ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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グラミー特集:OH HAPPY DAY

2010-01-30 15:00:44 | ゴスペル
VA / OH HAPPY DAY

『Best Traditional Gospel Album』部門にノミネートされたコンピレーション・アルバム「OH HAPPY DAY」。まず参加メンバーが凄い。アル・グリーン、ジョス・ストーン、アーロン・ネヴィル、メイヴィス・ステイプルス、クラーク・シスターズ、ロバート・ランドルフ、パティ・グリフィン、ジョニー・ラング、ジョン・ボン・ジョビ、マイケル・マクドナルドなどなど。これにさらに全米各地の教会聖歌隊が加わるという豪華さ。曲目も「I Believe」や「Oh Happy Day」などのゴスペル・ナンバーに限らず広くソウル/ロックの名曲を取り上げています。ジョン・ボン・ジョビなんてボン・ジョビの曲歌ってるしね。さて、このアルバムがトラディショナルなのか?という疑問はさて置き、まずこの部門のノミネート作品は以下の通り。

Ashley Cleveland / God Don't Never Change
Donald Lawrence & Co. / The Law Of Confession, Part I
(Various Artists) / Oh Happy Day
The Williams Brothers / The Journey Continues
Vickie Winans / How I Got Over

この中で気になるのはアシュリー・クリーヴランドですね~。彼女もサザン・フィーリング溢れる良い声してしてますよね。あとTHE WILLIAMS BROTHERSは黒人3人組のコーラスグループのようですが、試聴してみましたらなかなか良かったです。

さて、本題の「OH HAPPY DAY」です。ジョニー・ラングによる「I Believe」からスタート。ジョニー・ラングというと若きブルース・ギタリストなイメージがありますが、前にもゴスペル部門でグラミーにノミネートされていたように思うので、今はゴスペルの人なんですかね? それはそうと彼が弾く骨太なギターが格好良いです。共演のFISK JUBILEE SINGERSの分厚い合唱も圧巻。

良心的なアメリカン・ロック・バンド、3ドアーズ・ダウンはブラインド・フェイスの「Presence Of The Lord」。前半は割とストレートなカヴァーなれど、後半にSOUL CHILDREN OF CHICAGOが入ってくると一気にゴスペル色を増します。このクワイアにはリード・ヴォーカリストが居まして、多分子供なんでしょうが凄い歌を歌う!痺れまくりです。この曲は個人的なハイライトの一つ。

セイクレッド・スティールのロバート・ランドルフは、アーバン・ゴスペル姉妹のクラーク・シスターズとの共演でスティーヴィー・ワンダーの「Higher Ground」を、ジョン・ボン・ジョビはTHE WASHINGTON YOUTH CHOIRをバックに自身の「Keep The Faith」を。これも案外良いんですよ!アル・グリーンはヘザー・ヘッドリーとのデュエットでインプレッションズの「People Get Ready」。アル・グリーンの渋い歌声が染みます。そしてマイケル・マクドナルドは「Storm Before The Calm」でアップテンポに弾けます。これ自作曲ですか?熱いです!

そしてやはりこの中で最もゴスペルらしいのはメイヴィス・ステイプルス。流石に深い歌声ですね。曲は「Waiting For My Child To Come Home」で、私はよく知らない曲ですが、THE CONSOLERS というデュオによる古いゴスペル・ソングのようですね。デュエットはカントリー界からパティ・グリフィン。メイヴィスとのデュエットだと、妙に可愛い声に聴こえてしまいます。そこがまた良いんですけどね。

そして個人的なハイライト第2弾がアンジェリック・キジョーが歌うボブ・マーレーの大名曲「Redemption Song」。レゲエ+アフリカ+ゴスペル。なんか大地の恵みと言うか、この地に生まれてきたことの喜びと言うか、心に染みる勇気をくれるような歌声とアレンジです。素晴らしい!!

そして個人的ハイライト第3弾! アーロン・ネヴィルの「A Change Is Gonna Come」。もうこの人の歌うこの曲は何度も聴いてますけどね。何度でも素晴らしいものは素晴らしい。しかも今回はバックにMT. ZION MASS CHOIR という聖歌隊が付いている。さらにジム・ホーンの率いるホーン隊がまた良いんです。アーロンは相変わらずのゴールデン・ヴォイスだし。うっとりです。

クイーン・ラティファの「Oh Happy Day」に続いてジョス・ストーンとBUICK AUDRA のデュエットで「This Little Light Of Mine」と、最後はゴスペルの定番曲で締めてますね。このBUICK AUDRAという人はよく知らないのですが、どういう人なんでしょうか? セッション風なラフな録音がなかなかいい雰囲気を醸しています。

ガチガチにゴスペルに拘らない作りから、反ってゴスペルの素晴らしさを身近に感じることが出来る作品。そして大物達の歌唱や共演もさることながら、クワイアの魅力を感じさせてくれる一枚です。それとこの面子では不利なのではないか?と思われたジョン・ボン・ジョビとマイケル・マクドナルドの健闘に拍手です!

