ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

2010年 天に召された偉人達

2011-01-18 17:46:40 | 2010年総括
SOLOMON BURKE & DE DIJK / HOLD ON TIGHT

悲しいことに、昨年も大勢のアーティスト達が亡くなられました。私の大好きな方達も亡くなられました。そんな訳で、偉大なアーティスト達に敬意を表し、ここに追悼したいと思います。

まずは10月10日に亡くなられたキング・オブ・ソウルことソロモン・バーク。正直ソロモン・バークの訃報にはびっくりしました。だってその数ヶ月前にはウィリー・ミッチェルをプロデュースに向かえた力作「NOTHING'S IMPOSSIBLE」がリリースされ、しかも5月には奇跡の初来日公演まで実現し、大所帯のバック・バンドを率いてダイナミックこの上ないソウル・ショーを見せてくれていたのですから。あの日比谷野音で観たソロモン・バークは一生物のライヴでしたね。で、実はソロモン・バークは「NOTHING'S IMPOSSIBLE」のあともう一枚アルバムを作っていました。それはデ・ダイクというオランダのロック・バンドと共に作った「HOLD ON TIGHT」(写真)です。このアルバムのリリース記念ライヴを行なうため、アムステルダムへ向かう飛行機内で、ソロモン・バークは亡くなられたのです。死因は自然死と発表されました。このデ・ダイクというバンドがどのようなバンドで、キング・ソロモンとどんな関係なのか私にはまったくわからないのですが、ただ一つ言えることは、この「HOLD ON TIGHT」が間違いなく傑作であるということ。バンドの瑞々しくも懐の深い演奏をバックに、近年のソロモン・バークならではの大海原のように大きな歌唱と、円熟の渋みをたっぷりと堪能することが出来ます。それにしてもソロモン・バーク、こんなに元気だったのに…。




WILLLIE MITCHELL / SOLID SOUL & ON TOP
2010年1月5日に81歳で亡くなられたウィリー・ミッチェル。かのハイ・レコードでアル・グリーン、アン・ピーブルズ、オーティス・クレイ、シル・ジョンスン、O.V.ライトなどをプロデュースし一時代を築いたメンフィス・ソウルの立役者。やはりプロデューサーとしての名声が名高いですが、実は本人名義のアルバムも10数枚残しています。写真のアルバムは、68年の「ON TOP」と69年の「SOLID SOUL」を2on1にしたもの。ハイらしい重心の低いリズムが踊るファンキーな仕上がりで、鮮やかなホーンセクションも良い感じです。ジャケ写からもわかるように、ミッチェルは実はトランペットの名手だったりもします。



TEDDY PENDERGRASS / TEDDY LIVE! COAST TO COAST
ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツのリード・シンガーとして、70年代のフィーリー・ソウル全盛期の主役となったテディ・ペンダーグラス。ヒット曲「I Miss You」や「If You Don't Know Me By Now」での野太くもハスキーなバリトン・ヴォイスによる、男気たっぷりな“泣き節”は何度聴いてもグッときます。そしてソロ転向後はセクシーなソウルを爆発させ、まさに「セックス・シンボル」としての人気を不動の物としますが、82年の自動車事故により下半身不随となり、車椅子生活を余儀なくされてしまう。しかしそれでも音楽活動を続けた不屈の人。写真は、人気絶頂だった79年にリリースされた2枚組ライヴ盤(LP盤で言うD面はインタビューとスタジオ録音の新曲)。とにかくライヴの熱気にやられます。女性客の悲鳴のような声援も凄いですが、それに応えるかの様にソウルを放出するテディは流石にディープです。ドリフの「ヒゲダンス」でお馴染みの「Do Me」も演ってます。2010年1月13日、結腸がんの手術に伴う合併症のため亡くなられました。59歳でした。



BOBBY CHARLES / WALKING TO NEW ORLEANS
糖尿病や腎臓がんを患っていたというボビー・チャールズ、2010年1月14日に亡くなられました。ルイジアナ生まれでありながら、ウッドストック・シーンの名シンガーとして知られます。写真のアルバムはそのウッドストック以前、60年代のジュウェル/ポーラ録音を集めた編集盤。ビル・ヘイリーの「See You Later Alligator」やファッツ・ドミノの「Walking To New Orleans」は、実はボビーのペンによる曲。それらを含め愛すべき楽曲を、揺る~いフィーリングで歌うボビー・チャールズ。これぞルイジアナ! ウッドストック時代の名盤「BOBBY CHARLES」も良いですけど、こちらも味わい深いです。あ、それと昨年リリースされ、遺作となってしまった「TIMELESS」も素晴らしいです。



