピ臭が香る「Every Day」、トリッキー自身が“俺流のジャズ・ソング”と語る「Early Bird」、アルジェリア音楽ライのミュージシャンを招いた「Hakim」、呪術的ヴォーカルと緩く跳ねるリズムが不気味なスカ曲「Come To Me」など。ブラックな源流と先鋭が混ざり合いながらドロドロとしたダークネスが流れてきます。女性シンガーのフランキー・ライリーも良いですし、そこかしこでガレージな異臭を放つギターと鄙びたホーンも秀逸。さらに「UK Jamaican」のようなエレクトロなダンス・ミュージックもありますが、何となくローウェル・フルスン辺りのファンク・ブルースを想起させられなくもない。エコー・マイノットの「Murder Weapon」も元を辿れば「Peter Gunn Theme」ですしね。本物のダーク、しかしポップでもある、そしてクール、さらにスウィート!
第9位
T-MODEL FORD / THE LADIES MAN
97年にかのファット・ポッサムから、歪んだエレキ・ギターをぶいぶい言わせながらデビューしたミシシッピの怪物T-モデル・フォード。そのデビュー時で既に70代後半の爺さんでしたが、その爆裂振りはいったい何所から見つけてきたの?というインパクト絶大でした。今作はそのT-モデル・フォードによる全編アコースティック作品。T-モデルはディストーションの鎧を脱いでも本物でした。リアル・ブルースの極致。アルバムの完成度などは無意味に思える程、ただただ素のブルースがあります。シンプルだからこそ、かえってT-モデルから滲み出るようなディープな汁を感じることが出来ます。1曲目の「Chicken Head Man」なんて同じようなギター・フレーズが延々続く感じなんですが、その鈍く曇ったような音色と深く吟ずるようなヴォーカルには、「ミシシッピ・ブルースってトランス・ミュージックなんだな」と再認識させられます。ほとんど一発取り的なリラックスした雰囲気なれど、「Two Trains」「I Love You Baby」「My Babe」「That's Alright」など、生々しくも魔力的なブルースの連続。T-モデルによる唸り声もディープ! 聴けば聴く程ハマっていく…。
第10位
THE HOLMES BROTHERS / FEED MY SOUL
ホームズ兄弟を中心にしたゴスペル・ソウル・トリオの最新作。前作では洗練されたオーガニックな開放感を感じさせてくれましたが、今作は初期に戻ったかのようなベタなノリと言いますか、ベタベタな感じが堪りませんね。3人の醸すこの感じ、これぞホームズ・ブラザーズですよ! グルーヴィーなオープニング曲「Dark Cloud」からグッと引き込まれます。そして「Living Well Is The Best Revenge」「Edge Of The Ledge」「Put My Foot Down」などオリジナルのミドル・ナンバーが最高ですね。人懐っこい温もりと粘りを持ったリズム、滋味に溢れる三人のヴォーカル、なんか聴いてて顔がほころんじゃいます。そして「Feed My Soul」や「I Saw Your Face」、「Pledging My Love」といったスロー・ナンバーの素晴らしさは言わずもがな。「Pledging My Love」なんて色々な人に歌い継がれる大スタンダードですが、飾り気の無いしっとりとしたアレンジと、ソウルフルなウェンデル・ホームスの歌が良いですね。カヴァーと言えば、ビートルズの「I'll Be Back」をちょっと変わったアレンジで仕上げる辺りかなりユニーク。そしてラストを締めるゴスペル曲「Take Me Away」が滲みます。
GIL SCOTT-HERON / I'M NEW HERE
ソウル界の吟遊詩人ギル・スコット・ヘロン。13年振りとなる最新オリジナル・アルバム。ストリングスをバックにしたオープニングのポエトリー・リーディングから、デジタルなビートの鳴りに力強い歌唱が絡む「Me And The Devil」へ。なんとロバート・ジョンソンのカヴァーですよ! ロバジョンをこんな風に歌うとは! さらに「Your Soul And Mine」などヘヴィなリズムにドロリとした朗読が乗るダークな質感は下のトリッキーにも通じる世界。一方、アコギをバックに優しく呟くように歌い語る「I'm New Here」、ボーナス・トラックながらジャズ・ピアノをバックにスキャットまで披露するその名も「Is That Jazz」など一筋縄では行かない。ハイライトはピアノとシンフォニーをバックにした「I'll Take Care Of You」でしょう。歌詞はラヴ・ソングのようでもありますが、その歌声には絶望感のような嘆きが濃厚。アルバム全体を貫く世界観は、私のような凡人にはなかなか分かりにくいですが、限りなくディープなその音像と声には、何故か心をえぐられる。手拍子を中心にしたプリミティヴなリズムにざらついた声、そこに電子音と女性コーラスが絡む「New York Is Killing Me」も強力。レジェンドでありながら、これ程までに刺激的な作品を現代に落とすギル・スコット・ヘロン、彼もまた怪物。
