ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

カウント・ベイシー・オーケストラ@ブルーノート東京

2011-01-08 15:14:53 | ジャズ
COUNT BASIE ORCHESTRA / BASIE IN LONDON

昨年12月27日、ブルーノート東京へ、カウント・ベイシー・オーケストラを観に行ってまいりました。正式な公演名は“THE LEGENDARY COUNT BASIE ORCHESTRA directed by DENNIS MACKREL special guest LEDISI”です。正直な話、私のお目当てはゲストのレディシでした。ネオ・ソウル/R&Bの歌姫レディシがビッグ・バンドをバックにジャズを歌う。なんかワクワクしませんか? ですが前半、レディシが登場するまえからオーケスオラの演奏に興奮しっぱなしでした。

なにせビッグ・バンドのライヴを観るなんてホント久しぶりでしたし、ブルーノートみたいな小さなクラブで聴くとその臨場感は圧倒的。なんてったってほぼ目の前から万華鏡のようなホーンアレンジが迫ってくる訳ですから。しかもただ迫力だけで攻めて来る訳ではなく、ジャズならではのヴィンテージな甘さに溢れている。ビッグ・バンドと言うと、私はジャンプっぽい荒々しいものを想像してしまうのですが、もっと暖かくアダルトなスウィング感。人間的なふくよかさを感じさせるような弾むリズムが心地よかったですね~。そしてブラス隊の定位置からスルスルっと前へ出てきて吹くクール且つホットなソロがまた味わい深くて。

私は前から3列目の中央の席で観ていたのですが、ちょうどそのソリストが立つマイクの目の前でした。その向かって右側にブラス隊が3列に並んでいる。前列にサックス。2列目にトロンボーン、後列にトランペット。総勢13名だったかな? 各々の膝元には「COUNT BASIE ORCHESTRA」と刻まれた箱形の譜面台。この絵面だけでも格好良いですよね~。そしてそのブラス隊の左側にはドラムス、ベース、ギター、グランド・ピアノが配されている。ブラス隊は白人黒人の混合でしたが、リズム隊は全員黒人でした。そしてコンダクターのデニス・マクレル(カウント・ベイシーが存命中にオーケストラのドラマーだった方だそう)。この人は指揮をすると言うより、終始リズムにノっている感じ。でもこの人の動きがスウィング感を煽るんですよね~。

そして気になるのはカウント・ベイシーの意思を引き継ぐピアニスト。トニー・サッグスという方らしいのですが、以外にもがっしりした体型にドレッド・ヘアなお兄さんでした。その容貌からどんなワイルドなピアノを弾くのかと思いきや、これがまろやかなソフト・タッチ。ブラス・セクションの隙間を縫うように柔らかい音色を織り込んでいく。スウィングしながらも音が空間に滲みていくような感じで、素晴らしかったですね。ことあるごとにデニス・マクレルから名前を紹介され、その度に、ハッ!と驚いたような仕草で観客の方へ振り返り、柔和な笑みを浮かべる、ちょっと可愛いキャラの持ち主でした。髪型はドレッドですけど、優しそうな顔してるんですよね~。

さて、前半は「Who Me」、「Kansas City Shout」、「Carney」なんていう曲を演っていたようですが、正直、ジャズに疎い私はよく知らない曲達でした。でもそんなこと関係なく楽しめましたよ! 特に「KANSAS CITY SHOUT」あたりは最高でしたね! 心躍るようにスウィングするリズムと瑞々しいホーン・アンサンブルから、古き良き時代の香りが滲みてくるようでした。

そして後半はいよいよレディシの登場。「Lullaby of Birdland」や「Begin The Beguine」なんていうスタンダードを歌うレディシ。良いですね~。太く揺れる低音から突き刺さるような高音まで、抜群の切れ味で歌い上げる。やっぱりR&Bを歌うレディシとは一味違う、クールな軽やかさがありましたね。そしてビリー・ホリデイも歌っている「Solitude」も良かった。独特のビターな浮遊感が良い感じでしたね。でもレディシの本領発揮は「Blues in the Night」ですよ! 唇をゆがめながら唸り、シャウトするレディシはまさにレディシでしたね。自由奔放なスキャットも流石! この曲ももちろん大スタンダードなんですが、エラ・フィッツジェラルドの名唱でも知られていまして、実はチャカ・カーンやナタリー・コール、グラディス・ナイトなど錚々たるメンバーが参加したエラのトリビュート・アルバム「WE ALL LOVE ELLA」で、レディシがこの曲を歌ってるんですよね~。ここでのダイナミック極まりないレディシのジャズ・シンガー振りを聴いて、私は一度ジャズを歌うレディシを観てみたいと思っていたのです。その「Blues in the Night」を生で、しかもバックにカウント・ベイシー・オーケストラという組み合わせで聴けたのですから、感無量でしたね。

そして最後はカウント・ベイシー・オーケストラの代名詞的名曲「One O'clock Jump」。やっぱこれを聴かないとね。そしてこちらも代表曲「Jumpin' At The Woodside」。畳み掛けるようなホーン・リフに切れ込んでくるドラムス。やっぱこういったジャンプ・ナンバーは格好良いですね~。

私は普段はブルースやソウル、ロックが中心なので、どうしても来日アーティストによる“ジャズらしいジャズ”を聴く機会はほとんどないんですが、やっぱり良いですよね。極上の一夜を過ごさせて頂きました。終演後にロビーをうろちょろしていたトニー・サッグスに握手してもらいました!


*上の写真は、カウント・ベイシー・オーケストラ、56年のライヴを収録した名盤「BASIE IN LONDON」。この中から「One O'clock Jump」、「Jumpin' At The Woodside」、あと他にも何曲か演ったような気がします。記憶が曖昧…。




VA / WE ALL LOVE ELLA
そしてこちらはレディシが「Blues in the Night」を歌う、エラ・フィッツジェラルド生誕90周年を記念した07年のトリビュート・アルバム。豪華な参加アーティストもさることながら、エラとスティーヴィー・ワンダーの共演による「You Are the Sunshine Of My Life」という発掘音源も貴重。