MARVA WRIGHT / AFTER THE LEVEES BROKE
ニューオーリンズの女性シンガーは?と聞かれて、真っ先に思い出すのがこのマーヴァ・ライト。惜しくも2010年3月23日に脳卒中のため亡くなられました。まだ60代前半でした。写真は07年リリースの、おそらく彼女の最後のアルバム。バックには June Yamagishi(g)、Davell Crawford(p)、Benny Turner(b)、Eddie Christmas(ds)、Donald Harrison(sax)、Geechie Johnson(per)など、流石に豪華。ファンク・ブルースなタイトル曲や、アラン・トゥーサンがピアノを弾くゴスペルな「God's Good Hands」も良いですが、力で押し切るような「Change Is Gonna Come」が圧巻!あ~、一度生で観たかったです…。



HANK JONES / LAST RECORDING
2010年5月16日、91歳で亡くなられたジャズ・ジャイアンツ、ハンク・ジョーンズ。写真はそのおよそ3ヶ月前の2月に東京で録音され、彼の遺作となったその名も「LAST RECORDING」。この歳にしてこの瑞々しい演奏には驚かされます。トリオに客演したロイ・ハーグローヴ(tp)とレイモンド・マクモーリン(sax)も素晴らしい! 私はなかなかジャズのライヴとか観に行けないんですけど、ハンク・ジョーンズは08年の東京JAZZで一度だけ観ることが出来ました。エレガントなピアノにうっとりさせられました。



THE TEMPTATIONS / TRULY FOR YOU
アリ・オリ・ウッドソン。かのデイヴィッド・ラッフィン~デニス・エドワーズの栄光を引き継いだ元テンプテーションズのリード・シンガー。2010年5月30日、白血病にて死去。58歳でした。写真は彼が初めてテンプスに参加した84年発表の作品。ゴスペル仕込みの力強さと都会的なしなやかさで軽快に歌うアリ・オリが良いですね~。彼の参加はテンプスにとってまさに新時代の幕開けとなりましたね。大ヒットした「Treat Her Like A Lady」では歌だけでなくソングライトにもクレジットされています。日本にも何度も来てくれていますが、残念ながら私は観た事ないんですよね~。ちなみにこのジャケ写で赤い服を着ているのがアリ・オリ・ウッドソンです。



ISLEY BROTHER / 3+3
アイズレー・ブラザーズのベーシスト、マーヴィン・アイズレー。兄達が結成したアイズレー・ブラザーズに73年のアルバム「3+3」から正式加入。ファンキー且つ艶やかなベース・ラインでアイズレー全盛期の屋台骨を支えました。83年の「BETWEEN THE SHEETS」の発表後に分裂という形でアイズレーを脱退しますが、91年に復帰。しかし97年には糖尿病の後遺症から足を切断し、音楽活動から遠のいていたそうです。マーヴィン在籍時のアイズレーは名盤のオン・パレードですが、特に新体制によるファンク化の号砲となった「3+3」はインパクトありますよね。名曲「That Lady」や「Summer Breeze」も良いですが、私は「What It Comes Down To」が好きなんですよね~。2010年6月6日、56歳で死去。



KINKS / KINKS
ピート・クウェイフ、ザ・キンクスの初代ベーシスト。ライヴ盤を含め7枚目のアルバム「THE KINKS ARE THE VILLAGE GREEN PRESERVATION SOCIETY」(68年作)までキンクスに在籍していました。もちろんデビュー作「KINKS」収録の大ヒット曲「You Really Got Me」でベースを弾いているのもこの人のはず。初期のキンクスは良いですよね~。2010年6月23日、 腎不全のため亡くなられました。



PHILLIP WALKER / THE BOTTOM OF THE TOP
97年のパークタワー・ブルース・フェスティヴァルで来日したフィリップ・ウォーカー。私も観に行きましたけど、痺れましたよね~。確かキャンセルになったジミー・ロジャースの代役で急遽出演が決まったように記憶しています。ですがトリの大役を見事に果たしてくれましたね。音色に貫禄があると言うか、シャキッとしたブルース・ギターが印象に残っています。写真のアルバムは彼の代表作で73年のアルバム。50年代から活動している人ですが、アルバムとしてはこれが最初の作品だそうです。格好良いですよ! ホーンセクションに絡むキレのあるギター! 音色の立ち具合や鋭角的なフレーズにはテキサス流儀が感じられますね。実はこの人、ルイジアナ生まれで、幼少の頃にテキサスに移住したそうです。ですがルイジアナに縁があったのか、活動初期にはクリフトン・シェニエのバックなんかも務めていたそうです。2010年7月22日、心不全のため亡くなられました。