第8位
TRICKY / MIXED RACE
トリップ・ホップ界の寵児トリッキー。彼こそ現在のブルースマンだ!と本気で思っていたりするところが「ルーツな日記」流。だからと言ってブルース・ファンの皆様、トリッキーってブルースなの?って思わないでくださいね、全然ブルースではないですから…。とは言え、デビュー以来、混沌とした魔力的なサウンドを打ち立ててきたトリッキーですが、今作ではよりルーツ的な方向へ魔力を求めてきたように感じます。サン・ハウス辺りのミシシッピ臭が香る「Every Day」、トリッキー自身が“俺流のジャズ・ソング”と語る「Early Bird」、アルジェリア音楽ライのミュージシャンを招いた「Hakim」、呪術的ヴォーカルと緩く跳ねるリズムが不気味なスカ曲「Come To Me」など。ブラックな源流と先鋭が混ざり合いながらドロドロとしたダークネスが流れてきます。女性シンガーのフランキー・ライリーも良いですし、そこかしこでガレージな異臭を放つギターと鄙びたホーンも秀逸。さらに「UK Jamaican」のようなエレクトロなダンス・ミュージックもありますが、何となくローウェル・フルスン辺りのファンク・ブルースを想起させられなくもない。エコー・マイノットの「Murder Weapon」も元を辿れば「Peter Gunn Theme」ですしね。本物のダーク、しかしポップでもある、そしてクール、さらにスウィート!
第9位
T-MODEL FORD / THE LADIES MAN
97年にかのファット・ポッサムから、歪んだエレキ・ギターをぶいぶい言わせながらデビューしたミシシッピの怪物T-モデル・フォード。そのデビュー時で既に70代後半の爺さんでしたが、その爆裂振りはいったい何所から見つけてきたの?というインパクト絶大でした。今作はそのT-モデル・フォードによる全編アコースティック作品。T-モデルはディストーションの鎧を脱いでも本物でした。リアル・ブルースの極致。アルバムの完成度などは無意味に思える程、ただただ素のブルースがあります。シンプルだからこそ、かえってT-モデルから滲み出るようなディープな汁を感じることが出来ます。1曲目の「Chicken Head Man」なんて同じようなギター・フレーズが延々続く感じなんですが、その鈍く曇ったような音色と深く吟ずるようなヴォーカルには、「ミシシッピ・ブルースってトランス・ミュージックなんだな」と再認識させられます。ほとんど一発取り的なリラックスした雰囲気なれど、「Two Trains」「I Love You Baby」「My Babe」「That's Alright」など、生々しくも魔力的なブルースの連続。T-モデルによる唸り声もディープ! 聴けば聴く程ハマっていく…。
第10位
THE HOLMES BROTHERS / FEED MY SOUL
ホームズ兄弟を中心にしたゴスペル・ソウル・トリオの最新作。前作では洗練されたオーガニックな開放感を感じさせてくれましたが、今作は初期に戻ったかのようなベタなノリと言いますか、ベタベタな感じが堪りませんね。3人の醸すこの感じ、これぞホームズ・ブラザーズですよ! グルーヴィーなオープニング曲「Dark Cloud」からグッと引き込まれます。そして「Living Well Is The Best Revenge」「Edge Of The Ledge」「Put My Foot Down」などオリジナルのミドル・ナンバーが最高ですね。人懐っこい温もりと粘りを持ったリズム、滋味に溢れる三人のヴォーカル、なんか聴いてて顔がほころんじゃいます。そして「Feed My Soul」や「I Saw Your Face」、「Pledging My Love」といったスロー・ナンバーの素晴らしさは言わずもがな。「Pledging My Love」なんて色々な人に歌い継がれる大スタンダードですが、飾り気の無いしっとりとしたアレンジと、ソウルフルなウェンデル・ホームスの歌が良いですね。カヴァーと言えば、ビートルズの「I'll Be Back」をちょっと変わったアレンジで仕上げる辺りかなりユニーク。そしてラストを締めるゴスペル曲「Take Me Away」が滲みます。