ちなみにこのアルバムからロバート・ランドルフとクラーク・シスターズの共演による「Higher Ground」が『Best R&B Performance By A Duo Or Group With Vocals』部門に、ジョニー・ラングの「I Believe」が『Best Gospel Performance』部門にノミネートされています。

グラミー特集:バックウィート・ザディコ

2010-01-30 12:47:25 | ソウル、ファンク
BUCKWHEAT ZYDECO / LAY YOUR BURDEN DOWN

確か一昨年度あたりに新設された部門、『Best Zydeco Or Cajun Music Album』部門。ルイジアナ独特のダンス音楽、ケイジャン、そしてザディコ。どちらもアコーディオンを主体とする土着性の高い音楽。白人がやるのがケイジャンで、黒人がやるのがザディコと呼ばれます。ま、一概には言えないかもしれませんが、ケイジャンにはフィドルが入るのでよりカントリー色が強く、ザディコには黒人ならではのパーカッシヴでうねるような躍動感がある、そんな印象です。現在のケイジャンを代表するのがボーソレイユ、そしてザディコの第一人者がバックウィート・ザディコです。そんなケイジャン&ザディコのノミネートは以下の通り。

Beausoleil Avec Michael Doucet / Alligator Purse
Buckwheat Zydeco / Lay Your Burden Down
The Magnolia Sisters / Stripped Down
Pine Leaf Boys / Live At 2009 New Orleans Jazz & Heritage Festival
Cedric Watson et Bijou Créole / L'Ésprit Créole

ニューオーリンズ音楽に目がない私といたしましては、ケイジャン&ザディコも大好きなのですが、なかなかそれ単体のCDを買うことはないんですよね~。そもそもあまり日本に入ってきませんし…。で、このノミネート作も一枚も持っていませんでした。せっかくだからどれか一つ買おうと思い、バックウィート・ザディコを選びました。ボーソレイユと迷ったんですけど、ジャケ写が断然こちらの方にインパクトがあったので!

このジャケ写を見ると、王道のザディコをやってるように思うじゃないですか。ラヴボード(ウォッシュボード)のリズムに乗って軽快にアコーディオンを弾きまくるような。ところが1曲目「When The Levee Breaks」はロック度を増したネヴィル・ブラザーズみたいなミクスチャー・ファンク。ツェッペリンのカヴァーで有名なメンフィス・ミニーのあの曲ですけど、一瞬入れるCDを間違えたかと思いましたよ。 前半、バックウィート・ザディコはアコーディオンではなくオルガンを弾いている。そしてそれ以上にスライド・ギターが全面に出ているのですが、このスライドが凄い! 誰かと思えばサニー・ランドレス! 終盤になってテンポが倍で刻まれると同時にアコーディオンが入ってきて一気にザディコ色を増す。なんだかんだで格好良いっす。

続く「The Wrong Side」はスワンプ色を感じさせる明るい曲ですが、ここでもサニー・ランドレスのスライドが唸りをあげます。今作はオリジナル5曲とカヴァー6曲が収められていますが、そのカヴァーの選曲がなかなか面白い。1曲目のメンフィス・ミニーを皮切りに、ジミー・クリフの「Let Your Yeah Be Yeah」、ブルース・スプリングスティーンの「Back In Your Arms」、さらにキャプテン・ビーフハートの「Too Much Time」ですから。で、「The Wrong Side」もカヴァーなんですが、これは最近売り出し中の JJ GREY & MOFRO というバンドの曲で、 JJ GREY自身がコーラスとキーボードで参加しています。こういう比較的新しい曲を取り上げているところも興味深いですね。

カヴァーでもう1曲驚かされたのがガヴァメント・ミュールの「Lay Your Burden Down」。しかもウォーレン・ヘインズ本人がゲストでギターを弾いています。バックウィートはオルガンをブリブリ弾いてる。ロックです! こんなカヴァーの選曲だけでもルイジアナならではのガンボなごった煮感を感じさせてくれますよね~。

オリジナル曲ではレゲエ的なニュアンスを感じる「Don't Leave Me」や「Time Goes By」などでの朗らかな曲が良いですね。今作はジミー・クリフのカヴァーがあったり、スプリングスティーンの「Back In Your Arms」もレゲエ・アレンジだったりで、カリブな雰囲気が割と強く感じられるます。でもそれにアコーディオンの音色がまた合うんですよね。バックウィートのヴォーカルもルイジアナらしい人懐っこさがあって、なんか和みます。

残念ながら私の期待した、これぞザディコ!なアップ・テンポの曲は「Throw Me Something, Mister」ぐらいですかね。ラブボードのシャカシャカしたリズムに弾力のあるアコーディオンの音色が踊る。やっぱこれですよね! 「マルディグラ!」っていうコーラスにも胸が躍ります。最高です! 「Ninth Place」もテンポは遅めですがザディゴの魅力が味わえますね。最後はスローなインスト・ナンバー「Finding My Way Back Home」でほっこりと終わります。

想像していたものとは大分違いましたが、そんな驚きも込みでかなり楽しめる好盤です。ザディコも奥が深いなと…。