JAMES BROWN / LOVE POWER PEACE LIVE AT THE OLYMPIA PARIS 1971
フェルプス“キャットフィッシュ”コリンズ。70年に弟ブーツィー・コリンズと共にジェイムス・ブラウンのバックに参加したギタリストです。JB一座ではあの「Sex Machine」を始め、「Super Bad」「Soul Power」「Give It Up Or Turnit A Loose」「Get Up, Get Into It, Get Involved」などの録音に携わりました。その後はブーツィーと共に、Pファンクに合流し、ブーツィーズ・ラバー・バンドでも活躍しました。写真はそんなキャットフィッシュがJB一座にいた頃の名ライヴ盤。オリジナルJB’Sと呼ばれるこの頃のバンドには、キャットフィッシュ、ブーツィーの他、ドラムにジャボ・スタークス、トロンボーンにフレッド・ウェスリーなどがいました。このライヴ盤はホント凄いですよね~! で、ブーツィーを中心に、このキャットフィッシュ、ジャボ、フレッドにパーカッションのジョニー・グリッグス、さらにヴィッキー・アンダーソンやダニー・レイまで含めたメンバーで、08年のフジロックに来日したんですから、あれは奇跡でしたよね。ホワイトステージで繰り広げられた響宴は、まさにJB’Sの再結成と言っても良いライヴでした。往年のJBファンクを切れのあるカッティングで弾くキャットフィッシュの勇姿。彼はその2年後の2010年8月6日に亡くなられました。66歳だったそうです。



ESTEBAN JORDAN / AHORITA
テックス・メックスが誇る隻眼のボタン・アコーディオン奏者スティーヴ・ジョーダン。チカーノの伝統音楽にジャズ的な要素を織り込みながら独自の世界観を築き上げ、リリースしたアルバムは30を越えると言われる奇才。写真は79年リリースの「AHORITA」。ポルカやクンビアのリズムにのせ軽快にアコーディオンが跳ねる。また「アコーディオン界のジミ・ヘンドリックス」との異名を取るだけあり、1曲目「Falsa Y Mancornadora」でのエフェクトのかかったアコーディオンの音色が飛び交う感じはかなり斬新。2010年8月13日、肝臓ガンのため亡くなられました。



GREGORY ISAACS / LONELY LOVER
レゲエ界のラヴァーマンにして偉大なるレジェンド、グレゴリー・アイザックス。最高のシンガーですよね。映画「ロッカーズ」で「Slave Master」を歌うシーンの格好良さには参りました。私も10年以上前のレゲエ・ジャパン・スプラッシュで彼の勇姿を観ましたが、まあ、随分昔のことなのであまりよく覚えていません…。ただ、本物だ~!みたいな感動があったことは覚えています。写真は80年の傑作「LONELY LOVER」。緩さの中に黒光りするセクシーな声! 素晴らしい! 2010年10月25日、肺がんのため亡くなられました。



CAPTAIN BEEFHEART AND THE MAGIC BANDS / LIVE IN THE USA 72-81
キャプテン・ビーフハート。名作「TROUT MASK REPLICA」など、アヴァンギャルドな作風で知られますが、その底辺にはブルースが横たわっています。写真のアルバムは72年~81年のライヴ音源を集めたもの。客席録りが中心と言う内容なので、音質はそれなりですが、それがまたビーフハートらしい感じもします。ハウリン・ウルフの「Old Black Snake」やスリム・ハーポの「I'm A King Bee」の爆裂カヴァーもあったりで痺れます。決して聴きやすい音楽ではないかもしれませんが、盟友フランク・ザッパと並び、後続に与えた影響は計り知れません。82年のアルバム「ICE CREAM FOR CROW」を最後に音楽活動を引退。以降は画業に専念していたとか。2010年12月17日、69歳で死去。死因は多発性硬化症の合併症のためだそうです。




他にもケイト・マクギャリグル、ゲイリー・シャイダー、アレックス・チルトン、マルコム・マクラーレン、レナ・ホーン、ロニー・ジェイムズ・ディオ、ハーヴィー・フークア、ウォルター・ホーキンス、谷啓、ティーナ・マリー、など本当に沢山の方が天国に逝かれてしまいました。

残念ですけど、仕方ないんですよね…。皆様、安らかに。